大和俗訓 / 巻之七・躬行下
一天は常にめぐり動きてやまず。人これに則りて、常につとめて止まざるべし。地は常に止まり靜かにして動かず。人是にのつとりて、つねに愼み靜かにして、心を動かさざるべし。務むるにあらざれば、人の道行はれず。愼むにあらざれば、人の道たゝず。務むると愼むとは、卽天地の道にして、人の法として行ふべき道なり。
新字:一天は常にめぐり動きてやまず。人これに則りて、常につとめて止まざるべし。地は常に止まり静かにして動かず。人是にのつとりて、つねに慎み静かにして、心を動かさざるべし。務むるにあらざれば、人の道行はれず。慎むにあらざれば、人の道たゝず。務むると慎むとは、即天地の道にして、人の法として行ふべき道なり。
書き下し
一天は常にめぐり動きてやまず。人これに則りて、常につとめて止まざるべし。地は常に止まり静かにして動かず。人是にのつとりて、つねに慎み静かにして、心を動かさざるべし。務むるにあらざれば、人の道行はれず。慎むにあらざれば、人の道たたず。務むると慎むとは、即天地の道にして、人の法として行ふべき道なり。
現代語訳
天はいつもめぐり動いてやみません。人はこれにのっとって、いつも努めてやまないようにすべきです。地はいつもとどまり静かで動きません。人はこれにのっとって、いつもつつしみ静かにして、心を動かさないようにすべきです。努めなければ、人の道は行われません。つつしまなければ、人の道は立ちません。努めることとつつしむこととは、すなわち天地の道であって、人の法として行うべき道です。
解説
天の絶え間ない運行と、大地の不動の静けさを、人が学ぶべき二つの手本として示しています。『易経』乾の卦の「天行健なり、君子以て自彊して息まず」と、坤の卦の地の徳を踏まえた考えです。天に学んで休まず努め、地に学んで静かに慎む。努力だけでは空回りし、慎みだけでは何も進まないので、両方が必要だというのです。仕事でも、粘り強く取り組む力と、落ち着いて判断する力の両方を備えた人が、確かな成果を上げるものです。
この章句が説くこと
務め慎み天地易経修身
関連する章句
-
『初学訓』巻之四一天の道は動きてやまず、一日に周く天をめぐる。人の勤は天道を則とす。ここを以て、君子はつとめておこたらず。地の道は、静にして動かず。人も亦これに則りて、慎みてしづかにして、妄に動かず。是、人の敬は、地の道を則とするなり。
-
『慎思録』巻之四勤なる者は、天行の健に法るなり。動に属す。慎なる者は、地勢の順に法るなり。静に属す。健順並び行はれて、天地の道立つ。勤慎並び行はれて、人道立つ。此れ天地人の道為り。其の義大なるかな。
-
『大和俗訓』巻之一・為学上一或人の曰、儒者の学は、唯人道を知らば可ならん。天地の道を知るに及ぶべからず予答へて曰、天地の道は人道の本なり。天地の道を知らざれば、道理のよつて出づる所の根本を知らず。根本を知らざれば、天理の人にそなはり、人の天地にうけたる、天人合一のすぢめを知らずして、人道明ならず。故にまづ日用人倫の道を学んで後、天地の道を学ぶべし。聖人の易を学び給ふも此故ならずや。されども天地の道は、猶容易知りがたし。志を立つる事は、大にして高くすべし。小にしてひきければ、小成に安んじて成就しがたし。天下第一等の人とならんと、平生志すべし。世俗と同じく、賤しくひきくすべからず。かく志をたてて、日々月々につとめ行はば、久しくして其功つもりて、必人にまさるべし。上をまなべば中にいたり、中を学べば下にいたる。下を学べば功をなさず。又心は小にしてひきくすべし。人にへりくだり、日用常行のひききあしもとより行ふべし。心大なれば、おごりてつつしみなく、細行をつとめず。高ければ、人にたかぶりて謙徳を失ふ。
-
『大和俗訓』巻之七・躬行下一人の身になすわざ、何事にも道不在と云ふことなし。坐するには坐するの道あり。臥すには臥すの道あり。行くには行くの道あり。飲食には飲食の道あり。言ふには言ふの道あり。動くには動くの道あり。視るには視るの道あり。聴くには聴くの道あり。道を行はんと思はば、事ごとに道あることを思ひて、謹をいたして、しばらくも道を離るべからず。是身を修むる道なり。
-
『大和俗訓』巻之三・心術上一人は、天地の子なり。天地を法として行ふべし。天地は別に心なし、万物をあはれむを以て心とせり。別にしわざなし、万物を産み出し養ふを以てわざとせり。人も亦この心をうけて、常に人に恵みあはれむを以て心とすべし。別の念あるべからず。人をたすけ救ふを以てわざとすべし。別のわざあるべからず。故に天下の人、王公より以下庶人にいたる迄、日々行ふべき善事あり。善を行ふべき位にあり、時にあたらば、むなしく過ぐべからず。是天につかへ奉りて、天職をつとむるなり。
-
『大和俗訓』巻之六・躬行上一力行の道は、其大綱は、身ををさめて、五倫をあつくするにあり。身ををさむるは、道を行ふ本なり。身修らざれば、五倫の道行はれず。身ををさむる条目は、言を忠信にし、行をあつくつつしみ、怒を懲しおさへ、慾をこらへふさぎ、見聞する所の善に早くうつりて、つとめ行ひ、我が過を知りて、すみやかに改むるにあり。其上、人に対して道を行へども、人したがはずして行はれざる事あらば、人を責めずして、自らかへりみ求めて、わが善のいたらざる事をせむべし。およそ人の身のわざ多けれど、つめていへば、言と行との二に過ぎず。言をつつしみて信にし、行をつとめて篤くつつしめば、身修る。故に言行をつつしみ篤くするは身を修むるの道なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る