潜夫論 / 救邊
會坐朝堂,則無憂國哀民懇惻之誠。苟轉相顧望,莫肯違止,日晏時移,議無所定,己且須後。後得小安,則恬然棄忘。旬時之間,虜複為害,軍書交馳,羽檄狎至,乃複怔忪如前。若此以來,出入九載,庶曰式臧,覆出為惡,佪佪潰潰,當何終極?春秋譏「鄭棄其師」,況棄人乎?一人籲嗟,王道為虧;況百萬之眾,號哭泣,鹹天心乎?
新字:会坐朝堂,則無憂国哀民懇惻之誠。苟転相顧望,莫肯違止,日晏時移,議無所定,己且須後。後得小安,則恬然棄忘。旬時之間,虜複為害,軍書交馳,羽檄狎至,乃複怔忪如前。若此以来,出入九載,庶曰式臧,覆出為悪,佪佪潰潰,当何終極?春秋譏「鄭棄其師」,況棄人乎?一人籲嗟,王道為虧;況百万之衆,号哭泣,鹹天心乎?
書き下し
会して朝堂に坐すれば、則ち国を憂い民を哀れむ懇惻の誠無し。苟くも転た相い顧望し、肯えて違め止むる莫く、日晏れ時移り、議定まる所無く、己は且つ後を須つ。後に小しく安きを得れば、則ち恬然として棄忘す。旬時の間に、虜復た害を為し、軍書交ごも馳せ、羽檄狎りに至れば、乃ち復た怔忪すること前の如し。此くの若くして以来、出入九載、庶わくは式て臧からんと曰うに、覆って出でて悪を為し、佪佪潰潰として、当に何ぞ終極あらん。春秋は「鄭、其の師を棄つ」を譏る、況んや人を棄つるをや。一人籲嗟すれば、王道為に虧く。況んや百万の衆、号哭泣して、鹹く天心を感ぜしむるをや。
現代語訳
朝堂に集まって座っても、国を憂い民を哀れむ誠実で痛切な思いがありません。ただ互いに顔色をうかがい、誰も止めようとせず、日が暮れ時が過ぎても議論は決まらず、自分は後の様子を待つばかりです。その後で少しでも安らぎが得られると、平然と忘れてしまいます。ほどなくして賊がまた害をなし、軍の書状が行き交い、急を告げる羽檄が頻繁に届くと、そこでまた前と同じように慌てふためくのです。こうして九年が過ぎました。「今度こそ良くなれ」と願っても、かえって悪い方へ出て、乱れ崩れて、いつ終わるのでしょうか。『春秋』は「鄭がその軍を捨てた」ことを非難しました。まして人を捨てるのはなおさらです。ひとりが嘆き悲しめば、王道はそのために欠けます。まして百万の民が泣き叫べば、天の心に届かないはずがありません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『童子問』卷中問ふ。文帝は百金の費を惜しみて、敢へて露台を作らず。而るに文王は則ち台を為り沼を為る者は、何ぞや。曰く、先王の城を築き門を造り、台榭苑囿の類を創むるは、一は以て国の為にし、一は以て民の為にす。其の国の為にする者も亦民の為なるのみ。徒に遊観の為に敢へて興作するに非ざるなり。魯人長府を為る。閔子騫曰く、旧貫に仍らば之を如何。何ぞ必ずしも改め作らん、と。春秋に一土木の興りも必ず書する者は、民力を重んずればなり。夫れ広堂大厦は、倉廩の積に起こる。倉廩の積は、民の耒耜に出づ。耒耜の微、積みて斗升の粟と為る。斗升の粟、積みて倉廩に充つ。倉廩の積、溢れて広堂大厦と為る。人皆広堂大厦の成るは倉廩に起こることを知りて、本耒耜の微に出づることを知らざるなり。聶夷中の詩に曰く、禾を鋤きて日午に当たる、汗は滴る禾下の土。誰か識らん盤中の餐、粒粒皆辛苦なるを、と。其の国の為民の為に非ずして、漫りに興作する者は、邦本を固むる所以を知らざるなり。夫の文王の台沼を為るがごときは、民と楽しみを同じくするの至りにして、庶民子のごとく来たり、日ならずして之を成す。槩して之を論ずべからざるなり。
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『呻吟語』外篇・治道・惟だ邱民のみ收拾し難し無事の時は惟だ邱民のみ蹂踐し好し。吏卒より以上、人人得て之を魚肉す。有事の時は惟だ邱民のみ收拾し難し。天子と雖も亦た躲避する處無し。何ぞ況んや衣冠をや。此れ詩を誦し書を讀む者と道ひ難きなり。
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『正法眼蔵随聞記』巻三有る夜示して云く、唐の太宗即位の後、故殿に栖み給へり、破損せる故に、湿気あがり、風霧冷かにして、玉体おかされつべし、臣下等造作すへき由を奏しければ、帝の言く、時き農節なり、民定めて愁ひあるべし、秋を待て造るべし、湿気に侵さるは地にうけられず、風雨に侵さるは天に合はざるなり、天地に背かば身あるべからず、民を煩はさずんば自ら天地に合ふべし、天地に合はゝ身を侵すべからず、と云ふて終に新宮を作らず、故殿に栖み給へり、
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『君子訓』巻之下一秦始皇の子二世皇帝の曰、凡天下を有つを貴しとするは、唯意を恣にし、慾を極めて楽む故なり。下を治むるには、唯法度を厳しくして下を制すれば、民上を犯さずして乱起らずと言へり。是秦の天下を失へるゆゑんなり。秦より以下、天下を治むること能はずして、天下を失ひ、身を亡ぼせる人多きは、皆此ゆゑなり。天下を有ちては、唯善を行ひて、広く民を憐み恵みて、万民各其所を得るを以て、楽とすべし。
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『都鄙問答』卷之一・武士ノ道ヲ問ノ段露塵ほども我が身を顧みざるは、臣の道なり。常に手足が口に使はるると、我が身の君に事ふると、違ふことあらば、此は不忠なりと知るべし。此を法とせば、何国にて仕ふるとも、臣の道を離るることあるべからず。扨て臣は政に従ふものなり。下を使ふは、君の道を以て治むべし。古聖人の御代には、君としては万民を子の如く思し召し、民の心を以て、御心となし玉ふ。伝に云ふ、民の好む所は之を好み、民の悪む所は之を悪む、此を之れ民の父母と謂ふ。此のゆへに、聖人は世を没し玉へども、民思ひ慕ひてわすれずと云へり。此の味を知るべし。忠義の臣は名を後世に残し、天下の人これを愛す。礼に曰く、士四十にして志強く立ち、利害に奪はれず、禍福に怵れずんば、以て出で仕ふべし、と見えたり。士の道は、先づ心を知りて志を定むべし。孟子曰く、志を尚くす。
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『呻吟語』外篇・治道・民と安の二つ天下を取り、天下を守るは、只だ一種の人の上に意念を加へ、一個の字の上に工夫を做すに在り。一種の人は是れ那個ぞ。曰く民。一個の字は是れ甚麼ぞ。曰く安。
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