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春秋左氏伝 / 昭公二十年 祝史は信を薦む

外内不廢。上下無怨。動無違事。其祝史薦信。無愧心矣。是以鬼神用饗。國受其福。祝史與焉。其所以蕃祉老壽者。為信君使也。其言忠信於鬼神。其適遇淫君。外内頗邪。上下怨疾。動作辟違。從欲厭私。高臺深池。撞鍾舞女。斬刈民力。輸掠其聚。以成其違。不恤後人。暴虐淫從。肆行非度。無所還忌。不思謗讟。不憚鬼神。神怒民痛。無悛於心。其祝史薦信。是言罪也。其蓋失數美。是矯誣也。進退無辭。則虛以求媚。是以鬼神不饗其國以禍之。祝史與焉。所以夭昏孤疾者。為暴君使也。其言僭嫚於鬼神。

新字:外内不廃。上下無怨。動無違事。其祝史薦信。無愧心矣。是以鬼神用饗。国受其福。祝史与焉。其所以蕃祉老寿者。為信君使也。其言忠信於鬼神。其適遇淫君。外内頗邪。上下怨疾。動作辟違。従欲厭私。高台深池。撞鍾舞女。斬刈民力。輸掠其聚。以成其違。不恤後人。暴虐淫従。肆行非度。無所還忌。不思謗讟。不憚鬼神。神怒民痛。無悛於心。其祝史薦信。是言罪也。其蓋失数美。是矯誣也。進退無辞。則虚以求媚。是以鬼神不饗其国以禍之。祝史与焉。所以夭昏孤疾者。為暴君使也。其言僭嫚於鬼神。

書き下し

外内廢せず、上下怨無く、動きて事に違ふこと無し。其の祝史信を薦めて、愧づる心無し。是を以て鬼神用(もつ)て饗け、國其の福を受け、祝史も與る。其の蕃祉老壽なる所以の者は、信君の使ひ為ればなり。其の言鬼神に忠信なり。其れ適々淫君に遇へば、外内頗邪にして、上下怨疾し、動作辟違して、欲に從ひ私を厭(あ)かす。高臺深池、鍾を撞き女を舞はし、民力を斬刈し、其の聚を輸掠して、以て其の違を成し、後人を恤へず。暴虐淫從、肆に度に非ざるを行ひ、還忌する所無く、謗讟を思はず、鬼神を憚らず、神怒り民痛めども、心に悛(あらた)むる無し。其の祝史信を薦むれば、是れ罪を言ふなり。其れ失を蓋ひ美を數ふれば、是れ矯誣なり。進退辭無ければ、則ち虛にして以て媚を求む。是を以て鬼神其の國に饗けずして以て之に禍し、祝史も與る。夭昏孤疾する所以の者は、暴君の使ひ為ればなり。其の言鬼神に僭嫚なり」と。

現代語訳

(晏子は続けた。)「国の内外の政が廃れず、上下に怨みがなく、行うことに道理に背く事がありません。その祝史が神に真実を申し上げても、恥じる心はありません。だから鬼神は供物を受け、国はその福を受け、祝史もその恵みに与ります。祝史が多くの福を受けて長生きするのは、誠実な君主の使いだからです。その言葉は鬼神に対して忠実で偽りがありません。ところが、たまたま放恣な君主に仕えることになれば、国の内外の政は偏りゆがみ、上下は怨み憎み合い、振る舞いは道にはずれ背き、欲望のままに私利をむさぼることになります。高い楼台や深い池を造り、鐘を打ち鳴らし女を舞わせ、民の力を刈り取るように使い尽くし、民の蓄えを奪い取って、自分の過ちを押し通し、後の世の人のことを思いやりません。暴虐でほしいままにふるまい、法度にはずれたことを勝手に行って、はばかるところがなく、人々のそしりを気にかけず、鬼神を恐れず、神が怒り民が苦しんでも、心に改めることがありません。そんなとき祝史が神に真実を申し上げれば、それは君主の罪を告げることになります。過ちを覆い隠して美点ばかり数え上げれば、それは神を欺くことになります。進むも退くも申し上げる言葉がなくなれば、中身のないことを言って神に媚びるしかありません。だから鬼神はその国の供物を受けず、禍いを下し、祝史もその禍いを被ります。祝史が若死にしたり、孤独になったり病気になったりするのは、暴君の使いだからです。その言葉は鬼神に対して偽りと侮りに満ちたものになるのです」。

解説

晏子の本論である。祝史の仕事は、君主に代わって神に「信」、つまり真実を申し述べることにある。君主に徳があれば、祝史はありのままを述べて恥じることがなく、神は供物を受け、国も祝史も福を得る。君主が放恣であれば、祝史は三つの道しか持たない。真実を述べれば君主の罪を告げることになり、美点ばかり並べれば神を欺くことになり、どちらもできなければ空疎な言葉で媚びるしかない。いずれにしても神は受けず、禍いは国にも祝史にも及ぶ。祝史が報われるか罰せられるかは、祝史自身の腕ではなく、誰の使いであるかで決まるというのである。景公が求めていた「祝史の罪」は、裏返せば景公自身の行いの報告書である。晏子は、民力を刈り取り、宮殿や池を造り、そしりを顧みない君主の姿を列挙することで、それとなく景公に鏡を突きつけている。報告の中身が悪いとき、書き手を替えても中身は変わらない。変えるべきものが何かを、晏子は示している。

この章句が説くこと

誠実報告諫言責任の所在徳

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