大和俗訓 / 巻之六・躬行上
一凡人のつとめ行ふべきわざ、三あり。願ふ所も、また三有り。一には務業。二には養生。三には行義なり。務業とは、四民ともに、其家のわざを務むるなり。士は君につかへ、農工商は各其家業をつとめて、其衣食を求むるを云ふ。家業をつとめざれば、飢寒貧窮をまぬかれず。是諸民の先つとむべき事にて、財祿あらん事をねがふ所なり。業を務むれば、衣食と居處を得て、身をやしなふ生計は、其内にあり。二には養生は、飮食色慾七情の内、欲をうすくし、起居動靜の形氣をつゝしみ、風寒暑濕の外邪をふせぎ、生命を養ひて、病なく、長壽を得んことをねがふを云ふ。生を養はざれば、必病生じて、身をくるしめ、又むまれつきたる天年をたもちがたし。是又人のよく務むべきことなり。
新字:一凡人のつとめ行ふべきわざ、三あり。願ふ所も、また三有り。一には務業。二には養生。三には行義なり。務業とは、四民ともに、其家のわざを務むるなり。士は君につかへ、農工商は各其家業をつとめて、其衣食を求むるを云ふ。家業をつとめざれば、飢寒貧窮をまぬかれず。是諸民の先つとむべき事にて、財禄あらん事をねがふ所なり。業を務むれば、衣食と居処を得て、身をやしなふ生計は、其内にあり。二には養生は、飲食色慾七情の内、欲をうすくし、起居動静の形気をつゝしみ、風寒暑湿の外邪をふせぎ、生命を養ひて、病なく、長寿を得んことをねがふを云ふ。生を養はざれば、必病生じて、身をくるしめ、又むまれつきたる天年をたもちがたし。是又人のよく務むべきことなり。
書き下し
一凡人のつとめ行ふべきわざ、三あり。願ふ所も、また三有り。一には務業。二には養生。三には行義なり。務業とは、四民ともに、其家のわざを務むるなり。士は君につかへ、農工商は各其家業をつとめて、其衣食を求むるを云ふ。家業をつとめざれば、飢寒貧窮をまぬかれず。是諸民の先つとむべき事にて、財禄あらん事をねがふ所なり。業を務むれば、衣食と居処を得て、身をやしなふ生計は、其内にあり。二には養生は、飲食色慾七情の内、欲をうすくし、起居動静の形気をつつしみ、風寒暑湿の外邪をふせぎ、生命を養ひて、病なく、長寿を得んことをねがふを云ふ。生を養はざれば、必病生じて、身をくるしめ、又むまれつきたる天年をたもちがたし。是又人のよく務むべきことなり。
現代語訳
およそ人が努め行うべきことは三つあります。願うところもまた三つあります。一つには務業、二つには養生、三つには行義です。務業とは、士農工商の四民がともに、その家の仕事を努めることです。士は君に仕え、農工商はそれぞれその家業を努めて、その衣食を求めることをいいます。家業を努めなければ、飢えや寒さ、貧窮を免れません。これは諸民がまず努めるべきことで、財や禄があることを願うところです。業を努めれば、衣食と住まいを得て、身を養う生計はその中にあります。二つには養生とは、飲食・色欲・七情のうち欲を薄くし、起居動静のからだをつつしみ、風・寒・暑・湿の外邪を防ぎ、生命を養って、病がなく長寿を得ることを願うことをいいます。生を養わなければ、必ず病が生じて身を苦しめ、また生まれつきの天寿を保ちがたい。これもまた人がよく努めるべきことです。
解説
この章句が説くこと
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『家道訓』巻之一・総論上一わが身朝夕飲食の俸養はかろくして、身をば労動すべし。奢りて酒食の美をこのみ、怠りて身を安逸にすべからず。おごらず怠らず、かくの如くすれば、第一徳を養ひ、次に身を養ひ、次に財をやしなふ、三の益あり。飲食淡薄にして身を労動すれば、食気滞らず、気血めぐり、脾胃やぶれずして生を養ふによろし。又身を労すれば、艱難労苦にたへて、忠孝の行、学問芸術を習ふにつとめよし。もし身体を労動せずして安逸にならへば、艱難に不堪して、忠孝のつとめをくるしみ、学問技芸におこたり、殊に士は武勇のたしなみなく、軍陣にて艱苦にたへず、病おこり身よわりて用にたたず、武勇をはげみがたし。およそ心は安静にし、身は労動せしむべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事を好み、身をやすめおこたりて動かさざるは、甚養生に害あり。久しく安坐し、身を動さざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて病おこる。殊に臥す事を好み、ねぶり多きを忌む。食後には必ず数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶり臥すべからず。父母につかへて力をつくし、君につかへてまめやかにつとめ、朝は早くおき、夕はおそく寝ね、四民ともに我が家事をよくつとめておこたらず。士となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽をまなび、弓を射、馬にのり、武芸をならひて、身をうごかすべし。
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