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玉勝間 / 十二の巻 拙者

同じ記に、みづから拙者と云へる事も見えたり。

書き下し

同じ記に、みずから拙者と云える事も見えたり。

現代語訳

同じ記(甘露寺元長卿記)に、自分のことを「拙者」と言っていることも見えている。

解説

自分を指す「拙者」という言葉が、戦国期の公家の日記にすでに見えることを記した一行の段である。拙者は、自分をへりくだって「つたない者」と言う漢語から来た一人称で、江戸時代には武士の言葉として定着し、宣長の時代にはごく普通に使われていた。それが十五世紀末から十六世紀初めの公家甘露寺元長の記録に使われているのである。武士の言葉と思われているものが、実は公家の間でも用いられていたことになる。宣長は、自分の時代の日常語がどこまでさかのぼれるかを、記録を読むたびに確かめていった。謙遜の一人称は日本語に数多く、時代とともに入れ替わってきた。どの言葉で自分を呼ぶかには、相手との関係や身分への意識がそのまま映る。

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