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和俗童子訓 / 巻之一・総論上

一小兒を育つるには、前にも聞えつるやうに、先乳母かしづき隨ふものをえらぶべし。心穩にして邪なく、愼みて言少なきをよしとす。わるがしこく口きゝ、僞をいひ、詞多く、心邪にして僻み、氣猛く、恣にふるまひ、酩酊を好むを惡しゝとす。凡小兒は智なし。心も詞も萬の振舞も、皆其かしづき隨ふ者を見習ひ聞きならひて、彼に似するものなり。乳母かしづき隨ふ人惡しければ、育つる子、それに似て惡しくなる故に、其人をよくえらぶべし。貧賤なる家には、人をえらぶ事難しといへど、此心得有るべし。況や位高く祿とめる家をや。

新字:一小児を育つるには、前にも聞えつるやうに、先乳母かしづき随ふものをえらぶべし。心穏にして邪なく、慎みて言少なきをよしとす。わるがしこく口きゝ、偽をいひ、詞多く、心邪にして僻み、気猛く、恣にふるまひ、酩酊を好むを悪しゝとす。凡小児は智なし。心も詞も万の振舞も、皆其かしづき随ふ者を見習ひ聞きならひて、彼に似するものなり。乳母かしづき随ふ人悪しければ、育つる子、それに似て悪しくなる故に、其人をよくえらぶべし。貧賤なる家には、人をえらぶ事難しといへど、此心得有るべし。況や位高く禄とめる家をや。

書き下し

一小児を育つるには、前にも聞えつるやうに、先乳母かしづき随ふものをえらぶべし。心穏にして邪なく、慎みて言少なきをよしとす。わるがしこく口きき、偽をいひ、詞多く、心邪にして僻み、気猛く、恣にふるまひ、酩酊を好むを悪ししとす。凡小児は智なし。心も詞も万の振舞も、皆其かしづき随ふ者を見習ひ聞きならひて、彼に似するものなり。乳母かしづき随ふ人悪しければ、育つる子、それに似て悪しくなる故に、其人をよくえらぶべし。貧賤なる家には、人をえらぶ事難しといへど、此心得有るべし。況や位高く禄とめる家をや。

現代語訳

子どもを育てるには、前にも述べたように、まず乳母や世話をして付き従う者を選びなさい。心が穏やかで邪心がなく、慎み深くて口数の少ない者がよいのです。ずる賢く口達者で、偽りを言い、口数が多く、心がよこしまでひねくれ、気性が荒く、勝手気ままにふるまい、酒に酔うのを好む者は悪いのです。およそ子どもには分別がありません。心も言葉も一切のふるまいも、皆その世話をして付き従う者を見習い聞き習って、その人に似てくるものです。乳母や付き人が悪ければ、育てる子もそれに似て悪くなるので、その人をよく選びなさい。貧しい家では人を選ぶことは難しいとはいえ、この心得は持っておくべきです。まして位が高く禄の豊かな家ではなおさらです。

解説

前に触れた乳母・付き人の選び方を、よい人と悪い人の特徴を挙げて詳しく述べた条です。穏やかで慎み深く口数の少ない人がよく、口達者で偽りを言い、気性が荒く酒好きな人は悪いとします。子どもは分別がないので、身近な大人をそのまま写し取るという観察が根拠です。武家や裕福な町人の家で乳母や子守を雇うのが普通だった時代の話ですが、保育者やベビーシッターを選ぶとき、また子どもの前での大人自身の話し方やふるまいを見直すときにも、そのまま役立つ視点です。

この章句が説くこと

乳母手本子育て環境模倣

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