潜夫論 / 斷訟
永平時,諸侯負責,輒有削絀之罰。此其後皆不敢負民,而世自節儉,辭訟自消矣。今諸侯貴戚,或曰赦民慎行,德義無違,製節謹度,未嘗負責,身潔規避,誌厲青雲。或既欺負百姓,上書封祖,願且償責,此乃殘掠官民,而還依縣官也,其誣罔慢易,罪莫大焉。《孝經》曰:「陳之以德義而民興行,示之以好惡而民知禁。」今欲變巧偽以崇美化,息辭訟以閑官事者,莫若表顯有行,痛誅無狀,導文武之法,明詭詐之信。今侯王貴戚,不得浸廣,奸宄遂多,豈謂每有爭鬥辭訟,婦女必致此乎?亦以傳見,凡諸禍根不早斷絕,則或轉而滋蔓,人若斯邪?是故原官察之所以務念,臣主之所以憂勞者,其本皆鄉亭之所治者,太半詐欺之所生也。故曰:知其原少則奸易塞也,見其守約則政易持也。或婦人之行,貴令鮮潔。
新字:永平時,諸侯負責,輒有削絀之罰。此其後皆不敢負民,而世自節倹,辞訟自消矣。今諸侯貴戚,或曰赦民慎行,徳義無違,製節謹度,未嘗負責,身潔規避,誌厲青雲。或既欺負百姓,上書封祖,願且償責,此乃残掠官民,而還依県官也,其誣罔慢易,罪莫大焉。《孝経》曰:「陳之以徳義而民興行,示之以好悪而民知禁。」今欲変巧偽以崇美化,息辞訟以閑官事者,莫若表顕有行,痛誅無状,導文武之法,明詭詐之信。今侯王貴戚,不得浸広,奸宄遂多,豈謂毎有争鬥辞訟,婦女必致此乎?亦以伝見,凡諸禍根不早断絶,則或転而滋蔓,人若斯邪?是故原官察之所以務念,臣主之所以憂労者,其本皆郷亭之所治者,太半詐欺之所生也。故曰:知其原少則奸易塞也,見其守約則政易持也。或婦人之行,貴令鮮潔。
書き下し
永平の時、諸侯責を負えば、輒ち削絀の罰有り。此れ其の後は皆な敢えて民に負かず、而して世は自ら節倹に、辞訟は自ずから消ゆ。今諸侯貴戚、或いは曰く赦民慎行、徳義違う無く、節を製し度を謹み、未だ嘗て責を負わず、身を潔くして規避し、志は青雲を厲ますと。或いは既に百姓を欺き負いて、上書して祖を封ぜられ、願わくは且く責を償わんと、此れ乃ち官民を残掠して、還って県官に依る者にして、其の誣罔慢易、罪は大なるは莫し。孝経に曰く、「之に陳ぶるに徳義を以てして民興り行い、之に示すに好悪を以てして民禁を知る」と。今巧偽を変じて以て美化を崇び、辞訟を息めて以て官事を閑にせんと欲せば、有行を表顕し、無状を痛誅し、文武の法を導き、詭詐の信を明らかにするに若くは莫し。今侯王貴戚、浸く広きを得ず、奸宄遂に多し、豈に謂わんや争闘辞訟有る毎に、婦女必ず此に致すかと。亦た以て伝見す、凡そ諸の禍根早く断絶せざれば、則ち或いは転じて滋蔓す、人斯くの若きか。是の故に官を原ね察するの務めて念う所以、臣主の憂労する所以は、其の本は皆な郷亭の治むる所の者、太半は詐欺の生ずる所なり。故に曰く、其の原の少なきを知れば則ち奸は塞ぎ易く、其の守の約なるを見れば則ち政は持し易しと。或いは婦人の行いは、令鮮潔を貴ぶ。
現代語訳
永平の頃は、諸侯が借金を負えば、すぐに領地を削る罰がありました。その後は誰も民に借りを作らなくなり、世は自然と節倹になり、訴訟もひとりでに消えました。今の諸侯や貴戚には、民を教化して行いを慎み、徳義に背かず、節度を保って借金をしたことがなく、身を清くして不正を避け、志は青雲を励ますと言う者がいます。一方では、すでに百姓を欺いて借りを負いながら、上書して祖先を封ぜられ、「しばらく借りを返したい」と願い出る者もいます。これは官民から奪い取っておきながら、かえって県官に頼るものであり、その偽りと不遜の罪にまさるものはありません。『孝経』に「徳義を並べて示せば民は奮い立って行い、好悪を示せば民は禁を知る」とあります。今、巧みな偽りを改めて美しい教化を尊び、訴訟を鎮めて官の仕事を静かにしたいなら、行いのある者を表彰し、無状の者を厳しく罰し、文武の法を導き、偽りに対する信を明らかにするのが一番です。今、侯王や貴戚は次第に広がりを得ず、悪事はついに多くなっています。争いや訴訟があるたびに、婦女が必ずここに至るというのでしょうか。また伝えられるところでは、あらゆる禍の根を早く断たなければ、転じて蔓延するといいます。人もこのようなものでしょうか。だから官を調べ察して努めて思うこと、君臣が憂え働くことの根本は、すべて郷や亭が治める事柄にあり、その大半は詐欺から生じるものです。そこで、源の少ないことを知れば悪事はふさぎやすく、要点が簡約だと見れば政は保ちやすい、と言うのです。あるいは婦人の行いは、よく清らかなことを貴ぶ。
解説
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『潜夫論』斷訟舜は龍に敕するに讒説の行を殄ち、朕が師を震驚するを以てす。乃ち上古より之を患えり。故に先ず己の唯舌を慎み、以て元く民に示す。孔子曰く、「乱の生ずる所や、則ち言語以て階と為す」と。小人は不仁を恥じず、不義を畏れず、脈脈規規として、常に奸唯を懐き、前利を昧冒して、廉恥を顧みず。苟且中、後には榆解奴抵、以て禍変を致す者は、比屋是れなり。唯だ細民のみ然りと為すに非ず、自ら封ぜられし王侯貴戚豪富、尤も多く之有り。驕奢を仮挙して以て淫侈を作し、高く千万を負いて償責を肯んぜず、小民門を守り号哭啼呼するも、曾て怵惕慚怍哀矜の意無し。苟くも酒徒無行の人を崇聚し、空を伝え満を引き、啁啾罵詈し、昼夜鄂鄂として、慢遊を是れ好む。或いは責むる主人を毆撃して死亡に至らしめ、群盗攻剽して、人を劫かすこと異なる無し。赦贖に会うと雖も、当に複た選辟の科に在るを得べからず、而るに州司公府、反って争いて之を取る。且つ観るに諸そ敢えて妄りに驕奢して大責を作す者は、必ず饑寒を救いて困急を解き、貧窮を振いて礼義を行う者に非ざるなり。咸な驕奢を崇び淫湎を奉ずるのみ。春秋の義、責知誅率。孝文皇帝は至って寡欲動じて徳に任ず、然れども河陽侯陳信は六日を負うに坐して国を免ぜらる。
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『潜夫論』斷訟今以に適きて、顔無く複た甲の門に入る、県官之を原し、故に令して既に入れる家に留まらしむ。必ず未だ乱の本原を昭らかにせず、貞潔の生ずる所の者の言を惟わざるなり。貞女は二心して以て数しば変ぜず、故に匪石の詩有り。行いを枉げて以て憂いを遺さず、故に帰寧の志を美す。一たび許して改めざるは、蓋し貞潔を長じ父兄を寧んずる所以なり。其の此に循わずして其の徳を二三にする者は、此れ本より廉恥無きの家、貞専ならざるの所なり。然る人の若きは、又た何の醜吝せん。父兄を軽薄にし、婦女を淫僻にし、義理を惟わず、苟くも一徳を疏にし、本を借りて生を治め、逃亡して中に抵り、卒に以て刳腹芟頸滅宗の禍を致す者は、何れの所にか無からん。先王は人情の喜怒の能く已む所の者に因りて、則ち之が為に礼製を立てて徳譲を崇び、人の已む可き所の者は、則ち之が為に法禁を設けて賞罰を明らかにす。今市売に相欺く勿れ、婚姻に相詐る無かれとは、人情の能くす可からざる所に非ざるなり。是の故に義を立て法に順い、其の原を遏絶するに若かず。初めは一人に慚吝すと雖も、其の終わりや長く万世に利あり。小しく懲らして大いに戒む、此れ小を全うして頑凶を済う所以なり。
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『潜夫論』斷訟五代は礼を同じくせず、三家は教えを同じくせず。其の苟くも相反するに非ず、蓋し世推移して俗化異なればなり。俗化異なれば則ち乱の原殊なり、故に三家世に符して、皆な定法を革む。高祖は三章の約を製し、孝文は克膚の刑を除く。是の故に殺傷盗贓に非ざるより、文罪の法は、軽重常無く、各おの時宜に随い、要は用を足し善を勧め悪を消すを取るのみ。夫れ法を製するの意は、藩籬溝塹を為して、以て防ぐ有るが若し。禽獣の尤も数しば犯す可き者を択びて、深厚を加う。今奸宄は衆しと雖も、然れども其の原は少なし。君事は繁しと雖も、然れども其の守は約なり。其の原の少なきを知れば、奸は塞ぎ易く、其の守の約なるを見れば、政は治め易し。其の原を塞げば則ち奸宄絶え、其の術を施せば則ち遠近治まる。今一歳に獄を断ずること万を以て計うと雖も、然れども辞訟の弁、闘賊の発、郷部の治、獄官の治むる者、其の状は一なり。本は皆な民の誠信ならずして数しば相欺紿するに起こる。
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『潜夫論』德化故に曰く、「訟を聴くは吾猶お人のごときなり。必ずや訟無からしめんか」と。之を導くに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てし、務めて其の情を厚くし、而して明らかなれば則ち義に務め、民親愛すれば、則ち相い害傷するの意無く、動いて義を思えば、則ち奸邪の心無し。夫れ此くの若き者は、律の使う所に非ず、威刑の強うる所に非ず。此れ乃ち教化の致す所なり。国に聡を傷つくるの政有れば、則ち民に身を病む者多く、賢を傷つくるの政有れば、則ち賢に横夭する者多し。夫れ形体骨幹は堅強たるも、然れども猶お政に随いて変易す。又況んや心気精微にして養わざるべけんや。
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『潜夫論』斷訟夫れ法を立つるの大要は、必ず善人をして其の徳を勧みて其の政を楽しましめ、邪人をして其の禍を痛みて其の行いを悔いしむ。諸の一女数家に許さば、十子を生むと雖も、百赦を更ると雖も、一たびも私家に還るを蒙らしむる勿くんば、則ち此の奸は絶えん。不ずんば則ち其の夫妻を髡し、千里の外の劇県に徙さば、乃ち以て其の心を毒して其の後を絶つ可く、奸乱絶えて則ち太平興らん。又た貞潔の寡婦、或いは男女備わり、財貨富饒にして、一醮の礼を守り、同冗の義を成さんと欲し、節を執ること堅固にして、斉懐必死、終に更に許すの慮い無し。不仁の世叔、無義の兄弟に遭値し、或いは其の娉幣を利し、或いは其の財賄を貪り、或いは其の児子を私し、則ち強中して欺き嫁がせ、迫脅して遣送す。人の房中に自ら縊り、車上に薬を飲み、命を絶ち躯を喪い、孤を捐つる童孩有り。此れ猶お人の命を迫脅して自殺せしむるがごとし。或いは後夫多く人客を設け、威力もて脅して載せ、守将抱執し、日を連ねて乃ち綬く、強いて人を掠めて妻と為すと異なる無し。婦人は軟弱にして、猥りに衆強の扶与執迫する所と為り、幽磘すること日を連ね、後に複た本志を修めんと欲すと雖も、絹を嬰い薬を呑む(下に缺文有り)。
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