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和俗童子訓 / 巻之三・随年教法

一かしづきて從ふ人より、まづ孝弟の道を敎ふべし。能く父母に事ふるを孝とし、よく兄長に事ふるを弟とす。是人たる者の第一に勤め行ふべき道なる事、かしづきて師となる人、早く敎ふべし。次に兄長を敬ひ從ひて、侮るべからざる事を敎ふべし。兄長とは、兄姊をぢをば、また、いとこの内、其外にも、年たけて敬ふべき人を云ふ。凡孝弟の二は、人間の道を行ふ本なり。萬事の善は、皆是よりはじまれる事を敎ふべし。父母兄長におそれつゝしみて、其敎いましめを能く聞きて背かざる事を敎ふべし。敎を背きては、無下の事なり。父母を恐れず、兄長を侮らば、戒めてゆるすべからず。もし人を侮る事をゆるし、かへりて笑ひ悅べば、小兒は善惡を辨へずして、悪しからざる事とおもひ、長じて後、此くせやまず。

新字:一かしづきて従ふ人より、まづ孝弟の道を教ふべし。能く父母に事ふるを孝とし、よく兄長に事ふるを弟とす。是人たる者の第一に勤め行ふべき道なる事、かしづきて師となる人、早く教ふべし。次に兄長を敬ひ従ひて、侮るべからざる事を教ふべし。兄長とは、兄姊をぢをば、また、いとこの内、其外にも、年たけて敬ふべき人を云ふ。凡孝弟の二は、人間の道を行ふ本なり。万事の善は、皆是よりはじまれる事を教ふべし。父母兄長におそれつゝしみて、其教いましめを能く聞きて背かざる事を教ふべし。教を背きては、無下の事なり。父母を恐れず、兄長を侮らば、戒めてゆるすべからず。もし人を侮る事をゆるし、かへりて笑ひ悦べば、小児は善悪を弁へずして、悪しからざる事とおもひ、長じて後、此くせやまず。

書き下し

一かしづきて従ふ人より、まづ孝弟の道を教ふべし。能く父母に事ふるを孝とし、よく兄長に事ふるを弟とす。是人たる者の第一に勤め行ふべき道なる事、かしづきて師となる人、早く教ふべし。次に兄長を敬ひ従ひて、侮るべからざる事を教ふべし。兄長とは、兄姊をぢをば、また、いとこの内、其外にも、年たけて敬ふべき人を云ふ。凡孝弟の二は、人間の道を行ふ本なり。万事の善は、皆是よりはじまれる事を教ふべし。父母兄長におそれつつしみて、其教いましめを能く聞きて背かざる事を教ふべし。教を背きては、無下の事なり。父母を恐れず、兄長を侮らば、戒めてゆるすべからず。もし人を侮る事をゆるし、かへりて笑ひ悦べば、小児は善悪を弁へずして、悪しからざる事とおもひ、長じて後、此くせやまず。

現代語訳

子どもの世話をして付き従う人から、まず孝弟の道を教えなさい。よく父母に仕えることを孝とし、よく兄や年長者に仕えることを弟とします。これが人として第一に勤め行うべき道であることを、世話をして師となる人が、早く教えなさい。次に、兄や年長者を敬い従って、侮ってはならないことを教えなさい。兄長とは、兄・姉・おじ・おば、またいとこのうち、そのほかでも年長で敬うべき人を言います。およそ孝と弟の二つは、人の道を行う本です。あらゆる善はみなこれから始まることを教えなさい。父母や兄長を恐れ慎んで、その教えや戒めをよく聞いて背かないことを教えなさい。教えに背くのは、ひどいことです。父母を恐れず、兄長を侮ったら、戒めて許してはなりません。もし人を侮ることを許し、かえって笑って喜べば、子どもは善悪をわきまえずに悪いことではないと思い、大きくなってからもこの癖はやみません。

解説

子どもに最初に教える徳として孝弟を挙げ、その範囲を具体的に示した条です。兄長には、兄や姉、おじ・おば、年上のいとこ、そのほか年長で敬うべき人が含まれると言います。「万事の善は孝弟より始まる」という考えは、頭注によれば後漢書の「孝は百行の本、衆善の始め」に通じます。子が人を侮るのを大人が笑って喜べば、子は悪いことだと思わず癖になる、という指摘は鋭いものです。子どもの失礼な言動を面白がってしまう大人の反応が、そのまま子の癖を作るという点は、今も変わりません。

この章句が説くこと

孝弟年長者しつけ敬

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