大和俗訓 / 巻之五・言語
一古語に、病は口より入り、禍は口より出づといへり。言をつゝしみて、みだりに口より出さゞれば、災なし。飮食をつゝしみて、みだりに口に入れざれば、病なし。病と災との出くることは、天より降るにあらず、皆口よりおこると、古人いへり。口の出入つゝしむべし。
新字:一古語に、病は口より入り、禍は口より出づといへり。言をつゝしみて、みだりに口より出さゞれば、災なし。飲食をつゝしみて、みだりに口に入れざれば、病なし。病と災との出くることは、天より降るにあらず、皆口よりおこると、古人いへり。口の出入つゝしむべし。
書き下し
一古語に、病は口より入り、禍は口より出づといへり。言をつつしみて、みだりに口より出さざれば、災なし。飲食をつつしみて、みだりに口に入れざれば、病なし。病と災との出くることは、天より降るにあらず、皆口よりおこると、古人いへり。口の出入つつしむべし。
現代語訳
古語に「病は口より入り、禍は口より出づ」とあります。言葉をつつしんで、みだりに口から出さなければ、災いはありません。飲食をつつしんで、みだりに口に入れなければ、病はありません。病と災いが出てくるのは、天から降ってくるのではなく、みな口から起こると古人は言いました。口の出入りをつつしみなさい。
解説
頭注によれば、この言葉は晋の傅玄の「口銘」に見えるものです。口は食べ物の入り口であり、言葉の出口でもあります。飲食をつつしめば病がなく、言葉をつつしめば災いがないという、覚えやすく実践的な教えです。のちに『養生訓』を書く益軒にとって、飲食の節制と言葉の慎みは同じ一つの「口の修養」でした。食べ過ぎや飲み過ぎを控えることと、軽率な発言を控えることを一緒に心がければ、心身ともに健やかに過ごせるでしょう。
この章句が説くこと
口養生言語飲食慎み
関連する章句
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言志四録・言志録 第百八十九条 禍は口より出で病は口より入る人は最も当に口を慎むべし。口の職は二用を兼ぬ。言語を出だし、飲食を納るる、是れなり。言語を慎まざれば、以て禍を速くに足る。飲食を慎まざれば、以て病を致すに足る。諺に云ふ、「禍は口より出で、病は口より入る」と。
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『初学訓』巻之三一言を謹めば禍なし。飲み食ふことをつつしめば病なし。故に、古語曰、病は口より入り、禍は口より出づ。一同官同列の人は、私意の争なく、人我の隔なくして、和睦し相愛すべし。是亦、朋友の道にて、君のためなり。家の乱は、多くは臣下の争より起る。凡、われ一人を立てんとし、わが才を専に立てんとすれば、必ず同列を妨ぐるゆゑ、かへつてわが身の禍となる。又、同芸の人にも相争ふべからず、そしるべからず。同列をそしり同芸をそしるは、これ小人のわざなり。才能善行は、相たすけて進むべし。不能あらば誹るべからず。
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