驢鞍橋 / 卷中
シテ詞佛体色性の忝きとは宣へ共。是程に文字も見えす。きざめる像ちもなし只朽木とこそ見えたれリーキカヽルたとへ深山の朽木なりとも。飛花落葉の轉變は。無情說法明なり。況や佛体にきざめる木。などかしるしなかるへき。上我も賤しき埋木なれども心の花のまだあれば。手向になどかならざらん。扨て佛体たるへき謂はれはいかにツレワキ上夫れ卒都婆は金剛薩埵かりに出化して。三摩耶形を行ひたまふ。シテ詞行ひなせる形はいかに。ワキ上地水火風空。シテ五躰五輪は人の躰。何しに隔あるへきず。シテ像ちはそれにたかはずとも心功德は替るへし。
新字:シテ詞仏体色性の忝きとは宣へ共。是程に文字も見えす。きざめる像ちもなし只朽木とこそ見えたれリーキカヽルたとへ深山の朽木なりとも。飛花落葉の転変は。無情説法明なり。況や仏体にきざめる木。などかしるしなかるへき。上我も賤しき埋木なれども心の花のまだあれば。手向になどかならざらん。扨て仏体たるへき謂はれはいかにツレワキ上夫れ卒都婆は金剛薩埵かりに出化して。三摩耶形を行ひたまふ。シテ詞行ひなせる形はいかに。ワキ上地水火風空。シテ五体五輪は人の体。何しに隔あるへきず。シテ像ちはそれにたかはずとも心功徳は替るへし。
書き下し
シテ詞仏体色性の忝きとは宣へ共。是程に文字も見えす。きざめる像ちもなし只朽木とこそ見えたれリーキカヽルたとへ深山の朽木なりとも。飛花落葉の転変は。無情説法明なり。況や仏体にきざめる木。などかしるしなかるへき。上我も賤しき埋木なれども心の花のまだあれば。手向になどかならざらん。扨て仏体たるへき謂はれはいかにツレワキ上夫れ卒都婆は金剛薩埵かりに出化して。三摩耶形を行ひたまふ。シテ詞行ひなせる形はいかに。ワキ上地水火風空。シテ五体五輪は人の体。何しに隔あるへきず。シテ像ちはそれにたかはずとも心功徳は替るへし。
現代語訳
(シテ詞)仏体として畏れ多いとおっしゃいますが、これほど文字も見えず、刻んだ像もありません。ただの朽木としか見えません。(カカル)たとえ深山の朽木であっても、花が飛び葉が落ちる移り変わりは、無情の説法として明らかです。まして仏体を刻んだ木に、どうして功徳のしるしがないことがありましょう。私も賤しい埋もれ木ではありますが、心の花がまだありますので、手向けにならないことがありましょうか。さて、仏体であるはずのいわれはどういうことですか。(ワキ上)そもそも卒都婆は、金剛薩埵が仮に姿を現して、三摩耶形としてお示しになったものです。(シテ詞)示された形とはどのようなものですか。(ワキ上)地・水・火・風・空です。(シテ)五体も五輪も人の体と同じ。何の隔たりがありましょう。形はそれと違わなくとも、心の功徳は違うはずです。
解説
この章句が説くこと
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