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和俗童子訓 / 巻之一・総論上

一幼き時より。心ことばに、忠信を主として、僞なからしむべし。もし人をあざむき、僞をいはゞ、嚴しくいましむべし。こなたよりも、幼子を欺きて、僞を敎ふべからず。こなたより僞れば、小兒是に習ふものなり。かりそめにも僞をいふは、人にあらずと思ふべし。心に僞と知りながら、心を欺くは、其罪いよいよ深し。又人と約したる事あらば、必其約を違へざるべし。約を違へては僞となり、信を失へば人にあらず。もし後に信を守り難き事は、初より約すべからず。又小兒には、利欲を敎へ知らしむべからず。よろづにさとくとも、僞りて且慾深く、人の物をむさぼるは、小人のわざなれば、幼き時より、早く是を戒むべし。ゆるすべからず。

新字:一幼き時より。心ことばに、忠信を主として、偽なからしむべし。もし人をあざむき、偽をいはゞ、厳しくいましむべし。こなたよりも、幼子を欺きて、偽を教ふべからず。こなたより偽れば、小児是に習ふものなり。かりそめにも偽をいふは、人にあらずと思ふべし。心に偽と知りながら、心を欺くは、其罪いよいよ深し。又人と約したる事あらば、必其約を違へざるべし。約を違へては偽となり、信を失へば人にあらず。もし後に信を守り難き事は、初より約すべからず。又小児には、利欲を教へ知らしむべからず。よろづにさとくとも、偽りて且慾深く、人の物をむさぼるは、小人のわざなれば、幼き時より、早く是を戒むべし。ゆるすべからず。

書き下し

一幼き時より。心ことばに、忠信を主として、偽なからしむべし。もし人をあざむき、偽をいはば、厳しくいましむべし。こなたよりも、幼子を欺きて、偽を教ふべからず。こなたより偽れば、小児是に習ふものなり。かりそめにも偽をいふは、人にあらずと思ふべし。心に偽と知りながら、心を欺くは、其罪いよいよ深し。又人と約したる事あらば、必其約を違へざるべし。約を違へては偽となり、信を失へば人にあらず。もし後に信を守り難き事は、初より約すべからず。又小児には、利欲を教へ知らしむべからず。よろづにさとくとも、偽りて且慾深く、人の物をむさぼるは、小人のわざなれば、幼き時より、早く是を戒むべし。ゆるすべからず。

現代語訳

幼い時から、心にも言葉にも忠信を第一として、偽りのないようにさせなさい。もし人をあざむき偽りを言ったら、厳しく戒めなさい。こちらからも幼い子をあざむいて、偽りを教えてはなりません。こちらが偽れば、子どもはそれに倣うものです。かりそめにも偽りを言うのは人ではないと思いなさい。心で偽りと知りながら自分の心をあざむくのは、その罪はいっそう深いのです。また人と約束したことがあれば、必ずその約束を違えてはなりません。約束を違えれば偽りとなり、信を失えば人ではありません。もし後になって信を守れそうにないことは、初めから約束してはなりません。また子どもに利欲を教え知らせてはなりません。何事にさとくても、偽りをして欲深く、人の物を貪るのは小人のすることですから、幼い時から早くこれを戒めなさい。許してはなりません。

解説

忠信、つまり誠実さと信頼を幼時から身につけさせよと説く条です。「人にして信無くんば其の可なるを知らず」という論語為政篇の言葉が背景にあり、信を失えば人ではないとまで言い切ります。大人の側が子をあざむけば子もそれに倣うという指摘、守れない約束は初めからするなという教え、利欲を早くから教えるなという戒めは、どれも具体的です。子どもとの約束を大人が軽く扱っていないか、損得ばかりを教えていないかを振り返らせる内容で、信用を重んじる仕事の場にも通じます。

この章句が説くこと

信忠信偽り約束利欲

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