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潜夫論 / 邊議

明於禍福之實者,不可以虛論惑也;察於治亂之情者,不可以華飾移也。是故不疑之事,聖人不謀;浮遊之說,聖人不聽。何者?計不背是實而更爭言也。是以明君先盡人情,不獨委夫良將。修己之備,無恃於人,故能攻必勝敵,而守必自全也。羌始反時,計謀未善,黨與未成,人眾未合,兵器未備。或持竹木枝,或空手相附,草食散亂,未有都督,甚易破也。然太守令長,皆奴怯畏偄不敢擊,故令虜遂乘勝上強,破州滅郡,日長炎炎。殘破三輔,覃及鬼方,若此已積十歲矣。百姓被害,訖今不止,而癡兒呆子,尚雲不當救助,且待天時。用意若此,豈人也哉?

新字:明於禍福之実者,不可以虚論惑也;察於治乱之情者,不可以華飾移也。是故不疑之事,聖人不謀;浮遊之説,聖人不聴。何者?計不背是実而更争言也。是以明君先尽人情,不独委夫良将。修己之備,無恃於人,故能攻必勝敵,而守必自全也。羌始反時,計謀未善,党与未成,人衆未合,兵器未備。或持竹木枝,或空手相附,草食散乱,未有都督,甚易破也。然太守令長,皆奴怯畏偄不敢撃,故令虜遂乗勝上強,破州滅郡,日長炎炎。残破三輔,覃及鬼方,若此已積十歳矣。百姓被害,訖今不止,而痴児呆子,尚雲不当救助,且待天時。用意若此,豈人也哉?

書き下し

禍福の実に明らかなる者は、虚論を以て惑わすべからず。治乱の情を察する者は、華飾を以て移すべからず。是の故に疑わざるの事は、聖人謀らず。浮遊の説は、聖人聴かず。何となれば、計は是の実に背かずして更ごも争い言うなり。是を以て明君は先ず人情を尽くし、独り夫の良将に委ねず。己の備えを修め、人に恃む無し、故に能く攻むれば必ず敵に勝ち、守れば必ず自ら全うす。羌の始め反せし時、計謀未だ善からず、党与未だ成らず、人衆未だ合わず、兵器未だ備わらず。或いは竹木の枝を持ち、或いは空手にて相い附き、草食散乱し、未だ都督有らず、甚だ破り易きなり。然れども太守令長、皆奴怯畏偄にして敢えて撃たず、故に虜をして遂に勝ちに乗じ上強ならしめ、州を破り郡を滅ぼし、日に炎炎たるを長ぜしむ。三輔を残破し、覃びて鬼方に及び、此くの若くして已に積むこと十歳なり。百姓の害を被ること、今に訖るまで止まず、而るに癡兒呆子は、尚お当に救助すべからず、且く天の時を待たんと云う。意を用うること此の若し、豈に人ならんや。

現代語訳

禍福の実情をはっきり見抜いている者は、空虚な議論に惑わされません。治乱の実情を察している者は、飾り立てた言葉に動かされません。だから、疑う余地のない事柄は聖人も相談せず、根拠のない浮わついた説は聖人も聞き入れません。なぜなら、計画というものは真実に背かないうえで、互いに論じ争うものだからです。そのため明君は、まず人情を尽くし、将軍だけに任せきりにはしません。自らの備えを整え、他人を当てにしないので、攻めれば必ず敵に勝ち、守れば必ず自らを保てます。羌が最初に反した時は、計画も整わず、仲間も集まらず、人数もまとまらず、武器もそろっていませんでした。竹や木の枝を持つ者もあれば、素手で付き従う者もあり、草を食べて散り散りで、まだ指揮官もおらず、たやすく破れる状態でした。しかし太守や県令たちは皆、臆病で怯え、あえて撃たなかったので、賊に勝ちに乗じて勢いを強めさせ、州を破り郡を滅ぼし、日に日に炎のように燃え広がらせてしまいました。三輔を荒らし、その被害は鬼方にまで及び、すでに十年が積み重なっています。民の被害は今に至るまで止まず、それなのに愚か者たちは、なお救助すべきでなく、しばらく天の時を待てと言います。このような考えで、人と言えるでしょうか。

解説

この篇では、辺境の事態を論じる者に対し、虚論や飾った言葉に惑わされず実情を見よと説きます。王符は、羌の反乱の初めには、武器も指揮官もなく容易に破れる状態だったのに、臆病な太守や県令が撃たなかったために、勢いを許したと断じます。そして十年経った今も、天の時を待てと言って動かない者を厳しく批判します。ここでの教訓は、初期の脆弱な段階で手を打つことの価値と、他人任せにせず自らの備えを整えることの大切さです。現代の組織でも、小さなうちに潰せたトラブルを現場が恐れて放置し、大問題に育つことがあります。上に立つ者は、実情に基づく判断を促す雰囲気を作るべきでしょう。

この章句が説くこと

辺議実情初動備え臆病潜夫論

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