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初学訓 / 巻之四

一工は、器物をつくる諸職人なり。各其職をつとめ、器物をねんごろによく作り、麁惡ならざれば、求め買ふ人多く、利を得ること多し。是良工なり。一商は、利を輕く取りて、多く貪らず、いつはりなく、人を欺かざれば、人是をうたがはず、賴しげありて、其ことばを信じ、其商物を多く買ふ。故に、あき物ひろく賣れて、利を得ること多く、富を得ること易し。是良賈なり。

新字:一工は、器物をつくる諸職人なり。各其職をつとめ、器物をねんごろによく作り、麁悪ならざれば、求め買ふ人多く、利を得ること多し。是良工なり。一商は、利を軽く取りて、多く貪らず、いつはりなく、人を欺かざれば、人是をうたがはず、頼しげありて、其ことばを信じ、其商物を多く買ふ。故に、あき物ひろく売れて、利を得ること多く、富を得ること易し。是良賈なり。

書き下し

一工は、器物をつくる諸職人なり。各其職をつとめ、器物をねんごろによく作り、麁悪ならざれば、求め買ふ人多く、利を得ること多し。是良工なり。一商は、利を軽く取りて、多く貪らず、いつはりなく、人を欺かざれば、人是をうたがはず、頼しげありて、其ことばを信じ、其商物を多く買ふ。故に、あき物ひろく売れて、利を得ること多く、富を得ること易し。是良賈なり。

現代語訳

工は器物を作るもろもろの職人です。それぞれその職を務め、器物を丁寧によく作り、粗悪でなければ、求めて買う人が多く、利を得ることが多い。これが良い職人です。商は、利を軽く取って多く貪らず、偽りなく人を欺かなければ、人はこれを疑わず、頼もしく思って、その言葉を信じ、その商品を多く買います。だから売り物が広く売れて、利を得ることが多く、富を得ることもたやすい。これが良い商人です。

解説

職人と商人の理想像です。職人は丁寧によい物を作れば自然に売れ、商人は利を薄くして正直に商えば信用されて自然に富む、というのです。のちに石田梅岩が説く「先も立ち、我も立つ」商いの考えにも通じる、誠実な商売の原則です。今でいえば、品質にこだわる物づくりと、顧客をだまさない誠実な商売が、長期的に最も利益を生むということです。目先の利を貪れば一時は儲かっても、信用を失えば長続きしないのです。

この章句が説くこと

商い職人信用誠実薄利

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