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論語と算盤 / 常識と習慣・習慣の感染性と伝播力

余の経験によれば、習慣は老人になつても矢張重んぜねばならぬと考へる、それは青年時代の悪習慣も、老後の今日に至つて努力すれば改められるものであるから、今日の如く日に新なる世に処しては、尚更この心を持つて自重して行かねばならぬのである。

書き下し

余の経験によれば、習慣は老人になってもやはり重んぜねばならぬと考える。それは青年時代の悪習慣も、老後の今日に至って努力すれば改められるものであるから、今日のごとく日に新たなる世に処しては、なおさらこの心を持って自重して行かねばならぬのである。

現代語訳

私の経験から言えば、習慣は老人になってもやはり重んじなければならないと考える。青年時代の悪い習慣でさえ、老いた今日になっても努力すれば改められるのだから、今日のように日々新しくなっていく世の中を生きるには、なおさらこの心構えを持って自重していかなければならないのである。

解説

前段で少年期の大切さを説いた渋沢は、ここで向きを変え、老人にとっても習慣は重いと言う。青年期の悪習も老後に努力すれば改められる、という自分の体験がその根拠である。この本の談話が語られたころ、渋沢は七十代で、実業界の第一線からは退きつつあったが、なお銀行の世話や社会事業に関わっていた。「日に新たなる世」という言葉は、『大学』に引かれる殷の湯王の盤の銘「苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」を思わせる。世の中が日々変わる以上、年長者こそ古い癖に安住してはならない、という含みである。年をとったから変われない、という言い訳を渋沢は認めない。今の組織でいえば、経験を積んだ管理職ほど自分の習慣を点検し続ける必要がある、ということになるだろう。

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