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論語と算盤 / 成敗と運命・細心にして大胆なれ

潑溂たる進取の気力を養ひ且つ発揮するには、真に独立独歩の人とならねばならぬ、人に依頼するに過る時は、甚しく自分の実力を退嬰せしめ、最も大切な自信といふものが容易に生ぜず、遂には因循卑屈の性を成して了ふものなれば、深く自己を鞭撻して、弱い気の生ずるを防がねばならぬ、

新字:溌溂たる進取の気力を養ひ且つ発揮するには、真に独立独歩の人とならねばならぬ、人に依頼するに過る時は、甚しく自分の実力を退嬰せしめ、最も大切な自信といふものが容易に生ぜず、遂には因循卑屈の性を成して了ふものなれば、深く自己を鞭撻して、弱い気の生ずるを防がねばならぬ、

書き下し

溌溂たる進取の気力を養いかつ発揮するには、真に独立独歩の人とならねばならぬ。人に依頼するに過ぐる時は、甚だしく自分の実力を退嬰せしめ、最も大切な自信というものが容易に生ぜず、ついには因循卑屈の性を成してしまうものなれば、深く自己を鞭撻して、弱い気の生ずるを防がねばならぬ。

現代語訳

溌溂とした進取の気力を養い、かつ発揮するには、真に独立独歩の人とならなければならない。人に頼りすぎると、自分の実力をひどく衰えさせ、最も大切な自信というものがなかなか生まれず、ついには古いやり方にこだわる卑屈な性質になってしまうものであるから、深く自分を鞭打って、弱い気持ちが生じるのを防がなければならない。

解説

進取の気力を養う第一の条件として、渋沢は独立独歩を挙げる。人に依頼しすぎると実力が衰え、最も大切な自信が育たず、ついには因循卑屈の性が身につく、と。ここでの依頼心は、個人が他人に頼ることだけでなく、次の段で論じられる、民間の事業が政府の保護に頼る姿勢にもつながっている。渋沢は明治六年に大蔵省を辞して民間に下り、官の力に頼らない実業の確立を生涯の目標とした。官尊民卑を打破し、民が自ら立つことを説き続けた人である。「深く自己を鞭撻して」という言い方には、独立は他人から与えられるものではなく、自分で自分を律して守るものだという考えが表れている。上司の指示や会社の制度に頼りきりになると、自分で判断する力と自信は育たない。依存を断つのは外からの命令ではなく、自分自身への鞭撻である。

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