大和俗訓 / 巻之一・為学上
一人と生るゝは、きはめてかたき事なれば、わくらはに得がたき人の身を得たる事をたのしみて、忘るべからず。又人と生れて人の道を知らで、むなしく此世を過ぎなん事うれふべし。此樂と憂との二を、身を終ふるまで忘るべからず。
新字:一人と生るゝは、きはめてかたき事なれば、わくらはに得がたき人の身を得たる事をたのしみて、忘るべからず。又人と生れて人の道を知らで、むなしく此世を過ぎなん事うれふべし。此楽と憂との二を、身を終ふるまで忘るべからず。
書き下し
一人と生るるは、きはめてかたき事なれば、わくらはに得がたき人の身を得たる事をたのしみて、忘るべからず。又人と生れて人の道を知らで、むなしく此世を過ぎなん事うれふべし。此楽と憂との二を、身を終ふるまで忘るべからず。
現代語訳
一、人と生まれるのはきわめて難しいことなので、たまたま得がたい人の身を得たことを楽しんで、忘れてはなりません。また人と生まれながら人の道を知らずに、むなしくこの世を過ごしてしまうことを憂えるべきです。この楽しみと憂いの二つを、生涯を終えるまで忘れてはなりません。
解説
前の段までの内容を「楽しみ」と「憂い」の二つにまとめた短い段です。人と生まれた幸いを楽しむ気持ちと、それを無駄にしてしまうことを憂える気持ちを、両方とも一生持ち続けよと益軒は言います。「わくらはに」は、たまたま、まれにという意味の古語です。喜びだけでは油断が生まれ、憂いだけでは心がすり減ります。両方を持つことで、感謝しながらも気を引き締めて日々を過ごせるという知恵は、今の暮らしにもそのまま役立ちます。
この章句が説くこと
楽しみ憂い人生人の道感謝
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『大和俗訓』巻之一・為学上一顔子推は、人身得がたし、空しく過ぐることなかれといへり。万物にすぐれて、人と斯く生れたるは、誠に幸の至りなれば、人身得がたしといへり。人たる者、もし再び此世に生れば、たとひ此たび怠りて、人の道を知らずとも、かさねて又人とむまれ来ん時をたのむべき事もありなん。此身再び人となることを得ざれば、道を学び、此身をよくをさめ、人となりて終るべし。むなしく此世を過すべからず。もし人の道を知らで、空しく此世を過しなば、人と生れたるかひなかるべし。をしむべきかな。
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