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初学訓 / 巻之二

一いにしへの亂世の時を聞くに、力ある者は、つねに干戈を事として、しばしば戰にのぞみ、力なき者は、粮をつゝみて、時々山林に逃げかくる。一日も、安堵の思ひなし。これを思ひて、今の太平の御代の、安穩にして無事なるを樂むべし。農工商は、君に仕へずといへども、又、其國郡を治め給ふ君恩を忘るべからず。大君の御めぐみによりて、かゝる太平の樂を享くることを喜ぶべし。

新字:一いにしへの乱世の時を聞くに、力ある者は、つねに干戈を事として、しばしば戦にのぞみ、力なき者は、粮をつゝみて、時々山林に逃げかくる。一日も、安堵の思ひなし。これを思ひて、今の太平の御代の、安穏にして無事なるを楽むべし。農工商は、君に仕へずといへども、又、其国郡を治め給ふ君恩を忘るべからず。大君の御めぐみによりて、かゝる太平の楽を享くることを喜ぶべし。

書き下し

一いにしへの乱世の時を聞くに、力ある者は、つねに干戈を事として、しばしば戦にのぞみ、力なき者は、粮をつつみて、時々山林に逃げかくる。一日も、安堵の思ひなし。これを思ひて、今の太平の御代の、安穏にして無事なるを楽むべし。農工商は、君に仕へずといへども、又、其国郡を治め給ふ君恩を忘るべからず。大君の御めぐみによりて、かかる太平の楽を享くることを喜ぶべし。

現代語訳

昔の乱世のことを聞くと、力のある者は常に戦を事として、たびたび戦に臨み、力のない者は兵糧を包んで、ときどき山林に逃げ隠れました。一日も安心して過ごせる思いがありませんでした。これを思って、今の太平の御代が安穏で無事であることを楽しむべきです。農工商の人々は主君に仕えてはいないけれども、その国や郡を治めておられる主君の恩を忘れてはいけません。大君のお恵みによって、このような太平の楽しみを受けていることを喜ぶべきです。

解説

戦国の乱世の暮らしを思い起こさせ、今の平和を楽しめと説く条です。力ある者は戦い続け、力なき者は食料を抱えて山に逃げる。そんな日々と比べれば、何事もない毎日がどれほど尊いかが分かります。益軒は、武士でない農工商の人々にも、治める者の恩を忘れるなと言います。私たちも、平和で安全な日常を当たり前と思いがちです。災害や戦争の報道に触れるとき、何事もない一日のありがたさを思い、それを楽しむ心を持ちたいものです。

この章句が説くこと

太平感謝乱世恩楽しみ

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