新書 / 大政上
行之善也,粹以爲福己矣;行之惡也,粹以爲菑己矣。故受天之福者,天不攻焉;被天之菑,則亦毋怨天矣,行自爲取之也。知善而弗行,謂之不明;知惡而弗改,必受天殃。天有常福,必與有德;天有常菑,必與奪民時。故夫民者,至賤而不可簡也,至愚而不可欺也。故自古至於今,與民爲仇者,有遲有速,而民必勝之。知善而弗行謂之狂,知惡而不改謂之惑。故夫狂與惑者,聖王之戒也,而君子之愧也。嗚呼,戒之!戒之!豈其以狂與惑者自爲分?明君而君子乎,聞善而行之如爭,聞惡而改之如讎,然後禍菑可離,然後保福也。戒之!戒之!
新字:行之善也,粋以為福己矣;行之悪也,粋以為菑己矣。故受天之福者,天不攻焉;被天之菑,則亦毋怨天矣,行自為取之也。知善而弗行,謂之不明;知悪而弗改,必受天殃。天有常福,必与有徳;天有常菑,必与奪民時。故夫民者,至賤而不可簡也,至愚而不可欺也。故自古至於今,与民為仇者,有遅有速,而民必勝之。知善而弗行謂之狂,知悪而不改謂之惑。故夫狂与惑者,聖王之戒也,而君子之愧也。嗚呼,戒之!戒之!豈其以狂与惑者自為分?明君而君子乎,聞善而行之如争,聞悪而改之如讎,然後禍菑可離,然後保福也。戒之!戒之!
書き下し
行の善なるや、粋として以て己に福と為るのみ。行の悪なるや、粋として以て己に菑と為るのみ。故に天の福を受くる者は、天攻めず。天の菑を被れば、則ち亦天を怨むこと毋かれ、行い自ら之を取ればなり。善を知りて行わざる、之を明ならずと謂う。悪を知りて改めざれば、必ず天の殃を受く。天に常福有り、必ず徳有るに与う。天に常菑有り、必ず民の時を奪うに与う。故に夫れ民は、至賤にして簡る可からず、至愚にして欺く可からず。故に古より今に至るまで、民と仇を為す者は、遅き有り速き有りて、民必ず之に勝つ。善を知りて行わざる、之を狂と謂い、悪を知りて改めざる、之を惑と謂う。故に夫れ狂と惑とは、聖王の戒めにして、君子の愧づる所なり。嗚呼、之を戒めよ、之を戒めよ。豈に其れ狂と惑とを以て自ら分を為さんや。明君にして君子ならば、善を聞きて之を行うこと争うが如くし、悪を聞きて之を改むること讎の如くし、然る後に禍菑離る可く、然る後に福を保つなり。之を戒めよ、之を戒めよ。
現代語訳
善い行いは、ただ自分への福となるだけです。悪い行いは、ただ自分への災いとなるだけです。だから天の福を受ける者を、天は攻めません。天の災いを受けたなら、天を怨んではなりません。自分の行いが招いたものだからです。善を知りながら行わないことを、明らかでないといいます。悪を知りながら改めなければ、必ず天の災いを受けます。天には常なる福があり、必ず徳のある者に与えられます。天には常なる災いがあり、必ず民の時を奪う者に与えられます。そもそも民は、きわめて卑しい身分でも軽んじてはならず、きわめて愚かでも欺いてはなりません。だから昔から今まで、民と敵対した者は、遅い早いはあっても必ず民に負けています。善を知りながら行わないことを狂といい、悪を知りながら改めないことを惑といいます。狂と惑は聖王が戒めるところであり、君子が恥じるところです。ああ、これを戒めなさい。どうして狂と惑を自分の分としてよいでしょうか。明君であり君子であるなら、善を聞けば争うように実行し、悪を聞けば仇のように改め、そうしてはじめて禍と災いから離れ、福を保つことができます。これを戒めなさい。
解説
この章句が説くこと
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『君子訓』巻之下一秦始皇の子二世皇帝の曰、凡天下を有つを貴しとするは、唯意を恣にし、慾を極めて楽む故なり。下を治むるには、唯法度を厳しくして下を制すれば、民上を犯さずして乱起らずと言へり。是秦の天下を失へるゆゑんなり。秦より以下、天下を治むること能はずして、天下を失ひ、身を亡ぼせる人多きは、皆此ゆゑなり。天下を有ちては、唯善を行ひて、広く民を憐み恵みて、万民各其所を得るを以て、楽とすべし。
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『新書』大政上夫れ民は、万世の本なり、欺く可からず。凡そ上位に居る者、士を簡んじ民を苦しむる者は是れを愚と謂い、士を敬い民を愛する者は是れを智と謂う。夫れ愚智は、士民の命ずるなり。故に夫れ民は、大族なり、民は畏れざる可からず。故に夫れ民は、力多くして適す可からざるなり。嗚呼、之を戒めよ、之を戒めよ。民と敵為る者は、民必ず之に勝つ。君能く善を為せば、則ち吏必ず能く善を為さん。吏能く善を為せば、則ち民必ず能く善を為さん。故に民の善ならざるは、吏の罪なり。吏の善ならざるは、君の過ちなり。嗚呼、之を戒めよ、之を戒めよ。故に夫れ士民は、之を率いるに道を以てして、然る後に士民は道あり。之を率いるに義を以てして、然る後に士民は義あり。之を率いるに忠を以てして、然る後に士民は忠あり。之を率いるに信を以てして、然る後に士民は信あり。故に人君為る者は、其の令を出すや、其れ声の如し。士民の之を学ぶや、其れ響の如し。曲折して君に従うこと、其れ景の如し。嗚呼、之を戒めよ、之を戒めよ。君此に善に郷えば失然として協い、民皆彼に善に郷う、猶お景の形に象るがごとし。君此に悪を為せば啍啍然として協い、民皆彼に悪を為す、猶お響の声に応ずるがごとし。
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『正法眼蔵随聞記』巻三有る夜示して云く、唐の太宗即位の後、故殿に栖み給へり、破損せる故に、湿気あがり、風霧冷かにして、玉体おかされつべし、臣下等造作すへき由を奏しければ、帝の言く、時き農節なり、民定めて愁ひあるべし、秋を待て造るべし、湿気に侵さるは地にうけられず、風雨に侵さるは天に合はざるなり、天地に背かば身あるべからず、民を煩はさずんば自ら天地に合ふべし、天地に合はゝ身を侵すべからず、と云ふて終に新宮を作らず、故殿に栖み給へり、
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『呻吟語』外篇・治道・皆な吾が民なり天下の民は皆な朝廷の民なり、皆な天地の民なり、皆な吾が民なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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