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証道歌 / 『証道歌』因果を撥無する危うさ

心鏡明。鑒無礙。廓然瑩徹周沙界。萬象森羅影現中。一顆圓光非內外。 豁達空。撥因果。莽莽蕩蕩招殃禍。棄有著空病亦然。還如避溺而投火。 捨妄心。取真理。取捨之心成巧偽。學人不了用修行。真成認賊將為子。 損法財。滅功德。莫不由斯心意識。是以禪門了卻心。頓入無生知見力。

新字:心鏡明。鑒無礙。廓然瑩徹周沙界。万象森羅影現中。一顆円光非内外。 豁達空。撥因果。莽莽蕩蕩招殃禍。棄有著空病亦然。還如避溺而投火。 捨妄心。取真理。取捨之心成巧偽。学人不了用修行。真成認賊将為子。 損法財。滅功徳。莫不由斯心意識。是以禅門了却心。頓入無生知見力。

書き下し

心の鏡は明らかにして、鑒るに礙げ無し。廓然として瑩徹し沙界に周し。万象森羅は影の現ずる中、一顆の円光は内外に非ず。 豁達空にして因果を撥すれば、莽莽蕩蕩として殃禍を招く。有を棄てて空に著するは病も亦た然り、還って溺るるを避けて火に投ずるが如し。 妄心を捨てて、真理を取る。取捨の心は巧偽を成す。学人は了せず修行を用いて、真に賊を認めて将て子と為すに成る。 法財を損じ、功徳を滅す。斯の心意識に由らざる莫し。是を以て禅門は心を了却し、頓に無生の知見力に入る。

現代語訳

心の鏡は明らかで、映すのに妨げがありません。からりと開けて澄み渡り、ガンジス河の砂の数ほどの世界に行き渡ります。あらゆる万象は、その影が現れたものであり、一粒の丸い光は内でも外でもありません。 からりと空であると言い切って因果を否定すれば、とりとめなく荒れ果てて、災いを招きます。有を捨てて空にとらわれるのも病であり、水に溺れるのを避けて火に飛び込むようなものです。 妄念を捨てて真理を取るという、取捨の心は、かえって偽りを生みます。学ぶ人が悟らないまま修行に励めば、賊を我が子と思い込むことになります。 法の財産を損ない、功徳をなくすのは、すべてこの心意識のはたらきによります。だから禅門は心を終わらせ、一気に生じることのない世界の見る力に入るのです。

解説

空の思想を取り違えて、善悪の因果はないと言い切ってしまう誤りを、「撥無因果」と呼んで戒める一節です。有を捨てて空にとらわれるのは、水を避けて火に飛び込むのと同じだという比喩が印象的です。取捨の心が偽りを生むという指摘も、悟りを目標として力んだ修行への戒めになっています。現代の仕事に置き換えると、何でも相対的だと言って責任や結果を棚上げにしたり、成果主義か精神論かの二者択一に偏ったりする態度への戒めとして読めます。
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この章句が説くこと

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