礼記 / 礼器
禮也者,反其所自生;樂也者,樂其所自成。是故先王之制禮也以節事,脩樂以道志。故觀其禮樂,而治亂可知也。蘧伯玉曰:「君子之人達。」故觀其器,而知其工之巧;觀其發,而知其人之知。故曰:君子慎其所以與人者。
新字:礼也者,反其所自生;楽也者,楽其所自成。是故先王之制礼也以節事,脩楽以道志。故観其礼楽,而治乱可知也。蘧伯玉曰:「君子之人達。」故観其器,而知其工之巧;観其発,而知其人之知。故曰:君子慎其所以与人者。
書き下し
礼なる者は、其の自りて生ずる所に反る。楽なる者は、其の自りて成る所を楽しむ。是の故に先王の礼を制するや以て事を節し、楽を脩めて以て志を道(みちび)く。故に其の礼楽を観て、治乱知るべきなり。蘧伯玉(きょはくぎょく)曰く、「君子の人は達す」と。故に其の器を観て、其の工の巧を知り、其の発するを観て、其の人の知を知る。故に曰く、君子は其の人に与うる所以の者を慎む、と。
現代語訳
礼とは、自分を生み出したものに立ち返ることである。楽とは、自分が成し遂げたことを楽しむことである。だから先王は礼を定めて物事に節度を与え、楽を修めて人の志を導いた。だから、ある国の礼と楽を見れば、その国が治まっているか乱れているかがわかる。蘧伯玉(きょはくぎょく、衛の賢大夫)は「君子は物事によく通じている」と言った。だから器を見ればそれを作った職人の腕前がわかり、その人の発する言動を見ればその人の知恵がわかる。だから、君子は人に示すもの、人に与えるものをつつしむと言うのである。
解説
礼と楽の働きを対にして述べる段である。礼は自らを生んだ根源に立ち返り、楽は自ら成し遂げたことを楽しむ。先王は礼で事に節度を与え、楽で志を導いたので、礼楽を見ればその国の治乱がわかる。ここから話は人を見ることに移り、蘧伯玉の言葉を引いて、器を見れば職人の腕がわかるように、言動を見ればその人の知がわかると言う。蘧伯玉は衛の賢大夫で、『論語』衛霊公篇では、邦に道あれば仕え、道なければ巻いて懐にすべしと孔子に讃えられている人物である。結びの「君子は其の人に与うる所以の者を慎む」は、自分が人に示すものは、そのまま自分を映す器として見られるのだから慎め、という戒めである。仕事の成果物や日々の言葉づかいが、自分の力量と人柄をそのまま相手に伝えている。何を出すかを慎重に選ぶことは、自分の姿を整えることと同じなのである。
この章句が説くこと
礼記礼楽蘧伯玉人を見る礼器
関連する章句
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史記 楽書情を合し貌を飾るは、礼楽の事なり。礼義立てば、則ち貴賤等し。楽文同じければ、則ち上下和す。好悪著らかなれば、則ち賢不肖別る。刑暴を禁じ、爵賢を挙ぐれば、則ち政均し。仁以て之を愛し、義以て之を正す、此くの如くなれば則ち民治行はる。楽は中より出で、礼は外より作る。楽は中より出づ、故に静かなり。礼は外より作る、故に文あり。大楽は必ず易く、大礼は必ず簡なり。楽至れば則ち怨み無く、礼至れば則ち争はず。揖譲して天下を治むるとは、礼楽の謂ひなり。暴民作らず、諸侯賓服し、兵革試みず、五刑用ひず、百姓患ひ無く、天子怒らず、此くの如くなれば則ち楽達す。父子の親しみを合し、長幼の序を明らかにし、以て四海の内を敬せしむ。天子此くの如くなれば、則ち礼行はる。大楽は天地と和を同じくし、大礼は天地と節を同じくす。和す、故に百物失はず。節あり、故に天を祀り地を祭る。明には則ち礼楽有り、幽には則ち鬼神有り、此くの如くなれば則ち四海の内、敬を合し愛を同じくす。礼とは、事を殊にして敬を合する者なり。楽とは、文を異にして愛を合する者なり。礼楽の情同じ、故に明王以て相沿ふ。故に事は時と并び、名は功と偕にす。故に鐘鼓管磬羽籥干戚は、楽の器なり。詘信俯仰級兆舒疾は、楽の文なり。簠簋俎豆制度文章は、礼の器なり。升降上下周旋裼襲は、礼の文なり。故に礼楽の情を知る者は能く作り、礼楽の文を識る者は能く術ぶ。作る者之を聖と謂ひ、術ぶる者之を明と謂ふ。明聖とは、術作の謂ひなり。楽とは、天地の和なり。礼とは、天地の序なり。和す、故に百物皆化す。序あり、故に群物皆別る。楽は天に由りて作り、礼は地を以て制す。制を過ぐれば則ち乱れ、作を過ぐれば則ち暴なり。天地に明らかにして、然る後に能く礼楽を興すなり。
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礼記・礼器君子曰く、「内に節無き者は、物を観て之を察せず。物を察せんと欲して礼に由らざれば、之を得ず。故に事を作すに礼を以てせざれば、之を敬せず。言を出だすに礼を以てせざれば、之を信ぜず。故に曰く、礼なる者は、物の致なり」と。 是の故に昔先王の礼を制するや、其の財物に因りて其の義を致すのみ。故に大事を作すには必ず天の時に順い、朝夕を為すには必ず日月に放(なら)い、高きを為すには必ず丘陵に因り、下きを為すには必ず川沢に因る。是の故に天時雨沢あれば、君子達(みな)亹亹(びび)たり。
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礼記・楽記鄭衛の音は、乱世の音なり、慢に比(ひと)し。桑間濮上(そうかんぼくじょう)の音は、亡国の音なり。其の政散じ、其の民流れ、上を誣(し)いて私を行いて止むべからざるなり。 凡そ音なる者は、人心に生ずる者なり。楽なる者は、倫理に通ずる者なり。是の故に声を知りて音を知らざる者は、禽獣是れなり。音を知りて楽を知らざる者は、衆庶是れなり。唯だ君子のみ能く楽を知ると為す。是の故に声を審らかにして以て音を知り、音を審らかにして以て楽を知り、楽を審らかにして以て政を知りて、治道備わる。是の故に声を知らざる者は与に音を言うべからず、音を知らざる者は与に楽を言うべからず。楽を知れば則ち礼に幾(ちか)し。礼楽皆得る、之を有徳と謂う。徳なる者は得なり。是の故に楽の隆(さか)んなるは、音を極むるに非ざるなり。食饗(しきょう)の礼は、味を致すに非ざるなり。清廟の瑟(しつ)は、朱弦にして疏越(そえつ)、壱(ひと)たび倡(とな)えて三たび歎ず、遺音有る者なり。大饗の礼は、玄酒を尚(たっと)びて腥魚(せいぎょ)を俎(そ)にし、大羹(たいこう)は和せず、遺味有る者なり。是の故に先王の礼楽を制するや、以て口腹耳目の欲を極むるに非ざるなり。将に以て民に好悪を平らかにすることを教えて、人道の正しきに反(かえ)らしめんとするなり。
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史記 楽書唯君子のみ能く楽を知ると為す。是の故に声を審らかにして以て音を知り、音を審らかにして以て楽を知り、楽を審らかにして以て政を知り、而して治道備はる。是の故に声を知らざる者は与に音を言ふべからず、音を知らざる者は与に楽を言ふべからず、楽を知れば則ち礼に幾し。礼楽皆得る、之を有徳と謂ふ。徳とは得なり。是の故に楽の隆なるは、音を極むるに非ず。食饗の礼は、味を極むるに非ず。清廟の瑟は、朱弦にして疏越、一たび倡ひて三たび嘆ず、遺音有る者なり。大饗の礼は、玄酒を尚びて腥魚を俎にし、大羹は和せず、遺味有る者なり。是の故に先王の礼楽を制するや、以て口腹耳目の欲を極むるに非ず、将に以て民に好悪を平らかにし人道の正に反らんことを教へんとするなり。人生まれて静かなるは、天の性なり。物に感じて動くは、性の頌なり。物至りて知知り、然る後に好悪形はる。好悪内に節無く、知外に誘はれ、己に反る能はざれば、天理滅ぶ。夫れ物の人を感ぜしむること窮まり無くして、人の好悪節無ければ、則ち是れ物至りて人物に化するなり。人物に化すとは、天理を滅ぼして人欲を窮むる者なり。是に於いて悖逆詐偽の心有り、淫佚作乱の事有り。是の故に彊き者は弱きを脅かし、衆き者は寡きを暴し、知ある者は愚かなるを詐き、勇ある者は怯なるを苦しめ、疾病ある者は養はれず、老幼孤寡は其の所を得ず、此れ大乱の道なり。是の故に先王礼楽を制し、人之が節を為す。衰麻哭泣は、喪紀を節する所以なり。鐘鼓干戚は、安楽を和する所以なり。婚姻冠笄は、男女を別つ所以なり。射郷食饗は、交接を正す所以なり。礼は民心を節し、楽は民声を和し、政は以て之を行ひ、刑は以て之を防ぐ。礼楽刑政、四つながら達して悖らざれば、則ち王道備はる。楽は同を為し、礼は異を為す。同なれば則ち相親しみ、異なれば則ち相敬す。楽勝てば則ち流れ、礼勝てば則ち離る。
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史記 楽書是を以て情見はれて義立ち、楽終はりて徳尊し。君子は以て善を好み、小人は以て過ちを息む。故に曰く「生民の道、楽を大と為す」と。君子曰く、礼楽は以て斯須も身を去るべからず。楽を致めて以て心を治むれば、則ち易直子諒の心油然として生ず。易直子諒の心生ずれば則ち楽しみ、楽しめば則ち安く、安ければ則ち久しく、久しければ則ち天なり、天なれば則ち神なり。天なれば則ち言はずして信あり、神なれば則ち怒らずして威あり。楽を致むるは、以て心を治むる者なり。礼を致むるは、以て躬を治むる者なり。躬を治むれば則ち荘敬、荘敬なれば則ち厳威なり。心中斯須も和せず楽しまざれば、而ち鄙詐の心之に入る。外貌斯須も荘ならず敬ならざれば、而ち慢易の心之に入る。故に楽なる者は、内に動く者なり。礼なる者は、外に動く者なり。楽は和を極め、礼は順を極む。内和して外順なれば、則ち民其の顔色を瞻て与に争はず、其の容貌を望みて民易慢を生ぜず。徳煇内に動きて民承け聴かざる莫く、理外に発して民承け順はざる莫し、故に曰く「礼楽の道を知りて、挙げて之を錯けば天下難き無し」と。楽なる者は、内に動く者なり。礼なる者は、外に動く者なり。故に礼は其の謙を主とし、楽は其の盈を主とす。礼は謙にして進み、進むを以て文と為す。楽は盈ちて反り、反るを以て文と為す。礼謙にして進まざれば、則ち銷ゆ。楽盈ちて反らざれば、則ち放つ。故に礼に報有りて楽に反有り。礼其の報を得れば則ち楽しみ、楽其の反を得れば則ち安し。礼の報、楽の反、其の義一なり。夫れ楽とは楽しむなり、人情の免るる能はざる所なり。楽は必ず声音に発し、動静に形はる、人の道なり。声音動静、性術の変、此に尽くす。故に人楽しみ無き能はず、楽しめば形無き能はず。形はれて道を為さざれば、乱無き能はず。
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礼記・楽記楽なる者は、内に動く者なり。礼なる者は、外に動く者なり。故に礼はその減を主とし、楽はその盈(えい)を主とす。礼は減じて進む、進むを以て文と為す。楽は盈ちて反る、反るを以て文と為す。礼減じて進まざれば則ち銷(き)え、楽盈ちて反らざれば則ち放たる。故に礼に報有りて楽に反有り。礼その報を得れば則ち楽しみ、楽その反を得れば則ち安し。礼の報、楽の反、その義一なり。
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