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玉勝間 / 一の巻 中臣寿詞

物部乃人等、酒造兒酒波粉走灰燒新採相候稻實公等、大嘗會乃齋場仁持齋波利參來弖、今年十一月中卯日仁、由志理伊都志理持恐美恐美、清麻波利奉仕、月內仁日時撰撰定弖獻留悠紀主基乃黑木白木乃大御酒遠、大倭根子天皇〓天都御膳乃長御膳乃遠御膳止、汁仁毛實仁毛赤丹乃穗仁毛所聞食弖、豐明明御坐弖、天都神乃壽詞遠稱辭定奉留皇神等母、千秋五百秋相嘗仁相宇豆乃比奉利、堅磐常磐仁齋奉利、伊賀志御世仁榮志女奉利、自康元治年始、與大地月日共照志明良志御坐事仁、本末不傾茂槍中執持弖奉仕中臣祭主正四位上行神祇大副大中臣朝臣清親、壽詞稱辭定奉久止申。

新字:物部乃人等、酒造児酒波粉走灰焼新採相候稲実公等、大嘗会乃斎場仁持斎波利参来弖、今年十一月中卯日仁、由志理伊都志理持恐美恐美、清麻波利奉仕、月内仁日時撰撰定弖献留悠紀主基乃黒木白木乃大御酒遠、大倭根子天皇〓天都御膳乃長御膳乃遠御膳止、汁仁毛実仁毛赤丹乃穂仁毛所聞食弖、豊明明御坐弖、天都神乃寿詞遠称辞定奉留皇神等母、千秋五百秋相嘗仁相宇豆乃比奉利、堅磐常磐仁斎奉利、伊賀志御世仁栄志女奉利、自康元治年始、与大地月日共照志明良志御坐事仁、本末不傾茂槍中執持弖奉仕中臣祭主正四位上行神祇大副大中臣朝臣清親、寿詞称辞定奉久止申。

書き下し

物部の人等、酒造児・酒波・粉走・灰焼・新採・相候・稲実公等、大嘗会の斎場に持ち斎わり参来て、今年十一月の中の卯の日に、ゆしりいつしり持ち恐み恐み、清まわり仕え奉り、月の内に日時を撰び撰び定めて献る悠紀・主基の黒木・白木の大御酒を、大倭根子天皇が天つ御膳の長御膳の遠御膳と、汁にも実にも赤丹の穂にも聞こしめして、豊の明りに明り御坐して、天つ神の寿詞を称辞定め奉る皇神等も、千秋五百秋の相嘗に相うづのい奉り、堅磐に常磐に斎い奉り、いかし御世に栄えしめ奉り、康治元年より始めて、大地・月・日と共に照らし明らし御坐す事に、本末傾けず茂し槍の中執り持ちて仕え奉る中臣祭主正四位上行神祇大副大中臣朝臣清親、寿詞を称辞定め奉らくと申す。

現代語訳

物部の人々、すなわち酒造児・酒波・粉走・灰焼・薪採・相作・稲実公ら(大嘗祭の酒や御饌を用意する役の者たち)が、大嘗会の斎場に斎み清めた品を持って参上し、今年十一月の中の卯の日に、斎みに斎みを重ねて恐れ畏みつつ、身を清めてお仕えし、月の内に日時を選びに選んで定めて献上する悠紀・主基の黒木・白木の大御酒を、大倭根子天皇が天つ御膳の長く遠く続く御膳として、汁としても実としても、赤く熟した穂としても召し上がって、豊の明り(祝宴)に顔を照り輝かせておいでになり、天つ神の寿詞をたたえ申し上げる皇神たちも、千年五百年にわたる相嘗にともに貴くお仕えし、堅い岩、常なる岩のように斎い申し上げ、厳かな御世に栄えさせ申し上げ、康治元年から始めて、大地・月・日とともに照り輝いておいでになることに、根元も末も傾けることなく、茂し槍の中ほどを執り持つようにまっすぐお仕えする中臣の祭主、正四位上行神祇大副大中臣朝臣清親が、寿詞をたたえて申し上げますと申す。

解説

寿詞の後半で、稲と酒を整えて天皇に献る場面である。酒造児・酒波などは大嘗祭の酒や御饌を作る役の者たちで、卯の日の祭に向けて斎み清めて奉仕する。悠紀・主基の二つの国から献る黒木・白木の御酒は、のちに黒酒・白酒と呼ばれるもので、天皇はこれを長く遠く続く御膳として召し上がる。汁にも実にも穂にもという畳みかけに、稲の恵みをまるごと受けるという古代の感覚が出ている。結びに唱え手の中臣清親の名と位が入るのは、この詞が毎回その時の祭主によって唱え直されたことを示す。宣長がこの寿詞を尊んだのは、稲と神と天皇を一続きに語る古い心が、漢意を経ずにそのまま残っているからである。

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