和俗童子訓 / 巻之一・総論上
もろこしにて、公義の法度を恐れず、我が家業を勤めざる者を無賴と云ふ。是放逸にして、父兄の敎にしたがはざるいたづらものなり。無賴の小人は、必酒色と淫樂を好み、又博奕を好みて、諫を防ぎ恥を知らず、友を引そこなふ者なり。必其子を戒めて、彼に交らしむべからず。一度是と交りて、其風に移りぬれば、親の戒世の謗をも恐れず。とがを犯し、わざはひにあへども顧みず。もし幸にしてわざはひに免るといへども、大不孝の罪におち入りて、惡名を流す。わざはひを免れざる者は、一生の身を失ひ、家を破る。悲しむべきかな。
新字:もろこしにて、公義の法度を恐れず、我が家業を勤めざる者を無頼と云ふ。是放逸にして、父兄の教にしたがはざるいたづらものなり。無頼の小人は、必酒色と淫楽を好み、又博奕を好みて、諫を防ぎ恥を知らず、友を引そこなふ者なり。必其子を戒めて、彼に交らしむべからず。一度是と交りて、其風に移りぬれば、親の戒世の謗をも恐れず。とがを犯し、わざはひにあへども顧みず。もし幸にしてわざはひに免るといへども、大不孝の罪におち入りて、悪名を流す。わざはひを免れざる者は、一生の身を失ひ、家を破る。悲しむべきかな。
書き下し
もろこしにて、公義の法度を恐れず、我が家業を勤めざる者を無頼と云ふ。是放逸にして、父兄の教にしたがはざるいたづらものなり。無頼の小人は、必酒色と淫楽を好み、又博奕を好みて、諫を防ぎ恥を知らず、友を引そこなふ者なり。必其子を戒めて、彼に交らしむべからず。一度是と交りて、其風に移りぬれば、親の戒世の謗をも恐れず。とがを犯し、わざはひにあへども顧みず。もし幸にしてわざはひに免るといへども、大不孝の罪におち入りて、悪名を流す。わざはひを免れざる者は、一生の身を失ひ、家を破る。悲しむべきかな。
現代語訳
中国では、公の法度を恐れず、自分の家業を勤めない者を「無頼」と言います。これは放逸で、父兄の教えに従わない、ろくでなしの者です。無頼の小人は、必ず酒色と淫らな音楽を好み、また博打を好んで、諫めを拒み恥を知らず、友を引き込んで損なう者です。必ずその子を戒めて、そういう者と交わらせてはなりません。一度これと交わってその風に染まると、親の戒めも世間の謗りも恐れません。罪を犯し、禍にあっても顧みません。もし幸いに禍を免れたとしても、大不孝の罪に落ちて悪名を流します。禍を免れない者は、一生の身を失い、家を破ります。悲しいことではありませんか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『初学訓』巻之四一友とする人は、尤も択ぶべし。智ありて、わが悪しきを正し、善きをすすむる忠直なる頼しき人あらば、親みて友とすべし。直ならず柔かにして、わが心にかなへる人は、益なし。一わが子弟など、年わかき者の友だちの交り、尤もはやく択ぶべし。友なふ人にうつり易きこと、古人、麪に油の染み易きに譬ふ。わかき人の善悪は、皆その友による。公儀の法をおそれず、親の命をきかず、酒色と淫楽博奕を好み、我身の恥を知らず、わが家の業をつとめざる者を、名づけて無頼の人といふ。年若き子弟を、無頼の人に一日も交らしむべからず。必ずひきそこなはれ、悪におち入り易し。一たびかかる悪友にならへば、善き方へ立ちかへり難し。恐るべし。
-
『和俗童子訓』巻之一・総論上一子弟を教ふるには、まづ其交る所の友をえらぶを要とすべし。其子の生れつきよく、父の教正しくとも、放逸なる無頼の小人に交りて、それと往来すれば、必彼に引そこなはれて悪しくなる。況や其子の性質善からざるをや。古人の語に、年若き子弟、たとひ年を終るまで書を読まずとも、一日小人に交るべからずと云へり。一年書を読まざるは、甚悪しけれども、猶それよりも、一日小人に交るは悪しき事となり。是悪しき友の甚害ある事を云へり。人の善悪は、皆友によれり。古語に曰、麻の中なる蓬は、助けざれども自ら直し。又曰、朱に交れば赤し、墨に近づけば黒しといふ事、誠にしかり。若き時は、血気未だ定らず、見る事聞く事にうつり易きゆゑ、友あしければ、悪にうつる事早し。
-
『和俗童子訓』巻之二・総論下外に出て遊び居るには、必常の然るべき親戚朋友の所を定めて、妄にあなたこなた用なき所に行かず、其友として交る所の人をえらびて、善人に常に近づき、良友に交るべし。善人に交れば、其善を見習ひて、善言を聞き、我が過を聞きて、益多し。悪しき友に交れば、早く悪に移り易し。必友をえらびて、かりそめにも悪友に交るべからず。恐るべし。朝には早く起きて親に事へ、事をつとむべし。あさいして怠るべからず。凡人の勤は、朝を初とす。あさいする人は、必怠りて万事行はれず。夜に至りても事を勤むべし。早くいねて事を怠るも、用なきに夜更るまでいねがてにて時を誤るも、共に子弟の法に背けり。衣服を著、帯をしたる形も整ひて、威儀正しかるべし。
-
『和俗童子訓』巻之二・総論下一凡子弟年若き輩、悪しき友に交りて、心うつり行けば、酒色にふけり、淫楽を好み、放逸に流れ、淫行を行ひ、一かたに悪しき道に赴きて、よき事を好まず、孝弟を行ひ、家業を勤め、書を読み、芸術を習ふ事をきらひ、少しの勤もむつかしがりて、頭いたく気なやむなど云ひ、万のつとむべき業をば、皆気つまるとて勤めず。父母は愛に溺れて、唯其気随に任せて放逸を免しぬれば、いよいよ其心ほしいままになりて、習ひて性となりぬれば、よき事をきらひむつかしがりて、気つまり病起ると云ひて勤めず。中にも、書き読む事を深くきらふ。凡気のつまるといふ事、皆よき事をきらひ、むつかしく思へる気随より起れる病なり。我がすき好める事には、終日終夜心を尽し力を用ひても気つまらず。
-
『和俗童子訓』巻之二・総論下一子弟孫姪など、幼き者には、礼義を正しくせん事を教ふべし。淫乱色慾の事、戯のことば、非礼のわざを戒めて、為さしむべからず。又道理なき正しからざる札守祈祷などを、妄に信じて迷へること、禁ずべし。幼く若き時より、かやうの事に心迷ひぬれば、其心くせになりて、一生其迷とけざるものなり。神祇をば恐れ尊び、敬ひて遠ざかるべし。なれ近づきて、けがし侮るべからず。我が身に道なく私ありて、神に諂ひ祈りても、神は正直聰明なれば、非礼をうけ給はず、へつらひを悦び給はずして、利益無き事を知るべし。
-
『和俗童子訓』巻之一・総論上或は小児の気にさからひたる者をば、理をまげて小児の非をそだて、そらうちなどすれば、驕慢の心いでくるものなり。小児をもてあそびて、我が心を慰めんが為に、様々の詞にて、そびやかし苦め、いかり争はしめて、ひがみまがれる心をつけ、貪りねたむ心ざしを引出す。しかのみならず、父母の愛過ぐる故、あまえて父母を恐れず、兄を蔑にし、家人を苦め、よろづ恣にして人を侮る。いましむべき事をかへりてすすめ、咎むべき事をかへりて笑ひ悦び、色々あしき事どもを見聞かせ、言ひならはせ、しならはせて、やうやく年長じ、智恵いでくる時に至りて、俄に始ていましむれども、其悪しきならはし、年と共に長じ、久しくならひ染みて、本性も等しくなりにたれば、諫を用ひず。幼き時に教なく、年長じて俄に諫むれども随はざれば、本性悪しく生れつきたるとのみ思ふ事、いとおろかに、まどひの深き事ならずや。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る