新語 / 辨惑
於是齊人懼然而恐,君臣易操,不安其故行,乃歸魯四邑之侵地,終無乘魯之心,鄰□振動,人懷向魯之意,強國驕君,莫不恐懼,邪臣佞人,變行易慮,天下之政,□□而折中;而定公拘於三家,陷於眾口,不能卒用孔子者,內無獨見之明,外惑邪臣之黨,以弱其國而亡其身,權歸於三家,邑土單於強齊。夫用人若彼,失人若此;然定公不覺悟,信季孫之計,背貞臣之策,以獲拘弱之名,而喪丘山之功,不亦惑乎!
新字:於是斉人懼然而恐,君臣易操,不安其故行,乃帰魯四邑之侵地,終無乗魯之心,鄰□振動,人懐向魯之意,強国驕君,莫不恐懼,邪臣佞人,変行易慮,天下之政,□□而折中;而定公拘於三家,陥於衆口,不能卒用孔子者,内無独見之明,外惑邪臣之党,以弱其国而亡其身,権帰於三家,邑土単於強斉。夫用人若彼,失人若此;然定公不覚悟,信季孫之計,背貞臣之策,以獲拘弱之名,而喪丘山之功,不亦惑乎!
書き下し
是に於て斉人懼然として恐れ、君臣操を易え、其の故行に安んぜず。乃ち魯の四邑の侵地を帰し、終に魯に乗ずるの心無し。鄰□振動し、人は魯に向かうの意を懐き、強国驕君、恐懼せざる莫く、邪臣佞人、行を変え慮を易う。天下の政、□□にして折中す。而るに定公は三家に拘せられ、衆口に陥り、卒に孔子を用うる能わず。内に独見の明無く、外は邪臣の党に惑い、以て其の国を弱くして其の身を亡ぼし、権は三家に帰し、邑土は強斉に単く。夫れ人を用うること彼の若く、人を失うこと此の若し。然れども定公は覚悟せず、季孫の計を信じ、貞臣の策に背き、以て拘弱の名を獲、而して丘山の功を喪う。亦惑いならずや。
現代語訳
こうして斉の人はおそれ慄き、君も臣も態度を改め、以前の振る舞いに安んじていられなくなりました。そして魯の四つの邑から侵していた土地を返し、ついに魯につけ入る心はなくなりました。隣国は(欠字)、震え動き、人々は魯へ向かう気持ちを抱き、強国も驕った君主も恐れないものはなく、よこしまな臣やへつらう者も、行いを変え考えを改めました。天下の政は、(欠字)して中正に落ち着きました。ところが定公は三家にとらわれ、大勢の口に陥れられて、ついに孔子を用いることができませんでした。内には自分で見抜く明がなく、外には邪な臣の党に惑わされ、そのために国を弱くして身を亡ぼし、権力は三家に帰し、領土は強い斉に削り尽くされました。人を用いればあのようになり、人を失えばこのようになるのです。それなのに定公は悟らず、季孫の計を信じ、忠臣の策に背いて、とらわれた弱い君主という名を得、山のように大きな功を失いました。惑いというほかありません。なお、本文には二か所に欠字があり、文意をすべて読み切れない所が残ります。
解説
この章句が説くこと
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新語・辨惑故に邪臣の賢を蔽うは、猶お浮雲の日月を鄣ぐがごときなり。神霊の化を得て、雲を罷め翳を霽らし、山海に帰らしむるに非ざれば、然る後に乃ち其の光明を覩て、天下の濡湿を暴し、四方の晦冥を照らすを得ず。今、上に明王聖主無く、下に貞正の諸侯無し。姦臣賊子の党を誅鉏し、凝滞紕繆の結を解釈して、然る後に忠良方直の人、則ち世に容れられて政に施すを得ん。故に孔子君は暗く臣は乱れ、衆邪位に在り、政道は三家に隔てられ、仁義は公門に閉ざさるるに遭い、故に公陵の歌を作り、世に権力無きを傷む。大化絶えて通ぜず、道徳施せども用いられず。故に曰く、「之を如何ともする無き者は、吾之を如何ともする末きのみ」と。夫れ言うに、道は権に因りて立ち、徳は勢に因りて行われ、其の位に在らざる者は、則ち以て其の政を斉うる無く、其の柄を操らざる者は、則ち以て其の剛を制する無し。詩に云う、「斧有り柯有り」と。何を以て之を治むるかを言うなり。
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『新序』雜事第三故に偏聽は姦を生じ、獨任は亂を成す。昔魯は季孫の説を聽きて孔子を逐い、宋は子冉の計を信じて墨翟を逐う。夫れ孔・墨の辯を以てして、自ら免るる能わざるは何ぞや。衆口は金を鑠かし、積毀は骨を銷す。是を以て秦は由余を用いて中國に霸たり、齊は越人子臧を用いて威・宣を強くす。此の二國豈に俗に拘り、世に牽かれ、奇偏の辭に繫がれんや。公聽共觀して、名を當世に垂る。故に意合えば、則ち胡越も兄弟と爲る。由余・子臧是れなり。合わざれば、則ち骨肉も仇讐と爲る。朱・象、管・蔡是れなり。今人主如し能く齊・秦の明を用い、宋・魯の聽を後にせば、則ち五伯も侔しきに足らず、三王も比を爲し易きなり。是を以て聖王覺悟して、子之の心を捐て、能く田常の賢を説ばず、比干の後を封じ、孕婦の墓を修む。故に功業天下を覆う。何となれば則ち、善を欲して厭く無ければなり。夫れ晉の文公は其の讐に親しみて強く諸侯に霸たり、齊の桓公は其の仇を用いて、天下を一匡す。何となれば則ち、慈仁殷勤、誠に心に加われば、虚辭を以て借る可からざればなり。
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新語・辨惑夫れ事を挙ぐる者、或いは善を為して善と称せられず、或いは不善にして善と称せらるるは、何ぞ。之を視る者謬り、之を論ずる者誤ればなり。故に行い或いは世に合い、言或いは耳に順うは、斯れ乃ち上の意に阿り、上の旨に従い、直を操りて方に乖き、曲を懐きて邪に合し、其の剛柔の勢いに因り、為に縦横の術を作る。故に忤逆の言無く、合わざるの義無き者なり。昔哀公有若に問いて曰く、「年饑えて、用足らず、之を如何せん」と。有若対えて曰く、「盍ぞ徹せざる」と。蓋し上を損して之を下に帰すれば、則ち耳に忤い意に合わず、遂に逆いて用いられず。此れ所謂其の行いを正して苟くも世に合わざるなり。有若豈に哀公の意に阿り、国を益するの義を為すを知らざらんや。夫れ君子は直道にして行い、必ず屈辱せらるるを知りて避けず。故に行いは敢えて苟くも合わせず、言は苟くも容れられんと為さず。世に功無しと雖も、名は称するに足る。言は国家に用いられずと雖も、挙措の言は法る可きなり。
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新語・辨惑人の曽子と姓名を同じくする者有りて人を殺す。人有り曽子の母に告げて曰く、「参乃ち人を殺せり」と。母方に織りて、故の如し。頃く有りて復た告げて云う。是くの若き者三たび、曽子の母杼を投げ垣を踰えて去る。曽子の母は子の人を殺さざるを知らざるに非ず、之を言う者衆ければなり。夫れ流言の並び至り、衆人の是非する所は、賢智と雖も敢えて自ら畢せず、況んや凡人をや。魯の定公の時、斉侯と夾谷に会し、孔子相の事を行う。両君壇に升り、両相下に処り、両相揖せんと欲す。君臣の礼、済済として備わる。斉人鼓譟して起ち、魯公を執えんと欲す。孔子階を歴て上り、一等を尽くさずして立ち、斉侯に謂いて曰く、「両君好みを合わせ、礼を以て相率い、楽を以て相化す。臣聞く、嘉楽は野に合せず、犠象の薦は堂を下らずと。夷・狄の民何をか求めて為さんや」と。司馬に命じて之を止めんことを請う。定公曰く、「諾」と。斉侯逡巡して席を避けて曰く、「寡人の過ちなり」と。退きて自ら大夫を責む。会を罷む。斉人優旃をして魯公の幕下に舞わしむ。傲戯して、魯君の隙を候い、以て定公を執えんと欲す。孔子歎じて曰く、「君辱めらるれば臣は死に当たる」と。司馬をして法を行い斬らしむ。首足門を異にして出ず。
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新語・輔政君子は熒熒の色を遠ざけ、錚錚の声を放ち、恬美の味を絶ち、嗌嘔の情を疎んず。天道は大を以て小を制し、重を以て軽を顛す。小を以て大を治むれば、度を乱し貞を干す。讒夫は賢に似、美言は信に似て、之を聴く者は惑い、之を観る者は冥し。故に蘇秦は諸侯に尊ばれ、商鞅は西秦に顕わる。世に賢智の君無くんば、孰か能く其の形を別たん。故に堯は驩兜を放ち、仲尼は少正卯を誅す。甘言の嘉みする所、傾かざる靡し。惟だ堯のみ其の実を知り、仲尼は其の情を見る。故に聖王を干す者は誅せられ、賢君を遏ぐ者は刑せられ、凡王に遭う者は貴く、乱世に触るる者は栄ゆ。鄭儋は斉を亡れて魯に帰し、斉は九合の名有りて、魯は乾時の恥有り。夫れ千乗の国に拠りて、讒佞の計を信ずれば、未だ亡びざる者有らざるなり。故に詩に云う、「讒人極まり罔く、交々四国を乱す」と。衆邪心を合わせ、以て一君を傾く。国危く民失わるるは、亦宜ならずや。
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新語・本行周室の衰微し、礼義の行われざるを閔れむに及び、厄挫頓仆しながら、諸侯に歴説し、帝王の道を匡し、天下の政を反さんと欲す。身に其の立つこと無く、世に其の主無く、天下を周流して、意に合する所無し。大道隠れて舒びず、羽翼摧けて申びず。自ら□□□深く其の化を授け、以て終始を序し、去事を追治し、以て来世を正す。紀図録を按じ、以て性命を知り、六芸を表定し、以て儒術を重んず。善悪は相い干さず、貴賤は相い侮らず、強弱は相い凌がず、賢と不肖とは相い踰ゆるを得ず、科第相い序し、万□□□を為して絶えず、功は伝わりて衰えず。詩・書・礼・楽、其の所を得たるは、乃ち天道の立つ所、大義の行わるる所なり。豈に□□□威を以てせんや。
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