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和俗童子訓 / 巻之五・教女子法

一又女子の嫁する時、兼てより父母の敎ふべき事十三ヶ條あり。一曰、我が家にありては、我が父母にもはら孝を行ふ理なり。されども夫の家に往きては、もはら舅姑を、我が二親よりも猶重んじて、厚く愛み敬ひ、孝行を盡すべし。親の方を重んじ、しうとの方を輕んずる事なかれ。しうとの方に、朝夕の見舞を缺くべからず。しうとの方の務むべきわざを怠るべからず。若しうとの命あらば、愼み行ひて背くべからず。凡の事、舅姑に問ひて、其敎に任すべし。舅姑もし我を愛せずして、謗り惡むと怒り恨むる事なかれ。孝を盡して、誠を以て感ぜしむれば、彼もまた人心あれば、後は必心和ぎて、いつくしみある理なり。二曰、婦人は別に主君なし。夫を誠に主君と思ひて、敬ひ愼みて事ふべし。

新字:一又女子の嫁する時、兼てより父母の教ふべき事十三ヶ条あり。一曰、我が家にありては、我が父母にもはら孝を行ふ理なり。されども夫の家に往きては、もはら舅姑を、我が二親よりも猶重んじて、厚く愛み敬ひ、孝行を尽すべし。親の方を重んじ、しうとの方を軽んずる事なかれ。しうとの方に、朝夕の見舞を欠くべからず。しうとの方の務むべきわざを怠るべからず。若しうとの命あらば、慎み行ひて背くべからず。凡の事、舅姑に問ひて、其教に任すべし。舅姑もし我を愛せずして、謗り悪むと怒り恨むる事なかれ。孝を尽して、誠を以て感ぜしむれば、彼もまた人心あれば、後は必心和ぎて、いつくしみある理なり。二曰、婦人は別に主君なし。夫を誠に主君と思ひて、敬ひ慎みて事ふべし。

書き下し

一又女子の嫁する時、兼てより父母の教ふべき事十三ヶ条あり。一曰、我が家にありては、我が父母にもはら孝を行ふ理なり。されども夫の家に往きては、もはら舅姑を、我が二親よりも猶重んじて、厚く愛み敬ひ、孝行を尽すべし。親の方を重んじ、しうとの方を軽んずる事なかれ。しうとの方に、朝夕の見舞を欠くべからず。しうとの方の務むべきわざを怠るべからず。若しうとの命あらば、慎み行ひて背くべからず。凡の事、舅姑に問ひて、其教に任すべし。舅姑もし我を愛せずして、謗り悪むと怒り恨むる事なかれ。孝を尽して、誠を以て感ぜしむれば、彼もまた人心あれば、後は必心和ぎて、いつくしみある理なり。二曰、婦人は別に主君なし。夫を誠に主君と思ひて、敬ひ慎みて事ふべし。

現代語訳

また女子が嫁ぐ時、前もって父母が教えるべきことが十三か条あります。一に言う。自分の家にいては、自分の父母にもっぱら孝を行うのが道理です。けれども夫の家に行ったら、もっぱら舅・姑を、自分の両親よりもなお重んじて、厚く愛し敬い、孝行を尽くしなさい。親の方を重んじて、舅・姑の方を軽んじてはなりません。舅・姑の方に、朝夕の見舞いを欠かしてはなりません。舅・姑の方で勤めるべき仕事を怠ってはなりません。もし舅・姑の命があれば、慎んで行って背いてはなりません。およそ何事も、舅・姑に尋ねて、その教えに任せなさい。舅・姑がもし自分を愛さずに謗り憎んでも、怒り恨んではなりません。孝を尽くして誠をもって感じさせれば、相手もまた人の心があるので、後には必ず心が和らいで、慈しみが生まれる道理です。二に言う。婦人には別に主君はありません。夫をまことの主君と思って、敬い慎んで仕えなさい。

解説

嫁ぐ娘に教える十三か条の始まりで、舅姑への孝と夫への仕え方を説いています。この十三か条は、のちの『女大学』の骨組みとなった部分です。嫁ぎ先では実の親より舅姑を重んじよ、憎まれても恨まず誠を尽くせば心は通じる、と益軒は言います。夫を主君と思えという教えは、家制度の下での夫婦の上下関係を示すもので、今日の対等な夫婦観とは相容れません。ただ、相手に冷たくされても誠を尽くせば関係は変わりうるという考えは、人間関係の知恵として読み取れます。

この章句が説くこと

孝舅姑家女大学女子教育

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