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政談 / 御徒士衆與力を頭の心儘に入るゝ事並に御旗本諸役人に召出さるゝ事

是れ人君賞罰の權と云ふものにて、强ちに善人をは殘らす賞し、惡人をは殘らす罰するには非す、一人を賞すれは千萬人喜ひ、一人を罰すれは千萬人恐るゝにて、世界生きかへりて人々の勵み生し、世の風俗も上の御心儘にとをることなり、すぐれて善き賢才とすぐれて惡しき人とは各別のこと、其の外の人は何れも同樣なる人にて、唯た上に立ちたる人の誘ひによりて風儀つれて善くも惡しくもなる事なり、是は人を生して使ふと殺して使ふとの差別なり、

新字:是れ人君賞罰の権と云ふものにて、強ちに善人をは残らす賞し、悪人をは残らす罰するには非す、一人を賞すれは千万人喜ひ、一人を罰すれは千万人恐るゝにて、世界生きかへりて人々の励み生し、世の風俗も上の御心儘にとをることなり、すぐれて善き賢才とすぐれて悪しき人とは各別のこと、其の外の人は何れも同様なる人にて、唯た上に立ちたる人の誘ひによりて風儀つれて善くも悪しくもなる事なり、是は人を生して使ふと殺して使ふとの差別なり、

書き下し

是れ人君賞罰の権と云ふものにて、強ちに善人をは残らす賞し、悪人をは残らす罰するには非す、一人を賞すれは千万人喜ひ、一人を罰すれは千万人恐るゝにて、世界生きかへりて人々の励み生し、世の風俗も上の御心儘にとをることなり、すぐれて善き賢才とすぐれて悪しき人とは各別のこと、其の外の人は何れも同様なる人にて、唯た上に立ちたる人の誘ひによりて風儀つれて善くも悪しくもなる事なり、是は人を生して使ふと殺して使ふとの差別なり、

現代語訳

これが人君の賞罰の権というもので、必ずしも善人を残らず賞し、悪人を残らず罰するのではない。一人を賞すれば千万人が喜び、一人を罰すれば千万人が恐れるのであって、世の中が生き返って人々の励みが生まれ、世の風俗も上の御心のままに通るのである。とりわけ優れた賢才と、とりわけ悪い人とは別だが、そのほかの人はいずれも同じような人であって、ただ上に立つ人の導きによって、気風につれて良くも悪くもなるのである。これは人を生かして使うのと、殺して使うのとの違いである。

解説

賞罰の権とは、善人を残らず賞し悪人を残らず罰することではなく、一人を賞して千万人を喜ばせ、一人を罰して千万人を恐れさせる働きだと徂徠は説く。とりわけ優れた人と悪い人を除けば、大多数は普通の人であり、上に立つ者の導き次第で良くも悪くもなる。これを徂徠は人を「生かして使う」か「殺して使う」かの違いと呼ぶ。現代の評価制度も、全員を細かく査定すること以上に、誰を象徴的に報い、何を許さないかを示すことで、組織の大多数の行動が決まっていく。

この章句が説くこと

賞罰人君風俗気風評価政談

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