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史記 / 扁鵲倉公列伝

有一熊欲援我,帝命我射之,中熊,熊死。有羆來,我又射之,中羆,羆死。帝甚喜,賜我二笥,皆有副。吾見兒在帝側,帝屬我一翟犬,曰:『及而子之壯也以賜之。』帝告我:『晉國且世衰,七世而亡。嬴姓將大敗周人於范魁之西,而亦不能有也。』」董安于受言,書而藏之。以扁鵲言告簡子,簡子賜扁鵲田四萬畝。

新字:有一熊欲援我,帝命我射之,中熊,熊死。有羆来,我又射之,中羆,羆死。帝甚喜,賜我二笥,皆有副。吾見児在帝側,帝属我一翟犬,曰:『及而子之壮也以賜之。』帝告我:『晋国且世衰,七世而亡。嬴姓将大敗周人於范魁之西,而亦不能有也。』」董安于受言,書而蔵之。以扁鵲言告簡子,簡子賜扁鵲田四万畝。

書き下し

一熊有りて我を援かんと欲す。帝我に命じて之を射しむ。熊に中り、熊死す。羆有りて来る。我又之を射る。羆に中り、羆死す。帝甚だ喜び、我に二笥を賜ふ。皆副有り。吾児の帝の側に在るを見る。帝我に一翟犬を属して曰く、『而の子の壮なるに及びて以て之に賜へ』と。帝我に告ぐ、『晋国且に世々衰へ、七世にして亡びんとす。嬴姓将に大いに周人を范魁の西に敗らんとするも、而も亦有つ能はざるなり』と」と。董安于言を受け、書して之を蔵す。扁鵲の言を以て簡子に告ぐ。簡子扁鵲に田四万畝を賜ふ。

現代語訳

(簡子は続けた。)「一頭の熊がわたしにつかみかかろうとした。天帝がわたしにこれを射よと命じたので、射ると熊に命中し、熊は死んだ。次にひぐまがやって来たので、わたしはまたこれを射た。ひぐまに命中し、ひぐまは死んだ。天帝はたいへん喜び、わたしに二つの竹箱を下さった。どちらにも副えの箱がついていた。わたしは一人の子どもが天帝のそばにいるのを見た。天帝はわたしに一匹の翟犬(異民族の犬)を託して、『おまえの子が壮年になったら、これを与えよ』と言った。天帝はさらにわたしに告げた。『晋国は代々衰え、七代で滅びるであろう。嬴姓の者(趙氏)が范魁の西で周の人々を大いに破るが、それも保ち続けることはできない』と」。董安于はその言葉を受けて書き記し、しまっておいた。扁鵲の言っていたことを簡子に告げると、簡子は扁鵲に田四万畝を与えた。

解説

趙簡子が昏睡から目覚めて語った夢の続きと、その後の扁鵲への褒賞です。熊とひぐまを射止め、天帝から竹箱と犬を授かり、晋が七代で滅びるという予言を聞いたという内容は、趙世家にもほぼ同じ話が載っており、後に趙氏が晋を分けて自立する歴史を暗示するものとして語られています。熊と羆は晋の有力な卿の家を、天帝のそばの子は後の趙襄子を指すと解する伝統的な読み方もあります。扁鵲伝としての要点は、扁鵲が「三日以内に目覚め、必ず何かを語る」と的中させたことにあり、簡子はその見立てに田四万畝という破格の褒美で報いました。医者の力は病を治すことだけでなく、周囲が恐れ惑うときに冷静に見通しを示し、人々を落ち着かせることにもあったのです。危機の場面では、正確な見立てを落ち着いて伝える人の存在が、組織全体を支えます。

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