新書 / 階級
臣聞之曰:履雖鮮弗以加枕,冠雖弊弗以苴履。夫嘗以在貴寵之位,天子改容而嘗體貌之矣,吏民嘗俯伏以敬畏之矣。今而有過,令廢之可也,退之可也,賜之死可也;若夫束縛之,係絏之,輸之司空,編之徒官,司寇、牢正、徒長、小吏罵詈而榜笞之,殆非所以令衆庶之見也。夫卑賤者習知尊貴者之事,一旦吾亦乃可以加也,非所以習天下也,非尊尊貴貴之化也。夫天子之所嘗寵,衆庶之所嘗寵,死而死爾,賤人安宜得此而頓辱之哉!
新字:臣聞之曰:履雖鮮弗以加枕,冠雖弊弗以苴履。夫嘗以在貴寵之位,天子改容而嘗体貌之矣,吏民嘗俯伏以敬畏之矣。今而有過,令廃之可也,退之可也,賜之死可也;若夫束縛之,係絏之,輸之司空,編之徒官,司寇、牢正、徒長、小吏罵詈而榜笞之,殆非所以令衆庶之見也。夫卑賤者習知尊貴者之事,一旦吾亦乃可以加也,非所以習天下也,非尊尊貴貴之化也。夫天子之所嘗寵,衆庶之所嘗寵,死而死爾,賤人安宜得此而頓辱之哉!
書き下し
臣 之を聞く。曰く、履 鮮やかなりと雖も以て枕に加えず、冠 弊ると雖も以て履に苴かず。夫れ嘗て貴寵の位に在り、天子 容を改めて嘗て之を体貌し、吏民 嘗て俯伏して以て之を敬畏す。今にして過ち有らば、之を廃せしむるも可なり、之を退けしむるも可なり、之に死を賜うも可なり。若し夫れ之を束縛し、之を係絏し、司空に輸し、徒官に編し、司寇・牢正・徒長・小吏 罵詈して之を榜笞するは、殆ど衆庶をして見しむる所以に非ず。夫れ卑賤なる者 尊貴の事を習い知り、一旦 吾も亦た乃ち加う可しとするは、天下に習わしむる所以に非ず、尊尊貴貴の化に非ざるなり。夫れ天子の嘗て寵する所、衆庶の嘗て寵する所なれば、死するは死するのみ。賤人 安んぞ宜しく此を得て之を頓辱すべけんや。
現代語訳
私はこう聞いています。履物は新しくても枕に置かず、冠は古びても履物の下に敷かない、と。かつて貴い寵愛の位にあって、天子が居ずまいを正して体面を重んじ、役人や民がひれ伏して敬い畏れた人です。いま過ちがあれば、罷免してもよい、退けてもよい、死を賜ってもよいのです。しかし縛り上げ、縄でつなぎ、司空に送り、刑徒の官に編入し、司寇や牢正、徒長、小吏が罵って鞭打つ、というのは、民衆に見せるべきことではありません。卑しい者が尊い者の事情を知り、いつか自分も同じことができると思うのは、天下に習わせるべきことではなく、尊きを尊ぶ教化でもありません。天子がかつて寵愛し、民衆もかつて寵愛した人なら、死ぬ場合も死ぬだけでよいのです。賤しい者が、どうしてそれを手に入れて辱め、貶めてよいでしょうか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『新書』階級故に古者は、礼 庶人に及ばず、刑 君子に至らず、寵臣の節を厲ます所以なり。古者 大臣に不廉に坐して廃せらるる者有るも、不廉と謂わず、「簠簋 飾らず」と曰う。穢汚して姑婦姊姨母に坐し、男女 別無き者は、汚穢と謂わず、「帷箔 修まらず」と曰う。罷軟にして任に勝えざるに坐する者は、罷軟と謂わず、「下官 職あらず」と曰う。故に貴大臣 定めて其の罪有るも、猶お未だ斥然として以て之を呼ばず、尚お遷就して之が為に諱む。故に其の大譴・大何域に在る者は、譴訶を聞けば則ち白冠釐纓、盤水に剣を加え、請室に造りて其の罪を請うのみ。上は執縛・係引して行かしめず。其の中罪の者は、命を聞きて自ら弛し、上は頸を盭げて加えしめず。其の大罪有る者は、令を聞けば北面して再拝し、跪きて自裁す。上は捽抑して刑せしめず。曰く、「子大夫 自ら過ち有るのみ、吾 子を遇すること礼有りき」と。之を遇すること礼有り、故に群臣は自ら喜ぶ。厲ますに廉恥を以てし、故に人は節行に務む。上 廉恥礼義を設けて以て其の臣を遇し、而して君臣 節行を以て其の上に報いざれば、即ち人類に非ざるなり。
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『新書』階級鄙諺に曰く、「鼠に投げんと欲して其の器を忌む」と。此れ善き喩えなり。鼠の器に近づく、尚お憚りて投げざるは、器を傷つけんことを恐るればなり。況んや貴大臣の主上に近き者をや。廉恥礼節を以て君子を治む。故に死を賜うこと有りて僇辱すること無し。是を以て係・縛・榜・笞・髡・刖・黥・劓の罪は、士大夫に及ばず、其の主上を離るること遠からざるを以てなり。礼に、敢えて君の路馬を歯えず、其の芻を蹴る者は罪有り。君の凡杖を見れば則ち起ち、君の乗輿に遭えば則ち下り、正門に入れば則ち趨る。君の寵臣 或いは過ち有りと雖も、刑僇 其の身に加えざるは、君の勢いを尊ぶなり。此れ則ち主上の為に不敬を豫め遠ざくる所以にして、群臣を体貌して其の節を厲ます所以なり。今 王侯三公の貴より、皆 天子の容を改めて礼する所なり。古の天子の所謂 伯父・伯舅なり。今 衆庶・徒隷と同じく黥・劓・髡・刖・笞・罵・棄市の法あり。然らば則ち堂下 陛亡からざるか。僇辱を被る者は太だ迫らざるか。廉恥 行われず、大臣 無乃 重権を握りて、大官にして徒隷無恥の心有らんか。夫れ望夷の事、二世 見て重法を以て当てらるるは、鼠に投げて器を忌まざるの習いなり。
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『新書』階級人主の尊きは、辟えば堂の異なること無し。陛を階すること九級なる者は、堂の高大 幾そ六尺なり。若し堂に陛級無き者は、堂の高き治かに尺に過ぎず。天子は堂の如く、群臣は陛の如く、衆庶は地の如し。此れ其の辟えなり。故に陛 五級より上は、廉 地より遠ければ則ち堂 高し。陛に級亡く、廉 地に近ければ則ち堂 卑し。高き者は攀ぢ難く、卑き者は陵ぎ易きは、理勢の然らしむるなり。故に古者の聖王は列等を制為り、内に公卿大夫士有り、外に公侯伯子男有り、然る後に官師小吏有り、施して庶人に及ぶ。等級 分明にして天子 焉に加わる。故に其の尊きこと及ぶ可からず。
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『新書』服疑服を制するの道は、至適至和を取りて以て民に予え、至美至神は之を帝に進め、奇服文章以て上下を等しくして貴賤を差つ。是を以て高下異なれば則ち名号異なり、則ち権力異なり、則ち事勢異なり、則ち旗章異なり、則ち符瑞異なり、則ち礼寵異なり、則ち秩禄異なり、則ち冠履異なり、則ち衣帯異なり、則ち環珮異なり、則ち車馬異なり、則ち妻妾異なり、則ち沢厚異なり、則ち宮室異なり、則ち床席異なり、則ち器皿異なり、則ち飲食異なり、則ち祭祀異なり、則ち死喪異なる。則ち故に高ければ則ち此の品周く高く、下ければ則ち此の品周く下く、人に加うる者は品此れ之に臨み、人を埤くする者は品此れ之を承く。遷れば則ち品此の者進み、絀くれば則ち品此の者損す。貴は周く豊かに、賤は周く謙にして、貴賤に級有り、服位に等有り。等級既に設けて、各おの其の検に処り、人其の度に循い、擅に退けば則ち譲め、上僭すれば則ち誅す。法を建てて以て之を習わし、官を設けて以て之を牧す。是を以て天下其の服を見て貴賤を知り、其の章を望みて其の勢位を知る。人其の心を定め、各おの其の目を著らかにす。故に衆多にして天下□ならず、伝わること遠くして天下祗を識る。卑尊已に著れ、上下已に分かれて、則ち人倫法とせらる。是に於いて君の臣と与にするは日の星の若し。臣を以て幾ばくも主を疑う可からず、賤は幾ばくも貴を冒す可からず。下 等を凌がざれば則ち上位尊く、臣 級を踰えざれば則ち主位安し。謹みて倫紀を守れば則ち乱 由りて生ずる無し。
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『新書』階級故に化 成り俗 定まれば、則ち人臣と為る者は、主の醜には身を亡ぼし、国の醜には家を亡ぼし、公の醜には私を忘れ、利は苟くも就かず、害は苟くも去らず、唯だ義の在る所のみ、主上の化なり。故に父兄の臣は誠に宗廟に死し、法度の臣は誠に社稷に死し、輔翼の臣は誠に君上に死し、守衛捍敵の臣は誠に城郭封境に死す。故に曰く「聖人に金城有り」とは、物に比し志に比するなり。彼は且に我が為に死せんとす、故に吾は之と俱に生くるを得。彼は且に我が為に亡びんとす、故に吾は之と俱に存するを得。夫れ将に我が為に危うからんとす、故に吾は之と皆 安きを得。行を顧みて利を忘れ、節を守りて義に服す、故に以て不御の権を託す可く、以て五尺の孤を託す可し。此れ廉恥を厲まし礼義を行うの致す所なり、主上 何をか喪わん。此を為さずして、顧って彼の行うことを為す。故に曰く、長太息す可き者なり。
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『新書』階級豫譲 中行の君に事う。智伯 中行を伐ちて之を滅ぼし、豫譲 移りて智伯に事う。趙 智伯を滅ぼすに及び、豫譲 面に釁り容を変え、炭を吸いて声を変え、必ず襄子に報いんとす。五たび起こして中らず。襄子は一夕にして五たび臥を易う。人 豫譲に問う。譲 曰く、「中行は衆人もて我を畜う。我 故に衆人もて之に事う。智伯は国士もて我を遇す。故に之の為に国士として用いらる」と。故に此の一豫譲や、君に反き讎に事え、行い狗彘の若し。已にして節を折りて忠を致し、行い烈士に出づるは、人主 然らしむるなり。故に人主 其の大臣を遇すること犬馬を遇するが如くすれば、彼は将に犬馬の自如たらんとす。官徒を遇するが如くすれば、彼は将に官徒の自為たらんとす。頑鈍にして恥無く、奊苟にして節無く、廉恥 立たず、且つ自ら好まざれば、則ち苟若にして可とし、利を見れば則ち逝き、便を見れば則ち奪う。主上に敗れ有らば、則ち困しめて之を推し、主上に患い有らば、則ち吾は苟くも免れんのみ、立ちて之を観るのみ。吾が身を便にする者有らば、則ち欺き売りて之を利す。人主 将に此に何をか便にせん。群下は至って衆く、主は至って少なし。財器・職業を托する所の者は、群下に率う。但だ恥無く、但だ苟くも安んずれば、則ち主 罷病す。
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