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初学訓 / 巻之一

一天につかへておこたらずとは、人となる者、只朝夕天道の眼前にありて遠からざることを思ひ、つねに天道を畏れ敬ひてあなどらず、かりにも天道をそむき無道のことをなすべからず。天道にしたがひてそむかず、わが身をへりくだりて、人をあなどりほこらず、欲をこらへてほしいまゝにせず、天地の生みていつくしみ給ふ人倫をあつくあはれみて、あなどらずそこなはず。天地の、人のためにつくり出し給ふ五穀と萬のたからを、わが一人の欲のためにみだりにつひやさず。次に、鳥獸蟲魚の生ける物をみだりにころさず、草木をも時ならずしてみだりに伐らず。是皆天地のうみ出しやしなひて、いつくしみ給ふ物なれば、これをあはれみ養ふは、天地の御心に從ひて背かざるわざなり。

新字:一天につかへておこたらずとは、人となる者、只朝夕天道の眼前にありて遠からざることを思ひ、つねに天道を畏れ敬ひてあなどらず、かりにも天道をそむき無道のことをなすべからず。天道にしたがひてそむかず、わが身をへりくだりて、人をあなどりほこらず、欲をこらへてほしいまゝにせず、天地の生みていつくしみ給ふ人倫をあつくあはれみて、あなどらずそこなはず。天地の、人のためにつくり出し給ふ五穀と万のたからを、わが一人の欲のためにみだりにつひやさず。次に、鳥獣虫魚の生ける物をみだりにころさず、草木をも時ならずしてみだりに伐らず。是皆天地のうみ出しやしなひて、いつくしみ給ふ物なれば、これをあはれみ養ふは、天地の御心に従ひて背かざるわざなり。

書き下し

一天につかへておこたらずとは、人となる者、只朝夕天道の眼前にありて遠からざることを思ひ、つねに天道を畏れ敬ひてあなどらず、かりにも天道をそむき無道のことをなすべからず。天道にしたがひてそむかず、わが身をへりくだりて、人をあなどりほこらず、欲をこらへてほしいままにせず、天地の生みていつくしみ給ふ人倫をあつくあはれみて、あなどらずそこなはず。天地の、人のためにつくり出し給ふ五穀と万のたからを、わが一人の欲のためにみだりにつひやさず。次に、鳥獣虫魚の生ける物をみだりにころさず、草木をも時ならずしてみだりに伐らず。是皆天地のうみ出しやしなひて、いつくしみ給ふ物なれば、これをあはれみ養ふは、天地の御心に従ひて背かざるわざなり。

現代語訳

天に仕えて怠らないとは、人として生まれた者が、ただ朝夕、天道が目の前にあって遠くないことを思い、常に天道を畏れ敬って侮らず、かりにも天道に背いて道に外れたことをしてはいけないということです。天道に従って背かず、わが身をへりくだって、人を侮らず誇らず、欲をこらえて思うままにせず、天地が生んで慈しまれる人々を厚く憐れんで、侮らず損なわない。天地が人のために作り出された五穀やさまざまな宝を、自分一人の欲のためにむやみに費やさない。次に、鳥・獣・虫・魚などの生き物をむやみに殺さず、草木も時期でないのにむやみに伐らない。これらはみな天地が生み出し養って慈しまれる物なので、これを憐れみ養うことは、天地の御心に従って背かない行いです。

解説

天に仕えるという大きな話を、益軒は日々の具体的な行いに落とし込みます。欲をこらえる、人を侮らない、五穀や財をむだにしない、生き物をむやみに殺さない、時期でない草木を伐らない。最後の点は『孟子』の「斧斤時を以て山林に入る」に通じる、資源を守る考えです。本草学者として動植物を観察し続けた益軒らしい視点でもあります。食べ物を残さない、物を大切に使う、自然を守るといった今の暮らしの心がけが、天に仕える道としてつながっているのです。

この章句が説くこと

天道欲倹約生き物自然

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