修身要領 / 第二十二条
国あれば必ず政府あり。政府は政令を行ひ、軍備を設け、一国の男女を保護して、其身体、生命、財産、名誉、自由を侵害せしめざるを任務と為す。是を以て国民は軍事に服し国費を負担するの義務あり。
書き下し
国あれば必ず政府あり。政府は政令を行い、軍備を設け、一国の男女を保護して、その身体、生命、財産、名誉、自由を侵害せしめざるを任務と為す。是を以て国民は軍事に服し国費を負担するの義務あり。
現代語訳
国があれば、必ず政府があります。政府は政治上の命令を行い、軍備を整え、国じゅうの男女を保護して、その身体、生命、財産、名誉、自由を侵されないようにすることを任務とします。このために、国民は軍事に服し、国の費用を負担する義務があります。
解説
この条は1900年当時の国家観に立っており、軍事への服務を国民の義務とする点は、現代の感覚とは隔たりがあります。そのうえで読むと、政府の任務を、国民の身体、生命、財産、名誉、自由を守ることと定めている点に核心があります。権力の目的を国民の権利の保護に置き、その対価として負担があると整理しているのです。組織に置き換えれば、負担を求める側には守るべきものを明示する責任があります。納得感のある負担とは何かを考える手がかりになります。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
政府国民の義務国費身体生命財産名誉自由
関連する章句
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福沢諭吉小品集・修身要領・第3段第二十二条 国あれば必ず政府あり。政府は政令を行ひ、軍備を設け、一国の男女を保護して、其身体、生命、財産、名誉、自由を侵害せしめざるを任務と為す。是を以て国民は軍事に服し国費を負担するの義務あり。 第二十三条 軍事に服し国費を負担すれば、国の立法に参与し国費の用途を監督するは、国民の権利にして又其義務なり。 第二十四条 日本国民は男女を問はず、国の独立自尊を維持するが為めには、生命財産を賭して敵国と戦ふの義務あるを忘る可らず。 第二十五条 国法を遵奉するは国民たるものゝ義務なり。単にこれを遵奉するに止まらず、進んで其執行を幇助し、社会の秩序安寧を維持するの義務あるものとす。 第二十六条 地球上立国の数少なからずして、各その宗教、言語、習俗を殊にすと雖も、其国人は等しく是れ同類の人間なれば、之と交るには苟も軽重厚薄の別ある可らず。独り自ら尊大にして他国人を蔑視するは、独立自尊の旨に反するものなり。 第二十七条 吾々今代の人民は、先代前人より継承したる社会の文明福利を増進して、之を子孫後世に伝ふるの義務を尽さざる可らず。 第二十八条 人の世に生るゝ、智愚強弱の差なきを得ず。智強の数を増し愚弱の数を減ずるは教育の力に在り。教育は即ち人に独立自尊の道を教へて之を躬行実践するの工風を啓くものなり。 第二十九条 吾党の男女は、自ら此要領を服膺するのみならず、広く之を社会一般に及ぼし、天下万衆と共に相率ゐて、最大幸福の域に進むを期するものなり。
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修身要領・第二十三条軍事に服し国費を負担すれば、国の立法に参与し国費の用途を監督するは、国民の権利にして、またその義務なり。
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『学問のすゝめ』六編・国法の貴きを論ず・政府は国民の名代にて政府は国民の名代にて、国民の思うところに従い事をなすものなり。その職分は罪ある者を取り押えて罪なき者を保護するよりほかならず。すなわちこれ国民の思うところにして、この趣意を達すれば一国内の便利となるべし。元来罪ある者とは悪人なり、罪なき者とは善人なり。いま悪人来たりて善人を害せんとすることあらば、善人みずからこれを防ぎ、わが父母妻子を殺さんとする者あらば捕えてこれを殺し、わが家財を盗まんとする者あらば捕えてこれを笞うち、差しつかえなき理なれども、一人の力にて多勢の悪人を相手にとり、これを防がんとするも、とても叶うべきことにあらず。
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『学問のすゝめ』二編・人は同等なること・双方その職分を尽くしてこれすなわち政府と人民との約束なり。ゆえに百姓・町人は年貢・運上を出だして固く国法を守れば、その職分を尽くしたりと言うべし。政府は年貢・運上を取りて正しくその使い払いを立て、人民を保護すれば、その職分を尽くしたりと言うべし。双方すでにその職分を尽くして約束を違うることなきうえは、さらになんらの申し分もあるべからず、おのおのその権理通義を逞しゅうして、少しも妨げをなすの理なし。