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論衡 / 『論衡』非韓篇第二十九・徳と力の両方を養う

治國之道、所養有二:一曰養德、二曰養力。養德者、養名高之人、以示能敬賢;養力者、養氣力之士、以明能用兵。此所謂文武張設、德力(且)〔具〕足者也、事或可以德懷、或可以力摧。外以德自立、內以力自備。慕德者不戰而服、犯德者畏兵而卻。徐偃王修行仁義、陸地朝者三十二國、強楚聞之、舉兵而滅之。此有德守、無力備者也。夫德不可獨任以治國、力不可直任以御敵也。韓子之術不養德、偃王之操不任力。二者偏駁、各有不足。

新字:治国之道、所養有二:一曰養徳、二曰養力。養徳者、養名高之人、以示能敬賢;養力者、養気力之士、以明能用兵。此所謂文武張設、徳力(且)〔具〕足者也、事或可以徳懐、或可以力摧。外以徳自立、内以力自備。慕徳者不戦而服、犯徳者畏兵而却。徐偃王修行仁義、陸地朝者三十二国、強楚聞之、舉兵而滅之。此有徳守、無力備者也。夫徳不可独任以治国、力不可直任以御敵也。韓子之術不養徳、偃王之操不任力。二者偏駁、各有不足。

書き下し

国を治むるの道、養う所二つ有り。一に曰く徳を養う、二に曰く力を養う。徳を養う者は、名の高き人を養い、以て能く賢を敬うを示す。力を養う者は、気力の士を養い、以て能く兵を用うるを明らかにす。此れ所謂文武張り設けられ、徳力具足する者なり。事は或いは徳を以て懐くべく、或いは力を以て摧くべし。外は徳を以て自ら立ち、内は力を以て自ら備う。徳を慕う者は戦わずして服し、徳を犯す者は兵を畏れて却く。徐の偃王は仁義を修行し、陸地に朝する者三十二国、強楚聞きて、兵を挙げて之を滅ぼす。此れ徳の守り有りて、力の備え無き者なり。夫れ徳は独り任じて以て国を治むべからず、力は直ちに任じて以て敵を御すべからざるなり。韓子の術は徳を養わず、偃王の操は力を任ぜず。二者偏駁にして、各おの足らざる有り。

現代語訳

国を治める道では、養うものが二つあります。一つは徳を養うこと、もう一つは力を養うことです。徳を養うとは、名声の高い人物を迎えて、賢者を敬えることを示すことです。力を養うとは、気力のある武人を養って、軍を用いる力があることを示すことです。これが文と武がともに備わり、徳と力が十分にそろった状態です。物事によっては徳で懐かせ、力で打ち砕くのがよい場合もあります。外に対しては徳で自立し、内には力で備えます。徳を慕う者は戦わずに従い、徳を犯す者は軍勢を恐れて退きます。徐の偃王は仁義を修め、陸地から朝貢に来る国が三十二ありましたが、強国の楚がそれを聞いて兵を挙げ、偃王を滅ぼしました。これは徳による守りはあっても、力の備えがなかった例です。徳だけに任せて国を治めることはできず、力だけに任せて敵を防ぐこともできません。韓非子の術は徳を養わず、偃王のやり方は力を用いませんでした。二人とも偏っていて、それぞれ足りないところがあります。

解説

韓非子の法術だけでは足りないと論じる、非韓篇の締めに近い議論です。王充は、徳だけに頼って滅びた徐の偃王と、力だけに頼る韓非子を並べ、どちらも偏っていると見ます。偃王の話は史書にも伝わる故事ですが、細部は伝承によります。現代の経営にあてはめると、理念や人柄で人を引きつける力と、規律や仕組みで守る力のどちらかに偏った組織は危うい、ということになります。自分の強みの側に寄りすぎていないか、足りない側を誰が担っているかを点検する視点を与えてくれます。
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この章句が説くこと

徳力文武偃王偏り備え

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