導師導古典を学びたいすべての人に

政談 / 御徒士衆與力を頭の心儘に入るゝ事並に御旗本諸役人に召出さるゝ事

惣躰五六十年以前とは變はり御旗本のあいしらいも惡しく成りたり、下より云ふことの理筋を立てさすること薄く、御役人から上の御威光を以て下をおしひれたことを好む也、上の御威光なれとも實は重役の人たかふり强く手前の威權につのる仕方なり、下の廉耻を養ふと云ふこと古よりの道にて、下たる人に耻かましき目を見せぬやうにすることなり、御旗本の牢舍の問ちやうにかゝると云ふことなとはなかりしことなるに、近年は混にのあるやう承はる、人はあいしらひにて善くも惡くもなるものなり、下はいにあいしらへは下はいになると云ふことを知らぬやうなり、

新字:惣体五六十年以前とは変はり御旗本のあいしらいも悪しく成りたり、下より云ふことの理筋を立てさすること薄く、御役人から上の御威光を以て下をおしひれたことを好む也、上の御威光なれとも実は重役の人たかふり強く手前の威権につのる仕方なり、下の廉耻を養ふと云ふこと古よりの道にて、下たる人に耻かましき目を見せぬやうにすることなり、御旗本の牢舎の問ちやうにかゝると云ふことなとはなかりしことなるに、近年は混にのあるやう承はる、人はあいしらひにて善くも悪くもなるものなり、下はいにあいしらへは下はいになると云ふことを知らぬやうなり、

書き下し

惣体五六十年以前とは変はり御旗本のあいしらいも悪しく成りたり、下より云ふことの理筋を立てさすること薄く、御役人から上の御威光を以て下をおしひれたことを好む也、上の御威光なれとも実は重役の人たかふり強く手前の威権につのる仕方なり、下の廉耻を養ふと云ふこと古よりの道にて、下たる人に耻かましき目を見せぬやうにすることなり、御旗本の牢舎の問ちやうにかゝると云ふことなとはなかりしことなるに、近年は混にのあるやう承はる、人はあいしらひにて善くも悪くもなるものなり、下はいにあいしらへは下はいになると云ふことを知らぬやうなり、

現代語訳

総じて五、六十年前とは変わって、御旗本の扱いも悪くなった。下から言うことの筋道を立てさせることが薄く、御役人が上の御威光をもって下を押しひしぐことを好むのである。上の御威光とは言っても、実は重役の人の高ぶりが強く、自分の威権につのるやり方である。下の廉恥(恥を知る心)を養うということは昔からの道であって、下の者に恥がましい目を見せないようにすることである。御旗本が牢に入れられて取り調べにかかるといったことはなかったことなのに、近年はそうしたこともあるように承っている。人は扱い方次第で良くも悪くもなるものである。下輩として扱えば下輩になるということを知らないようである。

解説

五、六十年前に比べ、旗本への扱いは悪くなり、役人は上の威光を盾に下を押さえつけることを好むと徂徠は言う。それは実のところ重役の高ぶりにすぎない。下の廉恥、つまり恥を知る心を養い、恥がましい目に遭わせないことこそ古来の道だとし、旗本が牢で取り調べを受けるような扱いを嘆く。人は扱われ方で良くも悪くもなり、下輩として扱えば下輩になる。現代でも、部下を信頼せず威圧で管理すれば、部下は誇りを失い、言われたことしかしなくなる。扱いが人をつくるのである。

この章句が説くこと

廉恥威光扱い誇り管理政談

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る