和俗童子訓 / 巻之一・総論上
一凡小兒を育つるに、初生より愛を過すべからず。愛過ぐれば、かへりて子をそこなふ。衣服をあつくし、乳食にあかしむれば、必病多し。衣を薄くし。食を少くすれば、病少なし。富貴の家の子は、病多くして身よわく、貧賤の家の子は、病少なくして身强きを以て、其故を知るべし。小兒の初生には、父母の古き衣を改めぬひて、著せしむべし。衣のあたらしくして溫なるは、熱を生じて病となる。古語に、凡小兒を安からしむるには、三分の飢と寒とをおぶべしと云へり。三分とは、十の内三分を云ふ。此意は、少しは飢し、少しは冷すがよしとなり。是古人小兒を保つの良法なり。世俗是を知らず。小兒に乳食を多く與へてあかしめ、甘き物果物を多く食はしむる故に、氣ふさがりて。
新字:一凡小児を育つるに、初生より愛を過すべからず。愛過ぐれば、かへりて子をそこなふ。衣服をあつくし、乳食にあかしむれば、必病多し。衣を薄くし。食を少くすれば、病少なし。富貴の家の子は、病多くして身よわく、貧賤の家の子は、病少なくして身強きを以て、其故を知るべし。小児の初生には、父母の古き衣を改めぬひて、著せしむべし。衣のあたらしくして温なるは、熱を生じて病となる。古語に、凡小児を安からしむるには、三分の飢と寒とをおぶべしと云へり。三分とは、十の内三分を云ふ。此意は、少しは飢し、少しは冷すがよしとなり。是古人小児を保つの良法なり。世俗是を知らず。小児に乳食を多く与へてあかしめ、甘き物果物を多く食はしむる故に、気ふさがりて。
書き下し
一凡小児を育つるに、初生より愛を過すべからず。愛過ぐれば、かへりて子をそこなふ。衣服をあつくし、乳食にあかしむれば、必病多し。衣を薄くし。食を少くすれば、病少なし。富貴の家の子は、病多くして身よわく、貧賤の家の子は、病少なくして身強きを以て、其故を知るべし。小児の初生には、父母の古き衣を改めぬひて、著せしむべし。衣のあたらしくして温なるは、熱を生じて病となる。古語に、凡小児を安からしむるには、三分の飢と寒とをおぶべしと云へり。三分とは、十の内三分を云ふ。此意は、少しは飢し、少しは冷すがよしとなり。是古人小児を保つの良法なり。世俗是を知らず。小児に乳食を多く与へてあかしめ、甘き物果物を多く食はしむる故に、気ふさがりて。
現代語訳
およそ子どもを育てるには、生まれた時から愛情をかけ過ぎてはなりません。愛が過ぎると、かえって子を損ないます。衣服を厚くし、乳や食べ物を飽きるほど与えれば、必ず病気が多くなります。衣服を薄くし、食べ物を少なくすれば、病気は少なくなります。富貴の家の子は病気が多くて体が弱く、貧しい家の子は病気が少なくて体が強いことから、その理由がわかるでしょう。生まれたばかりの子には、父母の古い着物を仕立て直して着せなさい。新しくて暖かい着物は、熱を生じて病気になります。古い言葉に「およそ子どもを安らかにするには、三分の飢えと寒さを帯びさせよ」とあります。三分とは十のうちの三分のことです。その意味は、少しはひもじく、少しは冷えるくらいがよいということです。これは昔の人が子どもの健康を保った良い方法です。世間の人はこれを知りません。子どもに乳や食べ物を多く与えて満腹させ、甘い物や果物を多く食べさせるので、気がふさがって、
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第八・育幼一小児をそだつるは三分の飢と寒とを存すべし、と古人いへり。いふ意は、小児は、少し飢やし、少しひやすべしとなり。小児にかぎらず、大人も亦かくの如くすべし。小児に、味よき食に飽かしめ、きぬ多く著せてあたため過すは、大にわざはひとなる。俗人と婦人は、理にくらくして、子を養ふ道を知らず、只あくまでうまき物を食せ、きぬあつく著せてあたため過すゆゑ、必ず病多く、或は命短し。貧家の子は衣食ともしき故、無病にしていのち長し。
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『和俗童子訓』巻之一・総論上必脾胃を破り、病を生ず。小児の不慮に死する者は、多くは是によれり。また衣をあつくして温め過せば、熱を生じ、元気をもらすゆゑ、筋骨ゆるまりて、身弱し。皆是病を生ずるの本なり。唐も大和も、古より童子の衣の脇をあくるは、童子は気さかんにして、熱多きゆゑ、熱をもらさんが為なり。是を以て、小児は温め過すが悪しき事を知るべし。天気よき時は、をりをり外に出して、風日にあたらしむべし。斯の如くすれば、はだへ堅く、血気強くなりて、風寒に感ぜず。風日にあたらざれば、膚もろくして、風寒に感じ易く、わづらひ多し。小児の養ひの法を、かしづき育つる者に、能くいひ聞かせ教へて、心得しむべし
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『和俗童子訓』巻之一・総論上一小児の時より、早く父母兄長に事へ、賓客に対して、礼を勤め、読書、手習、芸能を勤めまなびて、悪しき方に移るべきいとまなく苦労さすべし。はかなき遊にひまを費さしめて、ならはし悪しくすべからず。衣服、飲食、器物、居処、僕従に至るまで、其家の位よりまどしくばうそくにして、もてなしうすく、心のままならざるがよし。幼き時艱難に習へば、年たけて難苦に堪へやすく、忠孝の勤を苦まず、病少なく驕なくして、放逸ならず。能く家を保ちて、一生の間、幸となり、後の楽多し。もし不意の変にあひ、貧窮に至り、或は戦場に出でても、身の苦なし。斯の如く子を育つるは、誠によく子を愛するなり。又幼少より養豊かにして、もてなしあつく、心のままにして安楽なれば、おごりにならひ、私慾多くして、病多く、艱難に堪へず、父母に事へ君に仕ふるに、勤を苦みて、忠孝も行ひ難く、学問芸能の勤成り難し。
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『和俗童子訓』巻之一・総論上一凡小児を育つるには、始て生れたる時、乳母を求むるに、必温和にして慎み、まめやかに詞少き者をえらぶべし。乳母の外、附き随ふ者をえらぶも、大やう斯の如くなるべし。始て飯を喰ひ、ものを言ひ、人の面を見て悦びいかる心を知る時より、常に其事に随ひて、時々教ふれば、ややおとなしく成りて、いましむる事易し。故に幼き時より、早く教ふべし。もし教へいましむる事おそくして、悪しき事をおほく見習ひ聞習ひ、くせになり僻事出来て後、教へいましむれども、始より心にそみ入りたる悪しき事、心の内に早くあるじとなりぬれば、あらためて善に移ること難し。たとへば小児の手習するに、始風体あしき手本を習へば、後に能き手をならひても移り難く、生改め難きがごとし。
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『養生訓』巻第八・育幼一小児は、脾胃もろくしてせばし。故に食にやぶられやすし。つねに、病人をたもつがごとくにすべし。小児は、陽さかんにして熱多し。つねに熱をおそれて、熱をもらすべし。あたため過せば筋骨よわし。天気よき時は、外に出して風日にあたらしむべし。如此すれば、身堅固にして病なし。肌に著する服は、ふるき布を用ふ。新しき衣新しき綿は、あたため過してあしし、用ふべからず。一小児を保養する法は、香月牛山医士のあらはせる育草に詳に記せり。考へ見るべし。故に、今ここに略せり。
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『家道訓』巻之一・総論上一子をそだつるには、おごりとほしいままなるをはやくいましむべし。衣服器用以下、万の俸養、わが身の俸禄よりかろくうすく、ばうぞくなるべし。愛を過して、物ごとにゆたかに華美なるは、是子におごりを教ふるなり。いとけなき時よりおごれば、年長じてますます甚し。はじめゆたかにして、後におさゆるはあしし。始めかがみて、後にやうやくのぶるはよし。いとけなきよりいましめて、偽なくして誠を本とす。よろづの事、質朴にすべし。又おこたりわがままなるをはやくいましめて、へりくだりゆづる事ををしふべし。子をそだつるに、はやくをしふると、左右の人をえらぶとにありといへるは、賈誼が名言なり。此の二に心を用ふべし。はやくをしへざれば悪にうつりやすし。附きしたがふ人あしければ、あしき事を見聞きて、一生のわざはひとなる。幼よりあしき事を見聞しては、先入の言主となり、後に善事を見聞きてもうつらず。あしき癖つきては、後にならひとなりて改りがたし。
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