和俗童子訓 / 巻之四・手習法
一國字を書くに、假名遣とてにはを知るべし。かなづかひとは、音を書くに開合あり。開合とは、字を唱ふるに、口のひらくと合ふとなり。和音五十字の内、あかさたな、はまやらわは、ひらく音なり。江肴豪陽唐庚淸靑の韻の字は、皆開くなり。おこそとの、ほもよろをは、合ふ音なり。東冬蕭霄蒸登尤侯幽の韻の字は、皆合へるなり。又和訓の詞の字のかなづかひは、いゐ、おを、えゑの三音は、各二字づつ同音なれど、字により所によりて、いの字を用ひゐの字を用ふるかはりあり。おをとえゑも亦同じ。又はひふへほと書きて、わゐうゑをとよむは、和訓の詞の字、中にあり下にある時の書きやう讀みやうなり。是も和音五十字にて通ずる理あり。是皆かなづかひの習ひ也。
新字:一国字を書くに、仮名遣とてにはを知るべし。かなづかひとは、音を書くに開合あり。開合とは、字を唱ふるに、口のひらくと合ふとなり。和音五十字の内、あかさたな、はまやらわは、ひらく音なり。江肴豪陽唐庚清青の韻の字は、皆開くなり。おこそとの、ほもよろをは、合ふ音なり。東冬蕭霄蒸登尤侯幽の韻の字は、皆合へるなり。又和訓の詞の字のかなづかひは、いゐ、おを、えゑの三音は、各二字づつ同音なれど、字により所によりて、いの字を用ひゐの字を用ふるかはりあり。おをとえゑも亦同じ。又はひふへほと書きて、わゐうゑをとよむは、和訓の詞の字、中にあり下にある時の書きやう読みやうなり。是も和音五十字にて通ずる理あり。是皆かなづかひの習ひ也。
書き下し
一国字を書くに、仮名遣とてにはを知るべし。かなづかひとは、音を書くに開合あり。開合とは、字を唱ふるに、口のひらくと合ふとなり。和音五十字の内、あかさたな、はまやらわは、ひらく音なり。江肴豪陽唐庚清青の韻の字は、皆開くなり。おこそとの、ほもよろをは、合ふ音なり。東冬蕭霄蒸登尤侯幽の韻の字は、皆合へるなり。又和訓の詞の字のかなづかひは、いゐ、おを、えゑの三音は、各二字づつ同音なれど、字により所によりて、いの字を用ひゐの字を用ふるかはりあり。おをとえゑも亦同じ。又はひふへほと書きて、わゐうゑをとよむは、和訓の詞の字、中にあり下にある時の書きやう読みやうなり。是も和音五十字にて通ずる理あり。是皆かなづかひの習ひ也。
現代語訳
国字(仮名)を書くには、仮名遣いとてにをはを知りなさい。仮名遣いとは、音を書くのに開合があるということです。開合とは、字を唱える時に、口が開くのと合わさるのとのことです。五十音のうち、あかさたな・はまやらわは開く音です。江・肴・豪・陽・唐・庚・清・青の韻の字は、皆開く音です。おこそとの・ほもよろをは合わさる音です。東・冬・蕭・霄・蒸・登・尤・侯・幽の韻の字は、皆合わさる音です。また和訓の言葉の字の仮名遣いは、い・ゐ、お・を、え・ゑの三つの音は、それぞれ二字ずつ同じ音ですが、字により所によって、「い」の字を使うか「ゐ」の字を使うかの違いがあります。「お・を」と「え・ゑ」もまた同じです。また「はひふへほ」と書いて「わゐうゑを」と読むのは、和訓の言葉の字が語中や語末にある時の書き方・読み方です。これも五十音によって通じる道理があります。これらは皆、仮名遣いの習いです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『文武訓』文訓下一仮名づかひといふは、国字四十七字の内、いゐ、おを、えゑ、此三は同音なり。上中下の在所につきて、用ふる字かはるなり。はひふへほの五字、和訓の下にある時は、わゐうゑを、と読むなり。是は同音に非ず。上の、いゐ、をお、えゑ、は同音なり。上の続によりて、転じて同音として字を書きかふるなり。はひふへほと、わゐうゑをは同音にあらず。同音にあらざれども、下にある時は同音として読むなり。又漢字の音も、韻の開合にしたがひて、文字づかひ変る。又、てには、字によりて仮名遣かはる。
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『和俗童子訓』巻之四・手習法一小児初て手習するには、先一二三四五六七八九十百千万億、次に天地、父母、五倫、五常、四端、七情、四民、陰陽、五行、四時、四方、五穀、五味、五色などの名目の手本を、真字に書きて、大に書習はしむべし。一あいうえお五十字は、和音に通ずるに益あり。横縦に読覚ゆべし。かな遣てにはなど是を以て知るべし。いろはの益なきにまされり。国字も皆是に備れり。片仮名はおそく教へ知らしむべし。
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『和俗童子訓』巻之四・手習法五十音に能く通ずれば、其相通を知るなり。又てにはとは漢字にも和語にもあり。漢字和語の本訓の外、つけ字をてにはと云ふ。てにはと云ふは、本訓の外つけ字に、ての字、にの字、はの字多き故に名づく。又てにをはとも云ふは、をの字も多ければなり。和字四十八字をいろはと云ふがごとし。学んで時に之を習ふとよめば、ての字、にの字、をの字は、皆てには也。やまと歌は、人の心を種としてと読めば、はの字、をの字、ての字、皆てには也。又和語のてには、上下相対するならひあり。ぞける、こそけれ。にけり、てけれ。是上をぞと云へば、下はけると云ひ、花ぞ散りけると云ふべし。花ぞちりけりとは云ふべからず。上にてこそと云へば、下はけれと云ふべし。
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『和俗童子訓』巻之三・随年教法一六歳の正月、始て一二三四五六七八九十百千万億の数の名と、東西南北の方の名とを教へ、其生れつきの利鈍をはかりて、六七歳より、和字を読ませ、書きならはしむべし。はじめて和字を教ふるに、あいうえお五十韻を平がなに書きて、たてよこに読ませ書きならはしむ。又世間往来のかなの文の手本をならはしむべし。此年ころより、尊長を敬ふ事を教へ、尊卑長幼のわかちをも知らしめ、ことばづかひをも教ふべし。一七歳、是より男女席を同じくしてならび坐せず、食を共にせず。此ころ、小児の少し智出来、言ふことをきき知るほどならば、其智をはかり、年に宜しきほど、やうやく礼法を教ふべし。又和字のよみかきをも習はしむべし。
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『和俗童子訓』巻之四・手習法上にてこそと云ひて、下にてけりと云ふべからず。にけり、てけれも、是を以て知るべし。又はし、ぞきと云ふは、上をはといへば、下はしと云ひ、上をぞと云へば、下はきといふ。たとへば、鐘の音はうし、鐘の音ぞうき、此類を云ふ。是皆てにはの習ひなり。かなづかひ開合と、てにはを知らで、和文和歌を書けば、ひが事多くして笑ふべし。
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『益軒家訓』幼児須教一学問をするに、明師良友を選び事ふべし。師友悪しければ、学びても後悪しく、一生道を知らず。よく是を選ぶべし。諸芸も亦然り。一六歳の正月、始て数の名と、我が邦の仮名を習はしむべし。伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を教ふべし。和語に通ずるに利あり。七歳の時始て孝経を読ましめ、孝弟忠信礼儀廉恥の義を教へ、又五常五倫三綱六紀四端七情六芸四民等の名目、多く教へ知らしむべし。一時に多く教ふべからず。少し教へてよく覚えさすべし。都て小児に書を読ましむるは、皆此法也。
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