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政談 / 諸色直段の事

又御城下の宿賃甚た高直なる故諸商人皆之を利倍の算用に入るゝによりて直段下らぬなり、某か祖父伊勢の國に先祖の手作りしたる田地ありて、夫を賣て僅に五十兩にて整へたる町屋敷其後父か代に人に賣りたるか、此二十年程以前には二千兩の賣替になりたりと承はる、右祖父の整へたるときは天草より餘程前のことなれは八十年計以前の事なり、斯の如くにて宿賃四千倍の上になりたれは物の直段高直なる事尤のことなり、此下かる仕方心得あるへし、

新字:又御城下の宿賃甚た高直なる故諸商人皆之を利倍の算用に入るゝによりて直段下らぬなり、某か祖父伊勢の国に先祖の手作りしたる田地ありて、夫を売て僅に五十両にて整へたる町屋敷其後父か代に人に売りたるか、此二十年程以前には二千両の売替になりたりと承はる、右祖父の整へたるときは天草より余程前のことなれは八十年計以前の事なり、斯の如くにて宿賃四千倍の上になりたれは物の直段高直なる事尤のことなり、此下かる仕方心得あるへし、

書き下し

又御城下の宿賃甚た高直なる故諸商人皆之を利倍の算用に入るゝによりて直段下らぬなり、某か祖父伊勢の国に先祖の手作りしたる田地ありて、夫を売て僅に五十両にて整へたる町屋敷其後父か代に人に売りたるか、此二十年程以前には二千両の売替になりたりと承はる、右祖父の整へたるときは天草より余程前のことなれは八十年計以前の事なり、斯の如くにて宿賃四千倍の上になりたれは物の直段高直なる事尤のことなり、此下かる仕方心得あるへし、

現代語訳

また御城下の宿賃(家賃・地代)がはなはだ高いので、諸商人がみなこれを利益の勘定に入れるため、値段が下がらないのである。私の祖父は伊勢の国に先祖が自ら耕した田地があり、それを売ってわずか五十両で手に入れた町屋敷を、その後父の代に人に売ったが、この二十年ほど前には二千両で売り替えられたと聞いている。右の祖父が手に入れたときは天草(島原の乱)よりよほど前のことなので、八十年ばかり前のことである。このように宿賃が四千倍以上になったのだから、物の値段が高いのはもっともなことである。これを下げる方法には心得がなければならない。

解説

物価高の第二の理由は城下の宿賃、つまり家賃や地代の高さである。商人はそれを値段に織り込むから下がらない。徂徠は自家の町屋敷が八十年ほどで五十両から二千両に跳ね上がった実例を挙げ、地代の高騰が物価を押し上げると論じる。身近な数字で論を支える書き方は説得力がある。現代でも都市の不動産コストは商品やサービスの価格に転嫁され、生活費や事業費を押し上げる。固定費の構造を見ずに価格だけを論じても解決しないという示唆である。

この章句が説くこと

物価家賃地価都市原因固定費

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