論語と算盤 / 人格と修養・商業に国境なし
その歳の秋、亜米利加から太平洋沿岸の商業会議所の議員が、多数日本へ来遊することになつた、それは我が東京商業会議所及び各地の商業会議所が同じ位置なるを以て、太平洋沿岸の商業会議所の諸君に、団体を組んで日本に旅行して呉れといふ事を勧誘したに因るものであるが、一は日米両国間の国交親善に努むる為め、総ての誤解を除却したいといふ意味を以て成立つたものである、其時に日本に来遊せられたのは、桑港に於てはエフ、ダブリユー、ドールマン、「シヤトル」ではジエー、デイ、ローマン或は「ポートランド」のオー、エム、クラーク等の人々で、私は種々の会合に於て是等の諸君に会談して、日米の関係に就て従来の沿革を詳述し、諸君の力で誤解を解くやうにして戴きたいと希望し、
書き下し
その歳の秋、アメリカから太平洋沿岸の商業会議所の議員が、多数日本へ来遊することになった。それは我が東京商業会議所及び各地の商業会議所が同じ位置なるをもって、太平洋沿岸の商業会議所の諸君に、団体を組んで日本に旅行してくれということを勧誘したによるものであるが、一は日米両国間の国交親善に努むるため、すべての誤解を除却したいという意味をもって成り立ったものである。その時に日本に来遊せられたのは、桑港においてはエフ・ダブリュー・ドールマン、シアトルではジェー・デイ・ローマン、あるいはポートランドのオー・エム・クラーク等の人々で、私は種々の会合においてこれらの諸君に会談して、日米の関係について従来の沿革を詳述し、諸君の力で誤解を解くようにしていただきたいと希望し。
現代語訳
その年の秋、アメリカから太平洋沿岸の商業会議所の議員たちが、大勢で日本へ来遊することになった。それは、わが東京商業会議所や各地の商業会議所が、同じ立場にある者として、太平洋沿岸の商業会議所の諸君に、団体を組んで日本へ旅行してほしいと勧誘したことによるものであったが、一つには日米両国間の国交親善に努めるため、あらゆる誤解を取り除きたいという趣旨で実現したものである。そのとき日本に来遊されたのは、サンフランシスコのF・W・ドールマン、シアトルのJ・D・ローマン、ポートランドのO・M・クラークといった人々で、私はさまざまな会合でこれらの諸君と会談し、日米関係のこれまでの沿革を詳しく述べ、諸君の力で誤解を解くようにしていただきたいと希望し、
解説
関連する章句
-
『論語と算盤』人格と修養・商業に国境なしまた一方には日本から米国に移住している人々については、欧米の習慣に慣れぬために公徳が修まらぬとか、あるいは風采が鄙劣だとか、あるいは同化しないとかいうような欠点があれば、その欠点は相ともに矯正して、努めて直させるようにして、米国人に嫌われぬ所の人間たらしむることを心掛けるのが肝要である。今日の場合、人種とか宗教とかの相違から、日本人を嫌うというようなことは、文明なる米国人としてよもあるまいと思う。もしこれありとすれば、それは米国人の誤謬である。
-
『論語と算盤』人格と修養・商業に国境なしのみならず、アメリカの当初の趣意に悖る訳である。我が日本を世界に紹介してくれたのはアメリカである。日本はそれを徳として今日まで国交の親善を努めているのに、そのアメリカが人種的の僻見、宗教差異の偏頗心から、日本人を嫌って差別的待遇をするというのは、アメリカとしてなすべきことでない。果たしてしからばアメリカは、初めは正義にして後には暴戻と言わねばならぬ、ということを懇々と述べたについて、当時来遊せられた商業会議所の諸君も、誠に道理だと言うて深く喜んでくれた。
-
『論語と算盤』人格と修養・商業に国境なし明治三十六年桑港において学童問題というものが突発した。それから後も次第に日米間の国交が薄くなるような傾向を生じたというのは、日本人が薄くするのではなくして、アメリカのある方面の人が、段々に日本を嫌うという有様を生じた。さてそういう有様を生ずると、あたかも明治三十五年に桑港の金門公園において見た所の「日本人泳ぐべからず」の事柄が段々盛んに進んで来るようになった。アメリカに対して特殊の印象を持ってる私、ことに実業界の一人として、また日本全体の実業界に対して深く心神を労している身であるから、国交上に大なる憂いを抱いた。その後桑港にいる日本人間に在米日本人会なるものを組織した。その会長の牛島謹爾氏が、特に渡辺金蔵という人を日本に送られて、私に請求せらるるには、カリフォルニア州においてアメリカ人がとかく日本人を嫌うという感情を改善せしむるために、在米日本人会を企てたのである。ついては本国(日本)においてもその意味を理解して、大いに賛同してくれるようにということであった。
-
『論語と算盤』理想と迷信・発展の一大要素海外に向かって発展するには、いかなる方面を択ぶべきかと言えば、やはり一番利益のある所に赴くということは、自然の趨勢であると思う。気候もよし、地味も良くて、その土地がよく人を容れ、農業に商業に、すべての事のやりよい所を択ぶのが人情である。ここにおいて私共の切に憂うるのは、北米合衆国と我が邦との関係である。今日のように紛議を醸しているのは、お互い実に遺憾に堪えない。
-
『論語と算盤』人格と修養・商業に国境なし私はその企図の至極機宜に適するものと思って、我々も充分に助力するから、在米諸君も大いに努めるようにしたらよかろうと言って、渡辺金蔵氏に私が明治三十五年に金門公園において感ぜしことを話して、会長たる牛島氏を初め、そのほかの会員にもよく注意してくれということを伝言した。それが明治四十一年であったと思う。
-
『論語と算盤』立志と学問・精神老衰の予防法しかしこの抽象的の評言は、一概に斥くべきものではなかろうと思うので、いかにも親切のお言葉は私だけに承った、とこう答えて置いた。この他にもなお談話の廉々はあったが、最終にその滞在中の優遇を謝して、この半年の間真率に自分の思うことを述べて、各学校で学生もしくはその他の人々に、親切にせられたことを深く喜ぶと言っておられた。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る