大和俗訓 / 巻之一・為学上
およそ人は天地の萬物をうみそだて給ふ御めぐみの心を以て心とす。此心を名づけて仁と云ふ。仁は人の心に天より生れつきたる本性なり。仁の理は、人をめぐみ物をあはれむを德とす。此仁の德をたもち失はずして、天地のうみ給へる人倫をあつく愛し、次に鳥獸草木をあはれみて、天地の人と萬物を愛し給ふ御心にしたがひ、天地の御めぐみの力を助くるを以て、天地につかへ奉る道とす。これすなはち人の道とする所にして仁なり。仁の理をわかてば仁義となり、仁義をわかてば禮智信となる。五の性をすべて五常といふ。たとへば、一年をわかてば陰陽となり、又わかてば春夏秋冬の四時となるが如し。仁は五常をすべて其惣名なり。五常は人に生れつきたる理なれば、五性といふ。
新字:およそ人は天地の万物をうみそだて給ふ御めぐみの心を以て心とす。此心を名づけて仁と云ふ。仁は人の心に天より生れつきたる本性なり。仁の理は、人をめぐみ物をあはれむを徳とす。此仁の徳をたもち失はずして、天地のうみ給へる人倫をあつく愛し、次に鳥獣草木をあはれみて、天地の人と万物を愛し給ふ御心にしたがひ、天地の御めぐみの力を助くるを以て、天地につかへ奉る道とす。これすなはち人の道とする所にして仁なり。仁の理をわかてば仁義となり、仁義をわかてば礼智信となる。五の性をすべて五常といふ。たとへば、一年をわかてば陰陽となり、又わかてば春夏秋冬の四時となるが如し。仁は五常をすべて其惣名なり。五常は人に生れつきたる理なれば、五性といふ。
書き下し
およそ人は天地の万物をうみそだて給ふ御めぐみの心を以て心とす。此心を名づけて仁と云ふ。仁は人の心に天より生れつきたる本性なり。仁の理は、人をめぐみ物をあはれむを徳とす。此仁の徳をたもち失はずして、天地のうみ給へる人倫をあつく愛し、次に鳥獣草木をあはれみて、天地の人と万物を愛し給ふ御心にしたがひ、天地の御めぐみの力を助くるを以て、天地につかへ奉る道とす。これすなはち人の道とする所にして仁なり。仁の理をわかてば仁義となり、仁義をわかてば礼智信となる。五の性をすべて五常といふ。たとへば、一年をわかてば陰陽となり、又わかてば春夏秋冬の四時となるが如し。仁は五常をすべて其惣名なり。五常は人に生れつきたる理なれば、五性といふ。
現代語訳
おおよそ人は、天地が万物を生み育てられる恵みの心を自分の心とします。この心を名づけて仁といいます。仁は、人の心に天から生まれつき備わった本性です。仁の理は、人を恵み物を慈しむことを徳とします。この仁の徳を保って失わず、天地が生んだ人々を手厚く愛し、次に鳥獣草木を慈しんで、人と万物を愛される天地の御心に従い、天地の恵みの力を助けることを、天地にお仕えする道とします。これがすなわち人の道とするところであり、仁なのです。仁の理を分ければ仁と義になり、仁義を分ければ礼・智・信となります。この五つの性をまとめて五常といいます。たとえば一年を分ければ陰と陽になり、さらに分ければ春夏秋冬の四季となるようなものです。仁は五常をすべて含むその総名です。五常は人に生まれつき備わった理なので、五性ともいいます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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論語・雍也篇宰我問いて曰く、「仁者は之に告げて『井に仁有り』と曰うと雖も、其れ之に従わんか。」子曰く、「何為れぞ其れ然らんや。君子は逝かしむ可きも、陥る可からず。欺く可きも、罔う可からず。」
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