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大和俗訓 / 巻之五・言語

明君賢者ならでは、直諫によろしき人は稀なり。よのつねの人ならば、諷諫すべし。諷諫をよくして、人のよく聞入れたるためし多し。是いさめのよき手立なり。いさめの道を知らで、辭をあらくして人にさからひ、妄にいへば、人怒りて、必聞きいれず。人に益なくして、我が身のわざはひとなる。ことに我が親に直諫して腹だたしめ、親よろこびざれば、親子の中うとくなる。大なる不孝なり。親をいさむるには法あり。

新字:明君賢者ならでは、直諫によろしき人は稀なり。よのつねの人ならば、諷諫すべし。諷諫をよくして、人のよく聞入れたるためし多し。是いさめのよき手立なり。いさめの道を知らで、辞をあらくして人にさからひ、妄にいへば、人怒りて、必聞きいれず。人に益なくして、我が身のわざはひとなる。ことに我が親に直諫して腹だたしめ、親よろこびざれば、親子の中うとくなる。大なる不孝なり。親をいさむるには法あり。

書き下し

明君賢者ならでは、直諫によろしき人は稀なり。よのつねの人ならば、諷諫すべし。諷諫をよくして、人のよく聞入れたるためし多し。是いさめのよき手立なり。いさめの道を知らで、辞をあらくして人にさからひ、妄にいへば、人怒りて、必聞きいれず。人に益なくして、我が身のわざはひとなる。ことに我が親に直諫して腹だたしめ、親よろこびざれば、親子の中うとくなる。大なる不孝なり。親をいさむるには法あり。

現代語訳

明君や賢者でなければ、直諫に向いている人はまれです。普通の人ならば、諷諫しなさい。諷諫をうまくして、人がよく聞き入れた例は多い。これは諫めのよい手立てです。諫めの道を知らずに、言葉を荒くして人に逆らい、みだりに言えば、人は怒って必ず聞き入れません。人に益がなく、自分の身の災いとなります。とくに自分の親に直諫して腹を立てさせ、親が喜ばなければ、親子の仲が疎くなります。大きな不孝です。親を諫めるには方法があるのです。

解説

率直な忠告を受け止められるのは、明君や賢者のような器の大きな人だけで、普通の人には遠回しな諷諫がよいと益軒は言います。とりわけ親への諫めは慎重であれと説きます。正しさを振りかざして親を怒らせ、親子の仲が冷えれば、それ自体が大きな不孝になるからです。『論語』里仁篇にも、父母には穏やかに幾たびも諫めよという教えがあります。年老いた親に生活習慣や運転のことを意見するとき、正論より相手の気持ちを立てる伝え方が大切なのは、今も変わりません。

この章句が説くこと

諫め孝親子諷諫家族

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