潜夫論 / 浮侈
或至刻金鏤玉,檽梓楩楠,良田造塋,黃壤致藏,多埋珍寶偶人車馬,造起大塚,廣種松柏,廬舍祠堂,崇侈上僭。寵臣貴戚,州郡世家,每有喪葬,都官屬縣,各當遣吏齎奉,車馬帷帳,貸假待客之具,競為華觀。此無益於奉終,無增於孝行,但作煩攪擾,傷害吏民。
新字:或至刻金鏤玉,檽梓楩楠,良田造塋,黄壤致蔵,多埋珍宝偶人車馬,造起大塚,広種松柏,廬舎祠堂,崇侈上僭。寵臣貴戚,州郡世家,毎有喪葬,都官属県,各当遣吏齎奉,車馬帷帳,貸仮待客之具,競為華観。此無益於奉終,無增於孝行,但作煩攪擾,傷害吏民。
書き下し
或いは金を刻み玉を鏤め、檽梓楩楠、良田に塋を造り、黄壌に蔵を致すに至り、多く珍宝偶人車馬を埋め、大塚を造起し、広く松柏を種え、廬舎祠堂、崇侈して上を僭す。寵臣貴戚、州郡の世家、喪葬有る毎に、都官属県、各々当に吏を遣わして齎奉すべく、車馬帷帳、貸仮して客を待つの具とし、競いて華観を為す。此れ終を奉ずるに益無く、孝行に増す無く、但だ煩を作し擾を攪し、吏民を傷害するのみ。
現代語訳
金や玉を彫り刻み、檽梓や楩楠の材を使い、良田に墓所を造り、黄土に納める。珍宝や人形、車馬を数多く埋め、大きな塚を築き、松や柏を広く植え、屋敷や祠堂を壮大にして、上を僭する者さえいます。寵臣や貴戚、州郡の名家に葬儀があるたびに、都の役所や属県は、それぞれ役人を遣わして供え物を届けなければならず、車馬や帷帳などは貸し出されて客をもてなす道具となり、競って華やかな見ものとなります。これは亡き人を送るのに何の益もなく、孝行を増すこともなく、ただ煩わしさを生んで騒ぎを起こし、官吏と民を害するだけです。
解説
前段までの棺と墓の贅沢を受けて、王符は埋葬品や墓所の造営、祠堂の壮麗さを具体的に挙げます。権勢家の葬儀のたびに、周辺の役所や吏民が供応や出役に駆り出され、負担を強いられる点を強調しています。ここでの批判は、華美であること以上に、その費用と労力が他人に転嫁されるところにあります。現代の組織にも、上層の儀式や行事のために部下が準備や接待に動員され、本来の業務が滞る場面があります。行事の価値を、参加者以外が負う負担と合わせて測ることが、管理職には重要です。
この章句が説くこと
浮侈厚葬負担役人孝行潜夫論
関連する章句
-
『潜夫論』浮侈古は必ず命民有り、然る後に乃ち繒彩を衣て車馬に乗るを得たり。今は既に尽くは古に復する能わざるも、細民は誠に須いざるべし、乃ち古昔の孝子を逾ゆ。衣は必ず細致、履は必ず獐麂、組は必ず文采、襪を飾るに必ず鋋此、車馬を校飾し、奴婢を多く畜う。諸もろ此くの若くなる能う者は、既に穀を生ぜず、又た坐して蠧賊と為るなり。子曰く、「古の葬る者は、厚く之に衣するに薪を以てし、之を中野に葬り、封せず樹えず、喪期に時無し、後世の聖人之を易うるに棺槨を以てす」と。桐木もて棺と為し、葛采もて緘と為し、下は泉に及ばず、上は臭を泄らさず。後世は楸梓槐柏狖霡を以て、各々方土の出す所を取り、膠漆分かち致し、釘細く要は削り除き鏟り靡し、際会を見ず、其の堅きは恃むに足り、其の用は任ずるに足る、此くの如くにして可なり。其の後京師の貴戚は、必ず江南の檽梓豫章楩楠を欲し、辺遠の下土も、亦た競いて相い仿効す。
-
『潜夫論』浮侈夫れ檽梓豫章の出づる所は殊に遠く、又た乃ち深山窮谷に生じ、山岑を経歴し、千歩の高き、百丈の溪に立ち、傾倚険阻、崎嶇として便ならず、之を求むること連日にして、然る後に之を見る。伐斫すること連月にして、然る後に訖り、衆を会して然る後に能く担を動かし、牛列して然る後に能く水に致す。油潰して海に入り、淮を連ね河を逆り、行くこと数千里にして、然る後に雒に到る。工匠の雕治は、日月を積累し、一棺の成るを計るに、功は将に千万ならんとす。夫れ既に其の終用は、重きこと且つ万斤、大衆に非ざれば挙ぐる能わず、大車に非ざれば挽く能わず。東は楽浪に至り、西は敦煌に至る、万里の中、競いて相い之を用う。此の費功傷農、痛心すべし。古は墓して崇からず。仲尼母を喪い、塚の高さ四尺、雨に遇いて墮つ、弟子之を治めんと請う、夫子泣きて曰く、「礼は墓を修めず」と。鯉死して棺有りて槨無し。文帝は芒碭に葬られ、明帝は洛南に葬られ、皆な珠宝を蔵せず、廟を造らず、山陵を起こさず。陵墓は卑しと雖も聖は高し。今京師の貴戚、郡県の豪家は、生きては養を極めず、死して乃ち喪を崇くす。
-
『潜夫論』浮侈今、枿畢の郊、文武の陵、南城の塁、曾皙の塚を按ずるに、周公は忠ならざるに非ず、曾子は孝ならざるに非ず。以為らく、君を褒め父を顕すは、財を聚むるに在らず、名を揚げ祖を顕すは、車馬に在らず、と。孔子曰く、「貨財多ければ徳を傷り、弊るれば則ち礼を没す」と。晋の霊は賦を厚くして以て牆を雕り、春秋は以て君に非ずと為す。華元・楽呂は文公を厚葬し、春秋は以て臣ならずと為す。況んや群司士庶、乃ち主上を僭侈し、天道に過ぐべけんや。景帝の時、原侯衛不害は葬の律に過ぐるに坐して国を奪われ、明帝の時、桑民摐陽侯は塚の製に過ぐるに坐して髡削せらる。今天下は浮侈して本を離れ、僭奢して上に過ぐ、亦た已に甚だし。凡そ諸もろの譏る所、皆な民の性に非ず、而して競い務むる者は、乱政薄化の之をして然らしむるなり。王者は世を統べ民を観て教えを設け、乃ち能く風を変え俗を易え、以て太平を致す。
-
『潜夫論』浮侈此れ等の儔は、既に農工女を助長せず、世に益有ること無くして、坐して嘉穀を食らい、白日を消費し、成功を毀敗し、見るを以て破と為し、牢きを以て行くと為し、大なるを以て小と為し、易きを以て難と為す、皆な禁ずべき者なり。山林も野火に給する能わず、江海も漏卮に灌ぐ能わず。孝文皇帝は躬ら弋綈を衣、足は革寫を履み、韋を以て剣を帯び、上書の囊を集めて、以て殿の帷と為す。盛夏の苦暑にも、一台を起こさんと欲し、直を計るに百万、以て奢費と為して作らず。今京師の貴戚は、衣服飲食、車輿の文飾、廬舎、皆な王制に過ぎ、上を僭すること甚し。従奴仆妾も、皆な葛子升越、筒中の女布、細致の綺縠、水紈錦繡、犀象珠玉、琥珀玳瑁、石山隠飾、金銀錯鏤、獐麂の履寫、文組彩禖を服し、驕奢して主を僭し、転た相い誇詫す。箕子の晞う所、今は仆妾に在り。富貴の嫁娶には、車軿各々十、騎奴侍僮、轂を夾みて節引す。富める者は競いて相い過ぎんと欲し、貧しき者は及ばざるを恥ず。是の故に一饗の費やす所、終身の本業を破る。
-
呂氏春秋・節喪④民の利に於けるや、流矢を犯し、白刃を蹈み、血を渉り肝を抽き、以て之を求む。野人の聞くこと無き者は、親戚・兄弟・知交に忍んで以て利を求む。今此の危き無く、此の醜無くして、其の利為るは甚だ厚く、車に乘り肉を食らい、澤は子孫に及べば、聖人と雖も猶ほ禁ずること能わず、而るを況んや亂國に於いてをや。國彌々大に、家彌々富めば、葬彌々厚く、含珠鱗施・玩好貨寶・鍾鼎壺濫・轝馬衣被戈劍、其れ數うるに勝う可からず。諸々の生を養うの具、從えざる者無く、題湊の室、棺槨數襲、積石積炭、以て其の外を環らす。姦人之を聞き、傳えて以て相告ぐ。上以て威を嚴にし罪を重くして、之を禁ずと雖も、猶は止む可からず。且つ死者彌々久しくなれば、生者彌々疏し。生者彌々疏ければ、則ち守る者彌々怠る。守る者彌々怠りて、葬器故の如くなれば、其の勢い固より安からず。世俗の喪を行うに、之を載するに大輴を以てし、羽旄旌旗雲の如く、僂翣以て之を督し、珠玉以て之に備え、黼黻文章以て之を飭り、紼を引く者左右萬人、以て之を行い、軍制を以て之を立て、然る後に可なり。此を以て世に觀せば、則ち美なり侈なり。此を以て死の為にすれば、則ち不可なり。苟しくも死に便ならば、則ち國を貧しくし民を勞すと雖も、若の慈親孝子なる者の為すを辭せざる所なり。
-
『潜夫論』浮侈女や婆娑たり、今多く中饋を修めず、其の蚕織を休め、而して起ちて巫祝を学び、鼓舞して神に事え、以て細民を欺誣し、百姓を熒惑す。婦女の羸弱、疾病の家は、憂いを懐きて憒憒たり、皆な恐懼し易く、奔走して時に便にし、正宅を去離し、路側に崎嶇として、上は漏れ下は湿り、風寒に傷られ、奸人の利する所、賊盗の中る所と為るに至らしむ。禍を益し崇を益し、以て重きを致す者、勝げて数うべからず。或いは医薬を棄て、更に往きて神に事え、故に死亡に至る。自ら巫の欺誤する所と為るを知らず、乃ち反って巫に事うるの晩きを恨む、此れ細民を熒惑するの甚だしき者なり。或いは好き繒を裁ち、疏頭を作為し、工をして采画せしめ、人を雇いて祝を書せしめ、虚飾の巧言もて、多福を邀えんと欲す。或いは繒彩を裂き拆き、裁ること広さ数分、長さ各々五寸、縫繪して之を佩ぶ。或いは彩糸を紡ぎて縻ぎ、断截して以て臂に繞らす、此れ長く吉凶に益無くして、空しく繒糸を残滅し、小民を縈悸し、綺縠を剋削し、寸ごとに八采を竊み、以て楡葉の窮まり無きを成す。水波の文、砕刺縫紩し、詐りて笥囊と為し、裙䙏衣被とし、繒百縑を費やし、功を用いること十倍す。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る