和俗童子訓 / 巻之三・読書法
まづ孝弟忠信禮義廉恥の字義を敎へ、五常、五倫、五敎、三綱、三德、三事、四端、七情、四勿、五事、六藝、兩儀、二氣、三辰、四時、四方、四德、四民、五行、十干、十二支、五味、五色、五音、二十四氣、十二月の異名和名、四書、五經、三史の名目、本朝の六國史の名目、日本六十六州の名、其住せる國の郡の名、本朝の古の帝王の御諡、百官の名唐の三皇五帝三王の御名、歷代の國號等を、和漢名數の書にかき集め置けるを、そらに讀み覺えさすべし。又鳥獸蟲魚貝の類、草木の名を多く書き集めて讀み覺えしむべし。此外に、覺えてよき事多し。そらに覺えざる事は用に立たず。又周南召南の詩、蒙求の本文五百九十八句、性理字訓の本編、三字經、千字類合、千家詩などの、句短く覺え易きものを敎ふべし。
新字:まづ孝弟忠信礼義廉恥の字義を教へ、五常、五倫、五教、三綱、三徳、三事、四端、七情、四勿、五事、六芸、両儀、二気、三辰、四時、四方、四徳、四民、五行、十干、十二支、五味、五色、五音、二十四気、十二月の異名和名、四書、五経、三史の名目、本朝の六国史の名目、日本六十六州の名、其住せる国の郡の名、本朝の古の帝王の御諡、百官の名唐の三皇五帝三王の御名、歴代の国号等を、和漢名数の書にかき集め置けるを、そらに読み覚えさすべし。又鳥獣虫魚貝の類、草木の名を多く書き集めて読み覚えしむべし。此外に、覚えてよき事多し。そらに覚えざる事は用に立たず。又周南召南の詩、蒙求の本文五百九十八句、性理字訓の本編、三字経、千字類合、千家詩などの、句短く覚え易きものを教ふべし。
書き下し
まづ孝弟忠信礼義廉恥の字義を教へ、五常、五倫、五教、三綱、三徳、三事、四端、七情、四勿、五事、六芸、両儀、二気、三辰、四時、四方、四徳、四民、五行、十干、十二支、五味、五色、五音、二十四気、十二月の異名和名、四書、五経、三史の名目、本朝の六国史の名目、日本六十六州の名、其住せる国の郡の名、本朝の古の帝王の御諡、百官の名唐の三皇五帝三王の御名、歴代の国号等を、和漢名数の書にかき集め置けるを、そらに読み覚えさすべし。又鳥獣虫魚貝の類、草木の名を多く書き集めて読み覚えしむべし。此外に、覚えてよき事多し。そらに覚えざる事は用に立たず。又周南召南の詩、蒙求の本文五百九十八句、性理字訓の本編、三字経、千字類合、千家詩などの、句短く覚え易きものを教ふべし。
現代語訳
まず孝・弟・忠・信・礼・義・廉・恥の字の意味を教え、五常、五倫、五教、三綱、三徳、三事、四端、七情、四勿、五事、六芸、両儀、二気、三辰、四時、四方、四徳、四民、五行、十干、十二支、五味、五色、五音、二十四気、十二か月の異名と和名、四書・五経・三史の名目、日本の六国史の名目、日本六十六か国の名、自分の住む国の郡の名、日本の昔の帝王のおくり名、百官の名、中国の三皇・五帝・三王の御名、歴代の国号などを、和漢の名数の書に書き集めておいたものを、暗記させなさい。また鳥・獣・虫・魚・貝の類、草木の名を多く書き集めて読み覚えさせなさい。このほかにも、覚えておくとよいことは多くあります。暗記していないことは役に立ちません。また詩経の周南・召南の詩、蒙求の本文五百九十八句、性理字訓の本編、三字経、千字類合、千家詩などの、句が短く覚えやすいものを教えなさい。
解説
この章句が説くこと
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児に初て書を授くるには、文句を長く教ふべからず。一句二句教ふ。また一度に多く授くべからず。多ければ覚え難く、覚えても堅固ならず、其上厭ひ倦んで学を嫌ふ。必退屈せざるやうに、少しづつ授くべし。其教へやうは、初は唯一字二字三字づつ字を知らしむべし。其後、一句づつ教ふべし。既に字を知り句を覚えば、小児をして自ら読ましむべし。両句を教ふるには、まづ一句を読み覚えさせ、熟読すれば、次の句を又右の如くに読ましめ、既に熟読して、前句と後句と通読せしめて止むべし。如此する事数日にして、後又一両句づつ、漸に添へて授くべし。其後授くるに、やうやく字多ければ、分つて二三次となして、授け読ましめ、其二三次、各熟読して、合せて通読せしむ。もし其中覚え難き所あらば、其所ばかり又数遍読ましむ。又甚読み易き所をば、分ち読む時は読むべからず。是省功の法なり。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一凡書を読むには、早く先を読むべからず。毎日返り読を専ら勤むべし。返り読を数十遍勤め終りて、其先を読むべし。然らずして、唯はかゆかん事を好みて、返り読少なければ、必忘れて、我が習ひし功も、師の教へし功もすたりて、広く数十巻の書を読んでも益なし。一巻にても能く覚ゆれば、学力となりて、功用をなす。必よくおぼゆべし。書を読んでも、学進まざるは、熟読せずして覚えざればなり。才性あらば、八歳より十四歳まで、七年の間に、小学、四書、五経等、皆読み終る。四書五経熟読すれば、才力いでき、学問の本たつ。其力を以て、やうやく年長じて、広く群書を見るべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一小児の時、経書の内、とりわき孟子をよく熟誦すべし。是義理の学に益あるのみならず、文章を作る料なり。此書文章の法則と筆力を助く。朱子も、孟子を熟誦して文法をさとれりと云へり。又文章を作るためには、礼記の檀弓、周礼の考工記を熟誦すべし。是等は皆古人の説なり。又漢文の内数篇、韓柳欧蘇曽南豊等の文の内にて、心に叶へるを択びて、三十篇熟誦し、そらに書きて忘れざるべし。作文の学、必如此すべし。
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『益軒家訓』幼児須教一学問をするに、明師良友を選び事ふべし。師友悪しければ、学びても後悪しく、一生道を知らず。よく是を選ぶべし。諸芸も亦然り。一六歳の正月、始て数の名と、我が邦の仮名を習はしむべし。伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を教ふべし。和語に通ずるに利あり。七歳の時始て孝経を読ましめ、孝弟忠信礼儀廉恥の義を教へ、又五常五倫三綱六紀四端七情六芸四民等の名目、多く教へ知らしむべし。一時に多く教ふべからず。少し教へてよく覚えさすべし。都て小児に書を読ましむるは、皆此法也。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法右の名目小篇などを読み覚えて後、経書を教ふべし。初より文句長き読み難き経書を教へて、其気を屈せしむべからず。経書を教ふるには、まづ孝経の首章、次に論語学而の篇を読ましめ、皆熟読して後、その要義をもあらあら説き聞かすべし。小学四書は、最初より読みにくし。故にまづ右に云ふ所の文句の短きものを多く読ませて、次に小学を読ませ、後に四書五経を読ましむべし。
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『和俗童子訓』巻之三・読書法一書を読み学問する法、年若く記臆強き時、四書五経を常に熟読し、遍数を如何程も多く重ねて、記誦すべし。小児の時に限らず、老年に至りても、常に循環して読むべし。是義理の学問の根本となるのみならず、又文章を学ぶ法則となる。次に左伝を数十遍看読すべし。其益多し。是学問の要訣なり、知らずんばあるべからず。
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