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政談 / 諸役人閑暇にして政務に工夫を用ひ身を踏込むべき事

是皆人々御用多きことを好む故、醫者も毎日御藥を上げ、御用の絕えぬを喜ぶ心あり、上たる人に勸めて世の風を斯くの如く仕なしたるなり、今の世の人の生れ弱く、大名ほど弱きは斯の如くなる風俗にて醫者の仕なしたることなり、醫者も平生に箇樣にして、肝心のときは逃ぐるを第一とす、皆何もかも役儀を身に踏込まぬ事に成りたり、

新字:是皆人々御用多きことを好む故、医者も毎日御薬を上げ、御用の絶えぬを喜ぶ心あり、上たる人に勧めて世の風を斯くの如く仕なしたるなり、今の世の人の生れ弱く、大名ほど弱きは斯の如くなる風俗にて医者の仕なしたることなり、医者も平生に箇様にして、肝心のときは逃ぐるを第一とす、皆何もかも役儀を身に踏込まぬ事に成りたり、

書き下し

是皆人々御用多きことを好む故、医者も毎日御薬を上げ、御用の絶えぬを喜ぶ心あり、上たる人に勧めて世の風を斯くの如く仕なしたるなり、今の世の人の生れ弱く、大名ほど弱きは斯の如くなる風俗にて医者の仕なしたることなり、医者も平生に箇様にして、肝心のときは逃ぐるを第一とす、皆何もかも役儀を身に踏込まぬ事に成りたり、

現代語訳

これは皆、人々が用事の多いことを好むので、医者も毎日御薬を差し上げ、用事が絶えないことを喜ぶ心があり、上に立つ人に勧めて世の風をこのように仕立てたのである。今の世の人が生まれつき弱く、大名ほど弱いのは、このような風俗にあって医者が仕立てたことである。医者も平生はこのようにしておきながら、肝心のときには逃げることを第一とする。皆、何もかも役目を身に踏み込んで務めないことになってしまった。

解説

前段の薬の話を受けて、医者が仕事の絶えないことを喜び、上の者に勧めて薬漬けの風を作ったと徂徠は見る。しかも平生は世話を焼きながら、肝心の重病には責任を避けて逃げる。そこから「役目を身に踏み込まない」という政談全体の鍵語が出てくる。徂徠のいう「踏み込む」とは、自分の役目を我が事として引き受けることである。日常の手間は増やすのに、いざという場面で判断を避ける専門家や担当者は今もいる。忙しさと責任感は別物だと教えてくれる。

この章句が説くこと

責任医者役儀風俗専門家政談

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