新書 / 階級
豫讓事中行之君,智伯伐中行滅之,豫讓移事智伯。及趙滅智伯,豫讓釁面變容,吸炭變聲,必報襄子。五起而弗中,襄子一夕而五易臥。人問豫讓,讓曰:「中行衆人畜我,我故衆人事之;智伯國士遇我,故爲之國士用。」故此一豫讓也,反君事讎,行若狗彘,已而折節致忠,行出乎烈士,人主使然也。故人主遇其大臣如遇犬馬,彼將犬馬自如也;如遇官徒,彼將官徒自爲也。頑頓無恥,奊苟無節,廉耻不立,且不自好,則苟若而可,見利則逝,見便則奪。主上有敗,則困而推之矣;主上有患,則吾苟免而已,立而觀之耳;有便吾身者,則欺賣而利之耳。人主將何便於此?羣下至衆,而主至少也,所托財器職業者率於羣下也。但無耻,但苟安,則主罷病。
新字:予譲事中行之君,智伯伐中行滅之,予譲移事智伯。及趙滅智伯,予譲釁面変容,吸炭変声,必報襄子。五起而弗中,襄子一夕而五易臥。人問予譲,譲曰:「中行衆人畜我,我故衆人事之;智伯国士遇我,故為之国士用。」故此一予譲也,反君事讎,行若狗彘,已而折節致忠,行出乎烈士,人主使然也。故人主遇其大臣如遇犬馬,彼将犬馬自如也;如遇官徒,彼将官徒自為也。頑頓無恥,奊苟無節,廉耻不立,且不自好,則苟若而可,見利則逝,見便則奪。主上有敗,則困而推之矣;主上有患,則吾苟免而已,立而観之耳;有便吾身者,則欺売而利之耳。人主将何便於此?羣下至衆,而主至少也,所托財器職業者率於羣下也。但無耻,但苟安,則主罷病。
書き下し
豫譲 中行の君に事う。智伯 中行を伐ちて之を滅ぼし、豫譲 移りて智伯に事う。趙 智伯を滅ぼすに及び、豫譲 面に釁り容を変え、炭を吸いて声を変え、必ず襄子に報いんとす。五たび起こして中らず。襄子は一夕にして五たび臥を易う。人 豫譲に問う。譲 曰く、「中行は衆人もて我を畜う。我 故に衆人もて之に事う。智伯は国士もて我を遇す。故に之の為に国士として用いらる」と。故に此の一豫譲や、君に反き讎に事え、行い狗彘の若し。已にして節を折りて忠を致し、行い烈士に出づるは、人主 然らしむるなり。故に人主 其の大臣を遇すること犬馬を遇するが如くすれば、彼は将に犬馬の自如たらんとす。官徒を遇するが如くすれば、彼は将に官徒の自為たらんとす。頑鈍にして恥無く、奊苟にして節無く、廉恥 立たず、且つ自ら好まざれば、則ち苟若にして可とし、利を見れば則ち逝き、便を見れば則ち奪う。主上に敗れ有らば、則ち困しめて之を推し、主上に患い有らば、則ち吾は苟くも免れんのみ、立ちて之を観るのみ。吾が身を便にする者有らば、則ち欺き売りて之を利す。人主 将に此に何をか便にせん。群下は至って衆く、主は至って少なし。財器・職業を托する所の者は、群下に率う。但だ恥無く、但だ苟くも安んずれば、則ち主 罷病す。
現代語訳
豫譲は中行の君に仕えていました。智伯が中行を討って滅ぼすと、豫譲は智伯に移って仕えました。趙が智伯を滅ぼすと、豫譲は顔に漆を塗って容貌を変え、炭を飲んで声を変え、必ず襄子に報いようとしました。五度、襲いましたが当たりませんでした。襄子は一晩に五度、寝所を変えました。人が豫譲に尋ねると、豫譲は言いました。「中行の君は私を人並みに養った。だから私も人並みに仕えた。智伯は私を国士として遇した。だから国士として尽くした」。この一人の豫譲は、君に背いて仇に仕え、行いは犬や豚のようでした。それが後に節を折って忠を尽くし、烈士に数えられる行いに出たのは、主君がそうさせたからです。だから主君が大臣を犬馬のように遇すれば、彼らは犬馬としてのんびり振る舞います。役所の下働きのように遇すれば、彼らは下働きとして振る舞います。頑固で恥を知らず、卑屈で節操がなく、廉恥が立たず、自分を大切にもしなければ、いい加減でよしとし、利を見れば去り、便を見れば奪います。主君に失敗があれば、苦しめて突き放し、主君に患いがあれば、自分は何とか免れるだけで、立って眺めているだけです。自分に都合のよい者がいれば、欺き売ってその利を得ます。主君はこれで何が都合がよいでしょうか。臣下はきわめて多く、主君はきわめて少ない。財や器、職務を託すのは、みな臣下なのです。恥なく、ただ安んじるだけなら、主君は疲れ病みます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『新書』諭誠豫譲は中行の君に事え、智伯中行氏を滅ぼすや、豫譲は徙りて智伯に事う。趙襄子智伯を破るに及び、豫譲は面を剤みて容を変え、炭を呑みて唖と為り、其の妻の所に乞うも妻識らず、乃ち伏して襄子を刺さんとし、五たび起つも中らず。襄子之を患い、食らうに味を甘しとせず、一夕にして五たび臥を易え、見ゆるに身を全うせず。人豫譲に謂いて曰く、「子は中行に死せずして反って其の讎に事う。何ぞ恥ずる無きことの甚だしきや。今必ず身を砕き軀を靡して以て智伯の為にせんとす。何ぞ其れ前と異なるや」と。豫譲曰く、「我中行の君に事うるや、帷を与えて之に衣せ、関を与えて之に枕せしむ。夫の衆人我を畜う。我故に衆人として之に事う。智伯の吾を分かつに服衣を以てし、吾に饀するに鼎実を以てし、袂を挙げて礼を為すに及びては、是を以て国士として我を遇す。我故に国士として之に報ゆ」と。故に曰く、「士は己を知る者の為に死し、女は己を悦ぶ者の為に容る」と、冗言に非ざるなり。故は主に在るのみ。
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『淮南子』主術訓夫れ臣主の相い與するや、父子の厚き、骨肉の親しき有るに非ず。而も力を竭くし死を殊にし、其の軀を辭せざる者は、何ぞや。勢の之をして然らしむる有るなり。昔者 豫讓は、中行文子の臣なり。智伯 中行氏を伐ち、其の地を併吞す。豫讓 其の主に背きて智伯に臣たり。智伯 趙襄子と晉陽の下に戰い、身死して戮と為り、國 分かれて三と為る。豫讓 趙襄子に報いんと欲し、身を漆して厲と為し、炭を吞みて音を變じ、齒を擿きて貌を易う。夫れ一人の心を以て兩主に事え、或いは背きて去り、或いは身を以て之に徇わんと欲す。豈に其の趨舍厚薄の勢 異ならんや。人の恩澤 之をして然らしむるなり。紂 天下を兼ね、諸侯を朝せしめ、人跡の及ぶ所、舟楫の通ずる所、賓服せざる莫し。然れども武王の甲卒三千人、之を牧野に禽にす。豈に周民 節に死して、殷民 背叛せんや。其の主の義德 厚くして號令 行わるればなり。夫れ疾風にして波 興り、木 茂りて鳥 集まるは、相生の氣なり。是の故に臣 其の欲する所を君に得ざれば、君も亦た其の求むる所を臣に得る能わざるなり。君臣の施は、相い報ゆるの勢なり。是の故に臣 力を盡くし節に死して以て君に與し、君 功を計り爵を垂れて以て臣に與う。是の故に君は無功の臣を賞する能わず、臣も亦た無德の君に死する能わず。君德 民に下流せずして、之を用いんと欲するは、鞭にて馬を蹄うるがごとし。是れ猶お雨を待たずして稼を熟せしむるがごとく、必ず不可の數なり。
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説苑・復恩智伯趙襄子と晋陽の下に戦ひて死す、智伯の臣豫譲怒り、其の精気を以て襄主の心を動かす能ふを以て、乃ち身に漆して形を変じ、炭を吞みて声を更ふ、襄主将に出でんとするに、豫譲偽りて死人と為り、梁の下に処る、駟馬驚きて進まず、襄主心を動かし、使者をして梁下を視しめ豫譲を得たり、襄主其の義を重んじて殺さざるなり。又盗み、罪に抵る為り、刑を被るの人赭衣を為し、繕宮に入る、襄主心を動かし、則ち曰く必ず豫譲ならん、と。襄主執へて之に問ひて曰く、「子始め中行君に事へ、智伯中行君を殺すも、子死する能はず、還りて反りて之に事ふ、今吾智伯を殺すや、乃ち身を漆して癘を為し、炭を吞みて啞を為し、寡人を殺さんと欲するは、何ぞ先行と異なるか」と。豫譲曰く、「中行君は衆人もて臣を畜ふ、臣も亦た衆人もて之に事ふ、智伯は朝士もて臣を待す、臣も亦た朝士として之が用を為す」と。襄子曰く、「義に非ずや、子は壮士なり」と。乃ち自ら車庫の中に置き、水漿口に入る者三たびするも日ならず以て豫譲を礼す、譲自ら知り、遂に自殺するなり。
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呂氏春秋・不侵③豫讓の友、豫讓に謂いて曰く、「子の行い、何ぞ其れ惑えるや。子嘗て范氏・中行氏に事え、諸侯盡く之を滅ぼせども、子為に報いず。智氏に至りて、子必ず之が為に報ゆるは、何の故ぞ。」豫讓曰く、「我將に子に其の故を告げんとす。范氏・中行氏は、我寒ゆれども、我に衣せず、我饑ゆれども、我に食らわせずして、時に我をして千人と其の養いを共にせしむ。是れ衆人もて我を畜うなり。夫れ衆人もて我を畜う者には、我も亦た衆人もて之に事う。智氏に至りては、則ち然らず。出づれば則ち我を乘するに車を以てし、入れば則ち我を足らしむるに養いを以てす。衆人廣く朝すれども、必ず禮を吾が所に加う。是れ國士もて我を畜うなり。夫れ國士もて我を畜う者には、我も亦た國士もて之に事う。」豫讓は國士なり。而も猶ほ人の己に於けるを以て念と為す。又況んや中人に於いてをや。
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史記 刺客列伝豫譲は、晋人なり。故嘗て范氏及び中行氏に事へ、而して名を知らるる所無し。去りて智伯に事ふ。智伯甚だ之を尊寵す。智伯の趙襄子を伐つに及び、趙襄子、韓・魏と合謀して智伯を滅ぼす。智伯を滅ぼすの後、其の地を三分す。趙襄子最も智伯を怨み、其の頭に漆して以て飲器と為す。豫譲山中に遁逃して曰く、「嗟乎、士は己を知る者の為に死し、女は己を説ぶ者の為に容づくる。今、智伯我を知る。我必ず為に讎を報じて死し、以て智伯に報ぜば、則ち吾が魂魄愧ぢざらん」と。乃ち名姓を変じて刑人と為り、宮に入りて廁を塗り、中に匕首を挟み、以て襄子を刺さんと欲す。襄子廁に如き、心動く。廁を塗る刑人を執へ問へば、則ち豫譲なり。内に刀兵を持ちて曰く、「智伯の為に仇を報ぜんと欲す」と。左右之を誅せんと欲す。襄子曰く、「彼は義人なり。吾謹んで之を避けんのみ。且つ智伯亡びて後無く、而して其の臣為に仇を報ぜんと欲す。此れ天下の賢人なり」と。卒に醳して之を去らしむ。
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史記 刺客列伝居ること頃之、豫譲又身に漆して厲と為り、炭を呑みて唖と為り、形状をして知るべからざらしめ、市に行乞す。其の妻識らざるなり。行きて其の友に見ゆ。其の友之を識りて曰く、「汝は豫譲に非ずや」と。曰く、「我是なり」と。其の友為に泣きて曰く、「子の才を以て、質を委ねて臣として襄子に事へば、襄子必ず子を近幸せん。子を近幸せば、乃ち欲する所を為すこと、顧って易からずや。何ぞ乃ち身を残し形を苦しめ、以て襄子に報ぜんことを求めんと欲する。亦難からずや」と。豫譲曰く、「既已に質を委ねて臣として人に事へ、而して之を殺さんことを求むるは、是れ二心を懐きて以て其の君に事ふるなり。且つ吾が為す所の者は極めて難きのみ。然れども此を為す所以の者は、将に以て天下後世の人臣と為りて二心を懐きて以て其の君に事ふる者を愧ぢしめんとするなり」と。既に去り、頃之、襄子当に出づべし。豫譲、当に過ぐべき所の橋の下に伏す。襄子橋に至り、馬驚く。襄子曰く、「此れ必ず是れ豫譲ならん」と。人をして之を問はしむれば、果して豫譲なり。是に於て襄子乃ち豫譲を数めて曰く、「子は嘗て范・中行氏に事へずや。智伯尽く之を滅ぼす。而るに子は為に讎を報ぜず、而して反って質を委ねて智伯に臣たり。智伯も亦已に死せり。而るに子独り何を以て之が為に讎を報ずることの深きや」と。豫譲曰く、「臣、范・中行氏に事ふ。范・中行氏は皆衆人もて我を遇す。我故に衆人もて之に報ず。智伯に至りては、国士もて我を遇す。我故に国士もて之に報ず」と。襄子喟然として嘆息して泣きて曰く、「嗟乎豫子。子の智伯の為にする、名既に成れり。而して寡人の子を赦す、亦已に足れり。子其れ自ら計を為せ。寡人復た子を釈さず」と。兵をして之を囲ましむ。豫譲曰く、「臣聞く、明主は人の美を掩はず、而して忠臣は名に死するの義有りと。前に君已に寛く臣を赦し、天下君の賢を称せざる莫し。今日の事、臣固より誅に伏せん。然れども願はくは君の衣を請ひて之を撃ち、以て讎を報ずるの意を致さば、則ち死すと雖も恨みず。敢て望む所に非ざるなり。敢て腹心を布く」と。是に於て襄子大いに之を義とし、乃ち使をして衣を持ちて豫譲に与へしむ。豫譲剣を抜きて三たび躍りて之を撃ち、
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