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大和俗訓 / 巻之八・応接

一人われに對して、不慮に無道なる事をしかけ、言ひかけして、甚我が心にそむくことあり。是橫逆の人なり。かやうの處を逆境と云ふ。世に交るには、必かくのごとくなる横逆の人あり。かゝる逆境にあひたる時ごとに、必堪忍の工夫をなして、怒り恨むべからず。色にあらはし、言にあらはすべからず、是動心忍性で氣質を變化し、心をみがきて學に進む時なり。空しく過ぐべからず。かやうの時、つねに心にかけて、忍べる工夫をなすべし。

新字:一人われに対して、不慮に無道なる事をしかけ、言ひかけして、甚我が心にそむくことあり。是横逆の人なり。かやうの処を逆境と云ふ。世に交るには、必かくのごとくなる横逆の人あり。かゝる逆境にあひたる時ごとに、必堪忍の工夫をなして、怒り恨むべからず。色にあらはし、言にあらはすべからず、是動心忍性で気質を変化し、心をみがきて学に進む時なり。空しく過ぐべからず。かやうの時、つねに心にかけて、忍べる工夫をなすべし。

書き下し

一人われに対して、不慮に無道なる事をしかけ、言ひかけして、甚我が心にそむくことあり。是横逆の人なり。かやうの処を逆境と云ふ。世に交るには、必かくのごとくなる横逆の人あり。かかる逆境にあひたる時ごとに、必堪忍の工夫をなして、怒り恨むべからず。色にあらはし、言にあらはすべからず、是動心忍性で気質を変化し、心をみがきて学に進む時なり。空しく過ぐべからず。かやうの時、つねに心にかけて、忍べる工夫をなすべし。

現代語訳

人が自分に対して、思いがけず道に外れたことをしかけ、言いかけて、はなはだ自分の心にそむくことがあります。これが横逆の人です。このようなところを逆境といいます。世に交わるには、必ずこのような横逆の人がいます。このような逆境にあったときごとに、必ず堪忍の工夫をして、怒り恨んではいけません。顔色に表し、言葉に表してはいけません。これは心を動かし性を忍ばせて気質を変化させ、心を磨いて学問を進めるときです。むなしく過ごしてはいけません。このようなときには、いつも心にかけて、忍ぶ工夫をしなさい。

解説

理不尽な言動をする「横逆の人」に出会ったときこそ、堪忍を修める好機だと説いています。「動心忍性」は『孟子』告子下篇の「天の将に大任を是の人に降さんとするや…心を動かし性を忍ばしむ」から来た言葉で、困難が人の心を鍛え、足りない力を補わせるという意味です。理不尽な人との出会いを、単なる不運ではなく、自分の気質を変え心を磨く砥石と受け止めよというのです。つらい人間関係の中にいるとき、この視点は大きな支えとなるでしょう。

この章句が説くこと

堪忍逆境孟子気質修養

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