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春秋左氏伝 / 宣公十五年 庸を庸とす

晉侯賞桓子狄臣千室,亦賞士伯以瓜衍之縣,曰:「吾獲狄土,子之功也。微子,吾喪伯氏矣。」羊舌職說是賞也,曰:「周書所謂庸庸祗祗者,謂此物也夫。士伯庸中行伯,君信之,亦庸士伯,此之謂明德矣。文王所以造周,不是過也。故詩曰:『陳錫哉周,能施也。』率是道也,其何不濟!」晉侯使趙同,獻狄俘于周,不敬,劉康公曰:「不及十年,原叔必有大咎,天奪之魄矣。」初,稅畝,非禮也,穀出不過藉,以豐財也。冬,蝝生,饑,幸之也。

新字:晋侯賞桓子狄臣千室,亦賞士伯以瓜衍之県,曰:「吾獲狄土,子之功也。微子,吾喪伯氏矣。」羊舌職説是賞也,曰:「周書所謂庸庸祗祗者,謂此物也夫。士伯庸中行伯,君信之,亦庸士伯,此之謂明徳矣。文王所以造周,不是過也。故詩曰:『陳錫哉周,能施也。』率是道也,其何不済!」晋侯使趙同,献狄俘于周,不敬,劉康公曰:「不及十年,原叔必有大咎,天奪之魄矣。」初,税畝,非礼也,穀出不過藉,以豊財也。冬,蝝生,饑,幸之也。

書き下し

晉侯桓子に狄臣千室を賞し、亦た士伯に瓜衍の縣を以て賞して、曰く、「吾狄の土を獲たるは、子の功なり。子微かりせば、吾伯氏を喪へり」と。羊舌職是の賞を說びて、曰く、「周書の所謂庸を庸とし祗を祗とすとは、此の物を謂ふかな。士伯中行伯を庸とし、君之を信じ、亦た士伯を庸とす、此を之れ明德と謂ふ。文王の周を造りし所以も、是に過ぎず。故に詩に曰く、『錫を陳べて周を哉む』と、能く施すなり。是の道に率はば、其れ何ぞ濟らざらん」と。晉侯趙同をして、狄の俘を周に獻ぜしむ、敬まず。劉康公曰く、「十年に及ばずして、原叔必ず大咎有らん、天之が魄を奪へり」と。初めて畝に稅す、禮に非ざるなり。穀の出づるは藉に過ぎず、以て財を豐かにするなり。冬、蝝生ず、饑う。之を幸とす。

現代語訳

晋侯(景公)は桓子(荀林父)に狄の臣民千戸を賞として与え、また士伯(士貞子、士渥濁)にも瓜衍の県を与えて言った。「私が狄の土地を得られたのは、あなたの功績である。あなたがいなかったら、私は伯氏(荀林父)を失っていた」。羊舌職(晋の大夫)はこの賞を喜んで言った。「『周書』に『用いるべき者を用い、敬うべき者を敬う』とあるのは、このようなことを言うのであろう。士伯は中行伯(荀林父)を用いるべき人物と見抜き、君はそれを信じ、また士伯をも用いるべき者として賞した。これを明徳という。周の文王が周を興したのも、これ以上のものではない。だから詩に『賜り物を広く施して周を始めた』とあるのは、よく施したことを言うのである。この道に従っていけば、どんなことでも成し遂げられよう」。晋侯は趙同を遣わして狄の捕虜を周の王室に献上させたが、趙同の態度は不敬であった。劉康公(周の卿士)は言った。「十年もたたないうちに、原叔(趙同)には必ず大きな災いがあろう。天が彼の魂を奪ってしまった」。この年、魯で初めて田の面積に応じて税を取った。これは礼に外れている。本来、穀物の徴収は公田の収穫(藉)を超えないもので、そうすることで民の財を豊かにしていたのである。冬、イナゴの幼虫が発生し、飢饉となった。『春秋』がこれを記したのは、(被害が軽く済んだのを)幸いとしたからである。

解説

狄を平定した晋の景公は、総大将の荀林父だけでなく、士貞子にも県を与えた。邲の敗戦のあと、死を願い出た荀林父を救ったのが士貞子の諫言だったからである。景公は「子微かりせば、吾伯氏を喪へり」と、その功をはっきり言葉にした。羊舌職はこれを『周書』の「庸庸祗祗」、用いるべき者を用い、敬うべき者を敬うことの実例だと称えた。士貞子は荀林父の値打ちを見抜き、君はその見立てを信じ、そして見立てた士貞子も賞した。人を推した者の功まで評価するから、次にまた人が推される。これを明徳と呼び、文王の周の建国もこれ以上ではないとまで言う。一方、捕虜を周に献上した趙同は不敬で、劉康公は十年以内の災いを予言した。後半の「初税畝」は、魯が土地の面積に応じて税を取り始めた記事で、井田制の崩れを示す出来事として古来重視されてきた。成果を上げた人だけでなく、その人を見出し守った人をどう評価するか、という問いが含まれている。

この章句が説くこと

論功行賞人材登用明徳推薦税制

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