論語と算盤 / 実業と士道・此にも能率増進法あり
是から大分長い話をして、正午頃まで話をして宜いか、宜しいと云ふからして、頻りに日曜学校に力を入れた理由は斯様である、一体お前の出身はどういふ人であると云ふやうなことから、段々談話が込入つて、つひ其為に一時間も彼は余計予期したよりも長き話をしたかと思ふ、昼餐になるから私は帰る、二時に来るから、夫迄に支度をして待つて〻呉れ、それから又二時にキチンと来て、今度は日曜学校の会堂に案内される、其の会堂は当人の建てたものか否か知らないが、中々立派な会堂で、総体では二千人も入るといふ、大勢の会員が居る、何時も此通りで、別に貴方が来たから多くの人を集めたのではないと云つて居た、牧師が聖書を講演し、それから讃美歌がある、それが終るとワナメーカーが私を紹介的の演説をした、それから私にも日曜学校に就て感じたことを言へといふことで、私も演説をした、
書き下し
これから大分長い話をして、正午頃まで話をしてよいか。よろしいと言うからして、しきりに日曜学校に力を入れた理由はかようである、一体お前の出身はどういう人であるというようなことから、段々談話が込み入って、つい、そのために一時間も彼は余計予期したよりも長き話をしたかと思う。昼餐になるから私は帰る。二時に来るから、それまでに支度をして待っててくれ。それからまた二時にきちんと来て、今度は日曜学校の会堂に案内される。その会堂は当人の建てたものか否か知らないが、なかなか立派な会堂で、総体では二千人も入るという。大勢の会員がいる。いつもこの通りで、別に貴方が来たから多くの人を集めたのではないと言っていた。牧師が聖書を講演し、それから讃美歌がある。それが終わるとワナメーカーが私を紹介的の演説をした。それから私にも日曜学校について感じたことを言えということで、私も演説をした。
現代語訳
それからだいぶ長い話をした。正午ごろまで話をしてよいかと言うので、よろしいと答えると、しきりに日曜学校に力を入れた理由はこうだとか、いったいあなたの出身はどういう人なのかといったことから、だんだん話が込み入って、ついそのために、彼は予定よりも一時間ほど余計に長く話をしたかと思う。昼食になるから私は帰る、二時に来るから、それまでに支度をして待っていてくれ、と言う。それからまた二時にきちんと来て、今度は日曜学校の会堂に案内された。その会堂は本人が建てたものかどうかは知らないが、なかなか立派な会堂で、全体では二千人も入るという。大勢の会員がいる。いつもこのとおりで、別にあなたが来たから大勢を集めたのではない、と言っていた。牧師が聖書を講じ、それから讃美歌がある。それが終わるとワナメーカーが私を紹介する演説をした。それから私にも日曜学校について感じたことを話せということで、私も演説をした。
解説
関連する章句
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『論語と算盤』実業と士道・此にも能率増進法ありさらにそれに向かってワナメーカーが――この時には私も少し弱りました――是非孔子教を止めて基督教に宗旨変えをせよと直接談判を大勢の前で迫られた。これには私も返答に苦しんだ。それが終わるとすぐ隣りの婦人の聖書研究会に行って演説し、次いで一二丁隔った所の労働的種類の人が集まって、聖書を研究する所に行き、彼は東洋からこういう老人が来たから、是非握手したらよかろうと言ったので、四百人もいた残らずに、しかも向こうは労働者であるから、強く握られるので手が痛くなるくらいであった。やがて五時半頃になった。六時に立って田舎へ行かねばならぬ約束があるので、一緒に旅宿の前まで来て別れる時に、是非もう一遍会いたいが、何とか途は無かろうかという話。――ニューヨークには何日行く。三十日に行って来月四日まで滞在している。然らば私は二日にニューヨークに行く用事がある、その時もう一遍会おう。何時か。午後の三時には立ってこの地に帰らねばならぬ。
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『論語と算盤』実業と士道・此にも能率増進法ありまことに目を驚かすような大きな店で、入口には大きな両国の国旗を建て、立派な華電灯を盛んに点じて、しかもその日に来た多数の客がいまだ帰らずに待っておったから、何か大なる劇場の「ハネ」にでも出会ったような塩梅に群集をなしている。そこを主人が案内して連れて歩く。まず下の方の陳列場をずっと通りながら観て、それから「エレベーター」で二階へ上ると、まず第一に見せたのは料理場。すっかり掃除して綺麗になっていたが、これは上等の客の仕出しをする所、その次は普通の客の仕出しをする所、「コック」の有様はこうである。その次には秘密室といって、何か店のことについて秘密な協議をする所であるが、四五千人の会議ができるというほどの広さである。それから教育をする場所、店の人にごく当用の教育を与える所、これらの諸所を見せた時間がやがて一時間くらい。それが済んで七時頃に私が「ホテル」に帰る時に、ワナメーカーが明朝は八時四十五分にお前を訪ねる、それなら朝餐は済むだろう。――済みます。ちょうど翌朝の八時四十五分にきちんと来た。
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『論語と算盤』実業と士道・此にも能率増進法ありその切り盛りに一つも無駄がない。話もまた適切である。私は実に敬服した。時間を無駄に使わぬことかくのごとくなれば、例の能率がいかにも増進するであろう。別に物をこしらえる訳ではないが、つまり我々が時間を空費しているのは、ちょうど物を製作する場合に手を空くしているのと同じことであるから、これはお互いに注意して人間を無駄に使わぬはもちろんのこと、我れ自身をどうぞ無駄に使わぬように心懸けたいと思う。
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『論語と算盤』実業と士道・此にも能率増進法あり然らば二時から三時までの間にニューヨークの貴方の店に行こうと約束し、二日の二時半、三時少し前くらい、少し遅くなってやり損なっては大いに困ると思い、大急ぎで行くと、すぐさまお前よく来てくれた、これで満足だ、私も満足である、実はお前に御馳走はできぬから書物を進げたいと言って、リンカーンの伝記、ゼネラル、グラントの伝記その他のものを与え、かつ簡単に両氏の崇高なる人格を語り、自分もグラント将軍歓迎委員長であったことなどを語り合いて別れたが、
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『論語と算盤』実業と士道・此にも能率増進法ありその時間の遣い方などを見て、ああ感心なものだ、なるほどこうやるとまことに少ない時間にちゃんと多くの事ができて、その日の仕事が完全に届くと思うて、すこぶる敬服したのである。すでにテーラーという人がこういう手数を省くことについて大いに説をなして、ある雑誌に池田藤四郎という人がこれを書いてある。能率を増進するという論であるが、私は初め工場の職工か何かについて言ったものとばかり思うていた所がさようでない。もう日々お互いの間に始終ある。ワナメーカーが私を待遇した有様を見ると、何も別に変わったことでもないが、ちょうど「ピッツブルグ」の汽車が五時四十分にフィラデルフィアに着く。着いたならば自動車を出して置く。六時までに私の店に来られるから、「ホテル」に寄らずにすぐ来てくれ。こういう案内であった。そこで指図通りフィラデルフィアに着くと宿にも寄らず、すぐ自動車で行くと、六時二分か三分に着いた。先生は店に待っておって、直ちに私を案内して、まず店の有様を一通り見せた。
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『論語と算盤』実業と士道・此にも能率増進法あり我々が始終――ことに私などは、それについては恥じ入って、諸君にも始終迷惑をかけるが、この物の切り盛りのつかぬために、無駄な時間を費やす。これがどうも事物の進むほど注意せねばならぬことと思う。したがってこれが極端に行くと、能率が大変に悪くなる。能率の悪いということは職工か何かにある語ですが、職工ばかりでは無い。通常の事務を処する人でも、ちゃんと時の極まりが十分付いて、この時間にこれだけの事をするということを遅滞なく完全に遂げて行くことができると、いわば人を多分に使わぬでも、仕事はたくさんにできて来る。すなわち能率がよくなる。事務においてもなお然りと思う。自身にそう思うが、さらば日本の諸君が、私ばかりが悪くて他の方はまことにその権衡を得て、一日何時間働く、その働く時間は仕事に従事をしている分量が、まことに完全に、時計の刻むがごとくやれ得るかというと、決してそうでない。あるいは使わぬでもよい人を大いに使い、一度で済むことを三度も人を走らせたり、そうして用はさまででない。フィラデルフィアでワナメーカーが私を接待してくれた。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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