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春秋左氏伝 / 襄公十八年 州綽、殖綽を縛す

十一月。丁卯。朔。入平陰。遂從齊師。夙沙衛連大車以塞隧而殿。殖綽。郭最。曰。子殿國師。齊之辱也。子姑先乎。乃代之殿。衛殺馬於隘以塞道。晉州綽及之。射殖綽中肩。兩矢夾脰。曰。止。將為三軍獲。不止。將取其衷。顧曰。為私誓。州綽曰。有如日。乃弛弓而自後縛之。其右具丙。亦舍兵而縛郭最。皆衿甲而縛。坐于中軍之鼓下。晉人欲逐歸者。魯衛請攻險。己卯。荀偃。士匄以中軍克京茲。乙酉。魏絳。欒盈。以下軍克邿。趙武。韓起。以上軍圍廬。弗克。

新字:十一月。丁卯。朔。入平陰。遂従斉師。夙沙衛連大車以塞隧而殿。殖綽。郭最。曰。子殿国師。斉之辱也。子姑先乎。乃代之殿。衛殺馬於隘以塞道。晋州綽及之。射殖綽中肩。両矢夾脰。曰。止。将為三軍獲。不止。将取其衷。顧曰。為私誓。州綽曰。有如日。乃弛弓而自後縛之。其右具丙。亦舎兵而縛郭最。皆衿甲而縛。坐于中軍之鼓下。晋人欲逐帰者。魯衛請攻険。己卯。荀偃。士匄以中軍克京茲。乙酉。魏絳。欒盈。以下軍克邿。趙武。韓起。以上軍囲廬。弗克。

書き下し

十一月丁卯朔、平陰に入り、遂に齊の師を從ふ。夙沙衛大車を連ねて以って隧を塞ぎて殿す。殖綽・郭最曰く、「子國師に殿たるは、齊の辱なり。子姑く先んぜよ」と。乃ち之に代はりて殿す。衛馬を隘に殺して以って道を塞ぐ。晉の州綽之に及び、殖綽を射て肩に中て、兩矢脰を夾む。曰く、「止まらば、將に三軍の獲と為らん。止まらずんば、將に其の衷を取らん」と。顧みて曰く、「私誓を為せ」と。州綽曰く、「日の如き有り」と。乃ち弓を弛めて後より之を縛る。其の右具丙も、亦た兵を舍てて郭最を縛る。皆甲を衿して縛し、中軍の鼓下に坐す。晉人歸る者を逐はんと欲す。魯・衛險を攻めんことを請ふ。己卯、荀偃・士匄中軍を以って京茲に克つ。乙酉、魏絳・欒盈下軍を以って邿に克つ。趙武・韓起上軍を以って廬を圍む。克たず。

現代語訳

十一月丁卯の朔日、晋軍は平陰に入り、そのまま斉軍を追撃した。夙沙衛(しゅくさえい、斉の宦官)は大きな車を連ねて狭い道をふさぎ、殿(しんがり)を務めた。斉の勇士殖綽(しょくしゃく)と郭最(かくさい)が言った。「あなた(宦官)が国の軍の殿を務めるのは、斉の恥だ。あなたはひとまず先に行ってくれ」。そこで二人が代わって殿を務めた。夙沙衛は(恨んで)狭い道で馬を殺して道をふさいだ(二人の退路を断ったのである)。晋の州綽(しゅうしゃく)が追いつき、殖綽を射て肩に当て、二本の矢が首を挟むように刺さった。州綽は言った。「止まれば、三軍の捕虜となるだけで済む。止まらなければ、次は真ん中を射抜くぞ」。殖綽は振り返って言った。「(殺さないと)私的に誓ってくれ」。州綽は言った。「太陽にかけて誓う」。そこで弓を緩めて、後ろから殖綽を縛った。州綽の車右の具丙(ぐへい)もまた武器を置いて郭最を縛った。二人とも鎧を着けたまま縛られ、晋の中軍の太鼓の下に座らされた。晋の人々は逃げ帰る斉兵を追撃しようとしたが、魯と衛は要害を攻めることを願い出た。己卯の日、荀偃と士匄は中軍を率いて京茲を攻め落とした。乙酉の日、魏絳と欒盈は下軍を率いて邿(し)を攻め落とした。趙武と韓起は上軍を率いて廬を包囲したが、落とせなかった。

解説

平陰から逃げる斉軍と、それを追う晋軍の追撃戦である。殿を務めていた宦官の夙沙衛に、斉の勇士殖綽と郭最が「宦官が殿とは斉の恥だ」と言って役を奪う。面目をつぶされた夙沙衛は、狭い道で馬を殺して道をふさぎ、二人の退路を断ってしまう。敵を前にしてなお、味方同士の侮蔑と報復が働いている。追いついた晋の州綽は、殖綽の首の両側に矢を射込み、止まれば捕虜で済む、止まらなければ次は真ん中だと告げる。殖綽は私的な誓いを求め、州綽は「日の如き有り」と太陽にかけて誓って縛った。命のやり取りの場でも、武人同士の約束が機能している。この州綽と殖綽は、のちに斉の荘公のもとで同僚となる因縁でもある。組織の中で役割を侮られた者の恨みが、最悪の場面で噴き出すことがある。

この章句が説くこと

侮り報復撤退戦武人の信義内部の不和

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