尉繚子 / 伍制令
軍中之制,五人為伍,伍相保也;十人為什,什相保也;五十人為屬,屬相保也;百人為閭,閭相保也。伍有干令犯禁者,揭之,免於罪;知而弗揭,全伍有誅。什有干令犯禁者,揭之,免於罪;知而弗揭,全什有誅。屬有干令犯禁者,揭之,免於罪;知而弗揭,全屬有誅。閭有干令犯禁者,揭之,免於罪;知而弗揭,全閭有誅。吏自什長以上,至左右將,上下皆相保也。有干令犯禁者,揭之,免於罪;知而弗揭者,皆與同罪。夫什伍相結,上下相聮,無有不得之奸,無有不揭之罪。父不得以私其子,兄不得以私其弟,而况國人聚舍同食,烏能以干令相私者哉?
新字:軍中之制,五人為伍,伍相保也;十人為什,什相保也;五十人為属,属相保也;百人為閭,閭相保也。伍有干令犯禁者,掲之,免於罪;知而弗掲,全伍有誅。什有干令犯禁者,掲之,免於罪;知而弗掲,全什有誅。属有干令犯禁者,掲之,免於罪;知而弗掲,全属有誅。閭有干令犯禁者,掲之,免於罪;知而弗掲,全閭有誅。吏自什長以上,至左右将,上下皆相保也。有干令犯禁者,掲之,免於罪;知而弗掲者,皆与同罪。夫什伍相結,上下相聮,無有不得之奸,無有不掲之罪。父不得以私其子,兄不得以私其弟,而況国人聚舎同食,烏能以干令相私者哉?
書き下し
軍中の制は、五人を伍と為し、伍は相保つなり。十人を什と為し、什は相保つなり。五十人を属と為し、属は相保つなり。百人を閭と為し、閭は相保つなり。伍に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全伍誅有り。什に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全什誅有り。属に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全属誅有り。閭に令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざれば、全閭誅有り。吏は什長より以上、左右将に至るまで、上下皆相保つなり。令を干し禁を犯す者有れば、之を掲ぐれば、罪を免る。知りて掲げざる者は、皆与に罪を同じくす。夫れ什伍相結び、上下相聯なれば、得ざるの奸無く、掲げざるの罪無し。父も以て其の子を私するを得ず、兄も以て其の弟を私するを得ず、而るを況んや国人の舎を聚め食を同じくするもの、烏んぞ能く令を干すを以て相私する者あらんや。
現代語訳
軍中の制度では、五人を伍とし、伍の者は互いに保証し合う。十人を什とし、什の者は互いに保証し合う。五十人を属とし、属の者は互いに保証し合う。百人を閭とし、閭の者は互いに保証し合う。伍の中に命令を破り禁を犯す者がいれば、それを告発した者は罪を免れる。知っていながら告発しなければ、伍全員が罰せられる。什の中に命令を破り禁を犯す者がいれば、告発した者は罪を免れ、知っていながら告発しなければ、什全員が罰せられる。属の中に命令を破り禁を犯す者がいれば、告発した者は罪を免れ、知っていながら告発しなければ、属全員が罰せられる。閭の中に命令を破り禁を犯す者がいれば、告発した者は罪を免れ、知っていながら告発しなければ、閭全員が罰せられる。役人は什長から上、左右の将軍に至るまで、上下みな互いに保証し合う。命令を破り禁を犯す者がいれば、告発した者は罪を免れ、知っていながら告発しない者は、みな同罪とする。こうして什と伍が結び合い、上下がつながり合えば、捕らえられない悪人はなく、告発されない罪はない。父であっても子をかばうことはできず、兄であっても弟をかばうことはできない。まして国の人々が宿舎を同じくし食事を共にしているだけの間柄で、どうして命令違反をかばい合うことができようか。
解説
関連する章句
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尉繚子・束伍令束伍の令に曰く、五人を伍と為し、一符を共にし、将吏の所に収む。伍を亡ひて伍を得る者は、之に当つ。伍を得て亡はざれば、賞有り。伍を亡ひて伍を得ざれば、身は死し家は残はる。長を亡ひて長を得れば、之に当つ。長を得て亡はざれば、賞有り。長を亡ひて長を得ざれば、身は死し家は残はる。復た戦ひて首長を得れば、之を除く。将を亡ひて将を得れば、之に当つ。将を得て亡はざれば、賞有り。将を亡ひて将を得ざれば、地を離れ遁逃するの法に坐す。戦誅の法に曰く、什長は十人を誅するを得、伯長は十長を誅するを得、千人の将は百人の長を誅するを得、万人の将は千人の将を誅するを得、左右将軍は万人の将を誅するを得、大将軍は誅するを得ざる無し。
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尉繚子・分塞令中軍・左・右・前・後軍、皆分地有り、之を方にするに行垣を以てし、而して其の交往を通ずること無し。将に分地有り、帥に分地有り、伯に分地有り、皆其の溝洫を営み、而して其の塞令を明らかにし、百人に非ざれば通ずるを得ること無からしむ。其の百人に非ずして入る者は、伯之を誅す。伯誅せざれば、之と罪を同じくす。軍中縦横の道、百有二十歩にして一府柱を立て、人と地とを量り、柱道相望み、行を禁じ道を清む。将吏の符節に非ざれば、通行するを得ず。采薪芻牧する者は、皆行伍を成す。行伍を成さざる者は、通行するを得ず。吏属に節無く、士に伍無き者は、横門之を誅す。分を地に踰ゆる者は、之を誅す。故に内に令を干し禁を犯すこと無ければ、則ち外に獲ざるの奸無し。
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尉繚子・兵令下諸そ大軍を去りて前禦の備へを為す者は、辺県列侯、各相去ること三五里。大軍の前禦の備へを為すを聞けば、戦へば則ち皆行くを禁ず、内を安んずる所以なり。内卒出でて戍れば、将吏をして旗鼓戈甲を授けしむ。発する日、将吏に後れ及び県の封界を出づる者は、後戍の法を以て坐す。兵辺を戍ること一歳、遂に亡げて代を候たざる者は、法亡軍に比す。父母妻子之を知れば、与に罪を同じくす。知らざれば、之を赦す。卒将吏に後れて大将の所に至ること一日なれば、父母妻子尽く罪を同じくす。卒逃げて家に帰ること一日、父母妻子捕執せず及び言はざれば、亦罪を同じくす。諸そ戦ひて其の将吏を亡ふ者、及び将吏卒を棄てて独り北ぐる者は、尽く之を斬る。前吏其の卒を棄てて北ぐるに、後吏能く之を斬りて其の卒を奪ふ者は、賞す。軍功無き者は、戍ること三歳。三軍大いに戦ひ、若し大将死して、従吏五百人以上敵に死する能はざれば、斬る。大将の左右近卒の陳中に在る者は、皆斬る。余の士卒軍功有る者は、一級を奪ふ。軍功無き者は、戍ること三歳。戦ひて伍人を亡ひ、及び伍人戦死して其の屍を得ざれば、同伍尽く其の功を奪ふ。其の屍を得れば、罪皆赦す。軍の利害は、国の名実に在り。今名は官に在りて、実は家に在り、官は其の実を得ず、家は其の名を得ず。卒を聚めて軍と為すも、空名有りて実無く、外は以て敵を禦ぐに足らず、内は以て国を守るに足らず、此れ軍の給せざる所以、将の威を奪はるる所以なり。臣以謂へらく、卒逃げ帰る者は、同舎の伍人及び吏罰して糧を入れて饒と為し、名づけて軍実と為す、是れ一軍の名有りて、二実の出有り、国内空虚にして、自ら民の歳を竭くす、曷ぞ以て奔北の禍を免れんや。今法を以て逃帰を止め、亡軍を禁ずるは、是れ兵の一勝なり。什伍相連なり、戦闘に及べば則ち卒吏相救ふは、是れ兵の二勝なり。
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尉繚子・重刑令将千人より以上、戦ひて北げ、守りて降り、地を離れ衆を逃るる有れば、命じて国賊と曰ふ。身は戮せられ家は残はれ、其の籍を去り、其の墳墓を発き、其の骨を市に暴し、男女は官に公にす。百人より以上、戦ひて北げ、守りて降り、地を離れ衆を逃るる有れば、命じて軍賊と曰ふ。身は死し家は残はれ、男女は官に公にす。民をして内に重刑を畏れしむれば、則ち外に敵を軽んず。故に先王は制度を前に明らかにし、威刑を後に重くす。刑重ければ則ち内に畏れ、内に畏るれば則ち外に堅し。
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尉繚子・制談金鼓の指す所、則ち百人尽く闘ふ。行を陥れ陳を乱せば、則ち千人尽く闘ふ。軍を覆し将を殺せば、則ち万人刃を斉しくす。天下能く其の戦ひに当たる莫し。古は、士に什伍有り、車に偏列有り、鼓鳴り旗麾(さしまね)けば、先づ登る者は未だ嘗て多力の国士に非ずんばあらざるなり、先づ死する者も亦未だ嘗て多力の国士に非ずんばあらざるなり。敵一人を損じて、我百人を損ず、此れ敵に資して我を傷つくること甚だしきも、世の将は禁ずる能はず。征役に軍を分かちて逃げ帰り、或いは戦ひに臨みて自ら北(に)ぐれば、則ち逃傷甚だしきも、世の将は禁ずる能はず。人を百歩の外に殺す者は弓矢なり、人を五十歩の内に殺す者は矛戟なり。将已に鼓すれども士卒相囂(かまびす)しく、矢を拗(くじ)き矛を折り戟を抱き、後れて発するを利とし、戦ひに此の数者有れば、内より自ら敗るるなり、世の将は禁ずる能はず。士は什伍を失ひ、車は偏列を失ひ、奇兵は将を捐てて走り、大衆も亦走るも、世の将は禁ずる能はず。夫れ将能く此の四者を禁ずれば、則ち高山も之を陵ぎ、深水も之を絶(わた)り、堅陳も之を犯す。此の四者を禁ずる能はざれば、猶ほ舟楫を亡くして江河を絶らんとするがごとく、得べからざるなり。民は死を楽しみて生を悪むに非ざるなり、号令明らかに、法制審らかなり、故に能く之をして前(すす)ましむ。賞を前に明らかにし、罰を後に決す、是を以て発すれば能く利に中り、動けば則ち功有り。百人に一卒、千人に一司馬、万人に一将を令し、少を以て衆を誅し、弱を以て強を誅す。試みに臣の言を聴かば、其の術は三軍の衆をして、一人を誅するも刑を失ふ無く、父も敢へて子を舎(す)てず、子も敢へて父を舎てざらしむるに足る、況んや国人をや。一夫剣を仗(と)りて市に撃てば、万人之を避けざる者無し。臣謂へらく、一人の独り勇なるに非ず、万人皆肖(に)ざるなりと。何となれば、必ず死するものと必ず生きんとするものとは、固より侔(ひと)しからざればなり。臣の術を聴かば、三軍の衆をして一死賊と為し、敢へて其の前に当たる莫く、敢へて其の後に随ふ莫くして、能く独り出で独り入らしむるに足る。
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尉繚子・經卒令経卒とは、経令を以て之を分かちて三分と為す。左軍は蒼旗、卒は蒼羽を戴く。右軍は白旗、卒は白羽を戴く。中軍は黄旗、卒は黄羽を戴く。卒に五章有り。前一行は蒼章、次二行は赤章、次三行は黄章、次四行は白章、次五行は黒章。次するに経卒を以てし、章を亡ふ者は誅有り。前一五行は、章を首に置く。次二五行は、章を項に置く。次三五行は、章を胸に置く。次四五行は、章を腹に置く。次五五行は、章を腰に置く。此くの如くすれば、卒は其の吏に非ざるは無く、吏は其の卒に非ざるは無し。非を見て詰めず、乱を見て禁ぜざれば、其の罪之の如し。鼓行して交闘すれば、則ち前行の進むを難を犯すと為し、後行の退くを衆を辱むと為す。五行を踰えて前む者は賞有り、五行を踰えて後るる者は誅有り、進退先後を知る所以にして、吏卒の功なり。故に曰く、「之を鼓して前むこと雷霆の如く、動くこと風雨の如く、敢へて其の前に当たる莫く、敢へて其の後を躡む莫し」と。経有るを言ふなり。
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