初学訓 / 巻之四
一家をたもつ道をうしなひて、儉約を行はず、おごりて財を濫につひやし、財足らざる故、人に借りて、其利息多く出で、わが家乏しくなりて、みづから養ひ、家人を養ふこと難く、器物をとゝのへ備へ、人に施すことならず。人の財を借りて返さず、人の物を買ひて償はず、みづから苦み、人を惱す、大なる惡事となる。かねて早くいましめ愼むべし。
新字:一家をたもつ道をうしなひて、倹約を行はず、おごりて財を濫につひやし、財足らざる故、人に借りて、其利息多く出で、わが家乏しくなりて、みづから養ひ、家人を養ふこと難く、器物をとゝのへ備へ、人に施すことならず。人の財を借りて返さず、人の物を買ひて償はず、みづから苦み、人を悩す、大なる悪事となる。かねて早くいましめ慎むべし。
書き下し
一家をたもつ道をうしなひて、倹約を行はず、おごりて財を濫につひやし、財足らざる故、人に借りて、其利息多く出で、わが家乏しくなりて、みづから養ひ、家人を養ふこと難く、器物をととのへ備へ、人に施すことならず。人の財を借りて返さず、人の物を買ひて償はず、みづから苦み、人を悩す、大なる悪事となる。かねて早くいましめ慎むべし。
現代語訳
家を保つ道を失って、倹約を行わず、奢って財をむやみに費やし、財が足りないので人から借りて、その利息を多く払い、わが家が乏しくなって、自分を養い家の者を養うことも難しく、器物を整え備え、人に施すこともできない。人の財を借りて返さず、人の物を買って代金を払わず、自分も苦しみ人も悩ます、大きな悪事となります。かねてから早く戒め慎むべきです。
解説
奢りから借金に陥る悪循環を具体的に描いた条です。浪費して足りなくなり、借金して利息に追われ、ますます苦しくなり、ついには返済もできずに人を悩ます。三百年前も今も変わらない家計破綻の構図です。益軒はこれを自分が苦しむだけでなく人に迷惑をかける悪事だと断じます。カードローンや過剰な分割払いなど、借金が手軽になった現代こそ、身の丈を超えた暮らしを早めに戒めることの大切さを思い起こさせてくれます。
この章句が説くこと
倹約借金奢り家計戒め
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