大和俗訓 / 巻之八・応接
一いとまある人、寂さのあまりに、いとま無く時を惜む人のもとに來り、心のどけく、よしなき長物語し、あるじに厭はるゝこそ、むげに心なきわざなれ。されどかゝる人に對せん時、わが心に叶はずとも、ひたすらに面のけしき惡しく、言づかひ不順なるべからず。
新字:一いとまある人、寂さのあまりに、いとま無く時を惜む人のもとに来り、心のどけく、よしなき長物語し、あるじに厭はるゝこそ、むげに心なきわざなれ。されどかゝる人に対せん時、わが心に叶はずとも、ひたすらに面のけしき悪しく、言づかひ不順なるべからず。
書き下し
一いとまある人、寂さのあまりに、いとま無く時を惜む人のもとに来り、心のどけく、よしなき長物語し、あるじに厭はるるこそ、むげに心なきわざなれ。されどかかる人に対せん時、わが心に叶はずとも、ひたすらに面のけしき悪しく、言づかひ不順なるべからず。
現代語訳
暇のある人が、寂しさのあまりに、暇がなく時を惜しむ人のもとに来て、心のどかに、つまらない長話をし、主人に嫌がられるのは、ひどく心ないしわざです。けれどもこのような人に向き合うとき、自分の心にかなわなくても、ひたすら顔色を悪くし、言葉づかいを不機嫌にしてはいけません。
解説
忙しい人のところに来て長話をするのは心ない振る舞いだと戒めつつ、そういう客を迎える側も、露骨に嫌な顔をしたり不機嫌な言葉を使ったりしてはならないと、両方の立場に配慮を求めています。『徒然草』にも、用もないのに長居する客を戒める段があり、益軒もそれを意識していたかもしれません。忙しいときの長電話や、終わらない雑談に付き合わされることは今もよくあります。自分が相手の時間を奪っていないかを省み、迎える側は感情を顔に出さない。両方の心得が大切です。
この章句が説くこと
応接時間配慮礼忍耐
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