新書 / 時變
故兄勸其弟,父勸其子,則俗之邪至於此矣。商君違禮義,棄倫理,幷心於進取,行之二歲,秦俗日敗。秦人有子,家富子壯則出分,家貧子壯則出贅。假父耰鉏杖篲,耳慮有德色矣;母取瓢椀箕帚,慮立訊語。抱哺其子,與公併踞;婦姑不相說,則反唇而睨。其慈子嗜利而輕簡父母也,慮非有倫理也,亦不同禽獸僅焉耳。然猶幷心而赴時者,曰功成而敗義耳。蹷六國,兼天下,求得矣;然不知反廉耻之節、仁義之厚,信幷兼之法,遂進取之業,凡十三歲而社稷爲墟。不知守成之數,得失之亡術也,悲夫!
新字:故兄勧其弟,父勧其子,則俗之邪至於此矣。商君違礼義,棄倫理,幷心於進取,行之二歳,秦俗日敗。秦人有子,家富子壮則出分,家貧子壮則出贅。仮父耰鉏杖篲,耳慮有徳色矣;母取瓢椀箕帚,慮立訊語。抱哺其子,与公併踞;婦姑不相説,則反唇而睨。其慈子嗜利而軽簡父母也,慮非有倫理也,亦不同禽獣僅焉耳。然猶幷心而赴時者,曰功成而敗義耳。蹷六国,兼天下,求得矣;然不知反廉耻之節、仁義之厚,信幷兼之法,遂進取之業,凡十三歳而社稷為墟。不知守成之数,得失之亡術也,悲夫!
書き下し
故に兄は其の弟に勧め、父は其の子に勧む。則ち俗の邪、此に至る。商君 礼義に違い、倫理を棄て、心を進取に幷せ、之を行うこと二歳にして、秦俗 日に敗る。秦人 子有り、家 富み子 壮なれば則ち出でて分かれ、家 貧しく子 壮なれば則ち出でて贅たり。父に仮るに耰鉏・杖篲を以てすれば、耳慮に徳色有り。母 瓢椀・箕帚を取れば、慮 立ちて訊語す。其の子を抱哺するに、公と併せ踞す。婦姑 相い説ばざれば、則ち唇を反して睨む。其の子を慈しみて利を嗜み、父母を軽簡するや、慮るに倫理有るに非ず、亦た禽獣と同じからざること僅かなるのみ。然れども猶お心を幷せて時に赴く者は、曰く「功成りて義を敗るのみ」と。六国を蹷し、天下を兼ね、求めて得たり。然れども廉恥の節、仁義の厚さに反るを知らず、幷兼の法を信じ、進取の業を遂げ、凡そ十三歳にして社稷 墟と為る。守成の数を知らざるは、得失の無術なり。悲しいかな。
現代語訳
それで兄は弟に、父は子に、利益を勧めるようになりました。風俗の邪悪さがここまで来たのです。商君は礼義に背き、倫理を捨て、心を進取一つに集めました。これを行って二年で、秦の風俗は日に日に敗れました。秦の人には子がいて、家が富んでいて子が成人すれば、家を出て分家し、家が貧しくて子が成人すれば、出て婿養子に行きます。父に鋤や杖、箒を貸すとき、恩に着せる顔をします。母が瓢や椀、箕や箒を取ると、立ち上がって詰問します。子を抱いて乳を与えるにも、舅と並んでうずくまります。嫁と姑が気に入らなければ、唇をそらせて睨みつけます。子を可愛がって利を貪り、父母を軽んじる有様は、倫理があるとは言えず、禽獣と変わらないのもわずかなものです。それでも心を一つにして時勢に向かう者は、「功を成して義を損なうだけだ」と言います。六国を踏み倒し、天下を併せ、求めたものを得ました。しかし廉恥の節や仁義の厚さに立ち返ることを知らず、併合の法を信じ、進取の業を遂げ続けて、わずか十三年で社稷は廃墟になりました。守成の数(方法)を知らないことは、得と失を見極める術がないということです。悲しいことです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『新書』時變秦国 理を失い、天下 大いに敗る。衆は寡を揜い、知は愚を欺き、勇は懼を劫し、壮は衰を淩ぎ、功ありて奮を撃つ者は賢と為し、貴人の善く突盗する者は折と為し、諸侯 諂を設けて相い輹り、詐を飾りて相い紹ぐ者は知と為す。天下 乱れること至れり。是を以て大賢 之を起こし、威 海内に振るい、徳 天下に従う。曩の秦たりし者、今は転じて漢と為れり。
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『新書』時變今は何如。進取の時 去り、幷兼の勢い 過ぐ。胡ぞ孝弟循順を以て為さんや。書を善くして吏と為るのみ。胡ぞ行義節を以て為さんや。家 富みて官に出づるのみ。驕恥 偏にして祭尊と為り、黥劓の者 臂を攘いて祭政と為る。行い狗彘なりと雖も、苟くも家 富み財 足らば、机に隠れ盱視して天子と為るのみ。唯だ昆弟に罪を告げ、伯父を欺突し、父母に逆らうも、然れども銭財 多く、衣服 修まる。我 何ぞ世の基公たるを妨げん。唯だ季母・妻公の接女を愛するも、車馬 厳しく、走犬 良し。矯誙して家 美しく、盗賊して財 多し、何ぞ傷まん。交わらんと欲すれば、吾 貴寵の者を択びて之と交わり、勢いを欲すれば、吏権の者を択びて之を使う。婦を取り子を嫁がしむるに、権勢有るに非ざれば、吾 与に婚姻せず。貴戚有るに非ざれば、与に兄弟たらず。富大家に非ざれば、与に出入せず。何に因る。今 俗は侈靡にして倫を出で等を踰ゆるを以て相い驕り、富の其の事に過ぐるを以て相い競う。今世は空爵を貴び良を賤しみ、俗は靡にして奸を尊ぶ。富民は奸を為さずして貧なるは里に侮られ、廉吏は官を釈てて帰れば邑に笑わる。官に居りて敢えて奸を行いて富む者は賢吏と為り、家に処りて法を犯して利を為す者は才士と為る。
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『新書』過秦下秦王貪鄙の心を懐き、自奮の智を行い、功臣を信ぜず、士民に親しまず、王道を廃して私愛を立て、文書を焚きて刑法を酷にし、詐力を先にして仁義を後にし、暴虐を以て天下の始めと為す。夫れ併兼する者は詐力を高び、安危する者は順権を貴ぶ。此を以て之を言えば、取与・攻守は術を同じくせざるなり。秦、戦国を離れて天下に王たりと雖も、其の道易えず、其の政改めず、是れ其の之を取りし所以にして、孤独にして之を有つ、故に其の亡ぶこと立ちて待つ可し。借使い秦王上世の事を論じ、殷周の迹を併せ、以て其の政を制御せば、後に淫驕の主有りと雖も、猶お未だ傾危の患有らざるなり。故に三王の天下を建つるや、名号顕美にして、功業長久なり。
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『新書』俗激臣の意を以てすれば、吏は慮るに耳目に動かさず、以為えらく是れ特だ適然なるのみ、と。夫れ風を移し俗を易え、天下をして心を移して道に向かわしむること、類 俗吏の能く為す所に非ず。陛下も又 自ら憂えず、窃かに陛下の為に惜しむ。夫れ君臣を立て上下を等しくし、父子をして礼有らしめ、六親をして紀有らしむるは、此れ天の設くる所に非ず。夫れ人の設くる所なり。為さずんば特だ此れ植つれば則ち僵れ、循わざれば則ち壊る。秦 四維を滅ぼして張らず、故に君臣 乖きて相い攘い、上下 乱れ僭して差無く、父子六親 殃僇して其の宜しきを失い、奸人 幷び起こり、万民 離畔し、凡そ十三歳にして社稷 墟と為る。今にして四維 猶お未だ備わらず、故に奸人は冀幸し、而して衆下は疑惑す。豈に如かんや、今 経制を定め、主は主、臣は臣として、上下に差有り、父子六親 各おの其の宜しきを得、奸人に冀幸する所無く、群衆 上を信じて疑惑せざるに。此の業 一たび定まらば、世世 常に安く、而る後に持循する所有らん。若し夫れ経制 定まらざれば、是れ猶お江河を渡るに維楫無く、中流にして風波に遇うがごとし。船は必ず覆敗せん。悲しいかな、備え 之を豫め具えざるは。察せざる可けんや。
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『新書』過秦下秦王己に足れりとして問わず、遂に過ちて変えず。二世之を受け、因りて改めず、暴虐以て禍を重ぬ。子嬰孤立して親無く、危弱にして輔無し。三主の惑い、終身悟らず、亡ぶこと宜しからずや亦た宜なるかな。此の時に当たりて、世に深謀遠慮化を知るの士無きに非ず。然るに敢えて忠を尽くし過ちを払わざる所以は、秦の俗忌諱の禁多ければなり。忠言未だ口に卒らざるに、身糜没す。故に天下の士をして耳を傾けて聴き、足を重ねて立ち、口を闔じて言わざらしむ。是を以て三主道を失いて、忠臣諫めず、智士謀らざるなり。天下已に乱れて、奸臣上に聞せず、豈に悲しからずや。先王壅蔽の国を傷るを知る、故に公卿大夫士を置き、以て法を飾り刑を設けて天下治まる。其の彊きや、暴を禁じ乱を誅して天下服し、其の弱きや、五霸征して諸侯従い、其の削らるるや、内は守り外は附きて社稷存す。故に秦の盛んなるや、法を繁くし刑を厳しくして下震うこと無く、其の衰うるに及びては、百姓怨みて海内叛く。故に周王の序は其の道を得て、千余載絶えず、秦は本末并せ失い、故に長かる能わず。此に由りて之を観れば、安危の統相去ること遠し。
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史記 秦始皇本紀秦海内を并せ、諸侯を兼ね、南面して帝と称し、以て四海を養ふ。天下の士斐然として風に郷ふ。是の若きは何ぞや。曰く、近古の王無きこと久し。周室卑微にして、五霸既に歿し、令天下に行はれず。是を以て諸侯力政し、彊は弱を侵し、衆は寡を暴し、兵革休まず、士民罷敝す。今秦南面して天下に王たり、是れ上に天子有るなり。既に元元の民其の性命を安んずるを得んことを冀ひ、心を虚しくして上を仰がざる莫し。此の時に当たり、威を守り功を定むるは、安危の本此に在り。秦王貪鄙の心を懐き、自奮の智を行ひ、功臣を信ぜず、士民に親しまず、王道を廃し、私権を立て、文書を禁じて刑法を酷にし、詐力を先にして仁義を後にし、暴虐を以て天下の始めと為す。夫れ并兼する者は詐力を高び、安定する者は順権を貴ぶ。此れ取ると守ると術を同じくせざるを言ふなり。秦戦国を離れて天下に王たるも、其の道易へず、其の政改めず。是れ其の之を取る所以と之を守る所以と異なる無きなり。孤独にして之を有つ、故に其の亡ぶこと立ちて待つ可し。借使秦王上世の事を計り、殷周の跡を并せ、以て其の政を制御せば、後に淫驕の主有りと雖も、未だ傾危の患ひ有らざるなり。故に三王の天下を建つるや、名号顕美にして、功業長久なり。今秦の二世立つや、天下領を引きて其の政を観ざる莫し。夫れ寒ゆる者は裋褐を利とし、饑うる者は糟糠を甘しとす。天下の嗷嗷たるは、新主の資なり。此れ労民の仁を為し易きを言ふなり。
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