新書 / 匈奴
一國聞之者、見之者,垂涎而相告,人悇憛其所自,以吾至亦將得此,將以壞其口,一餌。降者之傑也,若使者至也,上必使人有所召客焉。令得召其知識,胡人之欲觀者勿禁。令婦人傅白墨黑,繡衣而侍其堂者二三十人,或薄或揜,爲其胡戲以相飯。上使樂府幸假之倡樂,吹簫鼓鞀,倒挈面者更進,舞者蹈者時作,少間擊鼓舞其偶人,莫時乃爲戎樂,携手胥彊上客之後,婦人先後扶侍之者固十餘人,令使者、降者時或得此而樂之耳。一國聞之者、見之者,希盱相告,人人忣忣唯恐其後來至也,將以此壞其耳,一餌。凡降者,陛下之所召幸,若所以約致也。陛下必有時所富,必令此有高堂邃宇,善廚處,大囷京,厩有編馬,庫有陣車,奴婢、諸嬰兒、畜生具。令此時大具召胡客,饗胡使,上幸令官助之具,假之樂。
新字:一国聞之者、見之者,垂涎而相告,人悇憛其所自,以吾至亦将得此,将以壊其口,一餌。降者之傑也,若使者至也,上必使人有所召客焉。令得召其知識,胡人之欲観者勿禁。令婦人傅白墨黒,繍衣而侍其堂者二三十人,或薄或揜,為其胡戯以相飯。上使楽府幸仮之倡楽,吹簫鼓鞀,倒挈面者更進,舞者蹈者時作,少間撃鼓舞其偶人,莫時乃為戎楽,携手胥彊上客之後,婦人先後扶侍之者固十余人,令使者、降者時或得此而楽之耳。一国聞之者、見之者,希盱相告,人人忣忣唯恐其後来至也,将以此壊其耳,一餌。凡降者,陛下之所召幸,若所以約致也。陛下必有時所富,必令此有高堂邃宇,善廚処,大囷京,厩有編馬,庫有陣車,奴婢、諸嬰児、畜生具。令此時大具召胡客,饗胡使,上幸令官助之具,仮之楽。
書き下し
一国の聞く者、見る者、涎を垂れて相告げ、人ごとに其の自る所を悇憛し、吾至らば亦た将に此を得んとすと以い、将に以て其の口を壊らんとす、一餌なり。降る者の傑なる、使者の至るが若きは、上必ず人をして客を召す所有らしむ。其の知識を召すを得しめ、胡人の観んと欲する者は禁ずる勿れ。婦人をして白を傅け墨を黒くし、繍衣して其の堂に侍る者二三十人ならしめ、或いは薄く或いは揜い、其の為に胡戯して以て相飯せしむ。上、楽府をして倡楽を幸い仮せしめ、簫鼓鞀を吹き、倒挈面者更ごも進み、舞う者蹈む者時に作り、少間にして鼓を撃ちて其の偶人を舞わしめ、莫の時乃ち戎楽を為し、手を携えて上客の後に胥彊し、婦人先後に扶侍する者固より十余人、使者、降る者をして時に或いは此を得て之を楽しましむるのみ。一国の聞く者、見る者、希盱して相告げ、人人忣忣として其の後れて来至するを恐る、将に此を以て其の耳を壊らんとす、一餌なり。凡そ降る者は、陛下の召幸する所、約致する所以の若し。陛下必ず時に富ます所有り、必ず此をして高堂邃宇、善き廚処、大囷京有らしめ、厩に編馬有り、庫に陣車有り、奴婢、諸嬰児、畜生具わらしむ。此をして時に大いに具えて胡客を召し、胡使を饗せしめ、上、幸いに官をして之が具を助けしめ、之に楽を仮す。
現代語訳
一国の聞いた者、見た者は、よだれを垂らして語り合い、人々は自分の来歴を思い返し、自分が行けばやはりこれを得られると思って、これで彼らの口を駄目にします。これが一つ目の餌です(原文は前段の続きで「一餌」と数えます)。降った者の中でも傑出した者、使者として来た者のような人には、上は必ず人を遣わして客を招かせます。彼らが知り合いを招くのを許し、見物したい胡人も禁じません。婦人たちに白粉を塗り眉を黒くして、刺繍の衣で堂に侍る者二、三十人を置き、薄衣の者も覆う者もいて、彼らのために胡風の戯れをして共に食事させます。上は楽府(宮廷の音楽官)に芸人と音楽を貸し与えさせ、笛、太鼓、ふりつづみを吹き鳴らし、逆さ顔の芸人が代わる代わる出て、舞う者、足を踏み鳴らす者が折々に加わり、しばらくして太鼓を打って人形を舞わせ、日暮れになると異民族の音楽を演奏し、手を携えて上客の後ろに従い、婦人が前後で付き添って支える者は十数人。使者や降った者に、ときにこれを得て楽しませるのです。一国の聞いた者、見た者は、目を見張って語り合い、人々は急いで後れて来るのを恐れ、これで彼らの耳を駄目にします。これが一つの餌です。降った者は、陛下が召して寵愛し、招き寄せる手立てそのものです。陛下は折々に富ませる者を選び、その者に高い堂と奥深い家、良い台所、大きな穀倉を持たせ、厩には揃いの馬、倉庫には軍用の車、奴婢、幼い子ども、家畜まで備えさせます。その者が折々大いに支度して胡の客を招き、胡の使者をもてなす際には、上は官にその支度を手伝わせ、音楽を貸し与えます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『新書』匈奴此をして其の居処楽虞し、囷京の畜、畜は皆な其の故王に過ぎ、慮るに其の単于に出づる或いは、時時此を賜いて家と為すのみ。匈奴の一国心を傾けて冀い、人人忣忣として其の後れて来至するを惟れ恐る、将に此を以て其の腹を壊らんとす、一餌なり。来降する者に於いては、上必ず時時にして召幸する所有り、拊循して後に官に入るを得。夫れ胡の大人は親しみ難し、若し上、胡の嬰児に於いて貴人の子の好く愛す可き者を召さば、上必ず召幸すること大数十人、此が為に繍衣好閼し、且つ出ずれば則ち従い、居れば則ち更ごも侍す。上即ち胡人を饗する、大觳抵する、胡使を客する、力士、武士固より近く旁に侍し、胡の嬰児は側に近侍するを得、故に貴人更ごも進みて酒を佐くるを前に得、上乃ち幸いに自ら此の薄を御し、酒銭を付せしめ、時の人之に偶す。間を為せば則ち繍衣を出だし、帯服賓餘を具え、時に以て之に賜う。上即ち幸いに胡の嬰児を拊し、擣遒し、之を戯弄し、乃ち炙を授けて幸いに自ら之を啗らい、好衣を出だし、閑にして且つ自ら之を贛う。上起つや、胡の嬰児或いは前し或いは後し、胡の貴人既に酒を奉ずるを得て、出ずれば則ち衣を服し綬を佩び、貴人にして前に立つ、数人をして此を得て居らしむるのみ。
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『新書』匈奴凡そ国に賞するは、此れ均しくす可からず。賞均しければ則ち国窾しく、賞薄ければ以て人を動かすに足らず。故に善く賞する者は、之を踔し、之を駮轢し、従いて時に之を厚くす。之を視れば見るに足り、之を誦すれば語るに足らしめ、乃ち一国の心を傾く可し。陛下幸いに臣の計を聴かば、則ち国に余財有り。匈奴の来たる者は、家長已上は固より必ず繍を衣、家少き者は必ず文錦を衣、将に銀車五乗を為り、大いに之に雕画し、四馬を駕し、緑蓋を載せ、数騎に従え、驂乗を御せしめ、且つ単于の出入すと雖も、軽がるしく此に都せず。匈奴の降る者をして、時時此を得て之に賜うのみ。一国の聞く者、見る者、心を希いて相告げ、人人冀幸して、吾至らば亦た此を得可しと以為い、将に以て其の目を壊らんとす、一餌なり。匈奴の使いの至る者は、大人の降る者の若く、大衆の聚まる所なり、上必ず召す所有り、食を賜う。飯物は故に四五盛、美なる胾、膹炙、肉具、醯醢、方数尺前に、一人をして此に坐せしむ、胡人の観んと欲する者、固より百数旁に在り。賜わる者の喜ぶや、且つ笑い且つ飯らい、味皆な嗜む所にして未だ嘗て得ざる所なり。来たる者をして時時此を得て之を饗するのみ。
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『新書』匈奴一国の聞く者、見る者、希盱して欲し、人人忣忣として其の後れて来至するを惟れ恐る。将に此を以て其の心を壊らんとす、一餌なり。故に其の耳を牽き、其の目を牽き、其の口を牽き、其の腹を牽く、四者已に牽き、又た其の心を引く、安んぞ来たらざるを得ん、下胡抑抎す。此れを五餌と謂う。
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『新書』匈奴若し夫れ大変の応は、大約権を以て決塞し、宜しきに因りて行い、豫め形す可からず。翁主を尊び、相室を重んじ、其の長吏を多くし、衆門の大夫は皆な謀士なり、必ず之に財を足す。且つ吾が人を用い、且つ其の尊を用い、其の限を観、其の謀を窺い、中外の符節適たま[糹冓]拘せん。夫れ或人且に安んぞ久しく悍なること此くの若きを得んや。故に三表已に諭し、五餌既に明らかなれば、則ち匈奴の中は乖きて相疑い、単于をして寝ぬれども聊んぜず、飯して其の口を失わしめ、剣を揮い弓を挟み、穹盧の隅に蹲り、左視右視して、以て尽く仇と為さしむ。彼の其の群臣、走る毋からんと欲すと雖も、虎の後に在るが若し。衆来る無からんと欲すれども、恐らくは或いは之を軒げん、此れを勢い然りと謂う。其の貴人の単于に見ゆるは、猶お虎狼に迕うがごとし。其の南面して漢に帰するは、猶お弱子の慈母を慕うがごとし。其の衆人の将吏に見ゆるは、猶お噩として仇讎に迕うがごとし。南郷して漢に走らんと欲するは、猶お水の下に流るるがごとし。将に単于をして臣の使う無く、民の守る無からしめんとす。夫れ悪んぞ頸を係け稽顙して、陛下の義に帰せんことを請わざるを得んや。此れを徳に戦うと謂う。彼の匈奴は略せられ、且に引きて遠く去らんとす。此れに連なること数有り。
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『新書』匈奴夫れ関市は、固より匈奴の犯滑して深く求むる所なり、願わくは上、使いを遣わして厚く之と和し、已むを得ざるを以て之に大市を許せ。使者反らば、要険の所に因りて、多く鑿開を為し、衆くして之を延ばし、関の吏卒をして以て自ら守るに足らしめよ。大いに一関ごとに、屠沽する者、飯食を売る者、羹臛膹炙する者、物ごとに各おの一二百人あらば、則ち胡人は長城の下に著かん。是れ王将に之を彊北せんとし、必ず其の王を攻めん。匈奴の饑うるを以て、飯し羹し膹炙を啗い、喗𣿧して多く酒を飲まば、此れ則ち亡竭立ちどころに待つ可し。賜うこと大にして愈いよ饑え、財尽きて愈いよ困しみ、漢は希心して慕う所なり。匈奴の貴人、其の千人を以て至る者は、其の二三を顕し、其の万人を以て至る者は、其の十余人を顕す。夫れ顕栄は、民を招く機なり。故に遠くは五歳を期し、近くは三年の内に、匈奴亡びん。此れを徳勝と謂う。
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『新書』匈奴臣、陛下の為に三表を建て、五餌を設け、此を以て単于と其の民を争わば、則ち匈奴を下すこと槁を振うが猶し。夫れ無道の人、何ぞ宜しく敢えて此れを捍ぐこと其れ久しからん。陛下肯えて幸いに臣の計を用いば、臣且に事勢を以て天子の信を諭し、匈奴の大衆をして陛下を信ぜしめんとす。為に言を通ずるのみ、必ず行いて易えず、夢中に人に許すも、覚めて且つ背かず、其の陛下を信ずること已に諾し、日出の灼灼たるが若し。故に君の一言を聞けば、微遠有りと雖も、其の志疑わず、仇讎の人も、其の心殆わず、此くの若ければ則ち信諭せり。図る所行われざる莫し、一表なり。臣又た且に事勢を以て陛下の愛を諭し、匈奴の自ら視るをして、苟しくも胡面にして戎状なる者も、其の自ら以て天子に愛せらると為すこと、猶お子の慈母に遌うが若くならしめんとす。此くの若ければ則ち愛諭せり、一表なり。臣又た且に陛下の好を諭し、胡人の自ら視るをして、苟しくも其の技の長ずる所と其の工なる所、一も天子の意に当たるべからしめんとす。此くの若ければ則ち好諭せり、一表なり。人を愛するの状、人の技を好むは、仁道なり。信は大操と為す、帝義なり。愛好に実有り、已諾期す可くんば、十死一生なるも、彼必ず将に至らんとす。此れを三表と謂う。
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